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No.102

美術・工芸展示室

ふくおかの文化財展5-梵鐘-

平成8年10月1日(火)~平成9年3月30日(日)

8 戒壇院 半鐘
8 戒壇院 半鐘

8 半鐘(はんしょう)

1口/太宰府市 戒壇院(かいだんいん)/(総高)56.2センチ (口径)32.5センチ

 江戸時代には朝鮮半島の鐘のデザインをまねた梵鐘がしばしば造られました。本鐘もその1つで、笠形(かさがた)の上に体をくねらせた単身の竜頭(りゅうず)と煙突状の甬(よう)(旗挿(はたざし))をもち、鍾身には細かい文様をあらわした上(じょう)・下帯(かたい)と乳郭(にゅうかく)を備えています。銘文から博多鋳物師(いもじ)、磯野正慶によって貞享(じょうきょう)元年(1684)に造られたことがわかります。磯野氏は島原の乱(1637~38)で福岡藩の大砲の玉を鋳造して以来、藩との結びつきを強め、後に福岡藩内で使用する鋤(すき)や鍬(くわ)などの農具の生産を一手に行ったことで知られています。


9 大悲王院 半鐘
9 大悲王院 半鐘

9 半鐘(はんしょう)

1口/前原市 大悲王院(だいひおういん)/(総高)52.5センチ (口径)33.7センチ

 銘文から正徳4年(1714)に博多鋳物師(いもじ)、大田兼藤によって造られたことがわかります。江戸時代には戒壇院の半鐘のように全体の形に朝鮮半島の鐘(かね)のデザインを取り入れたものも造られましたが、その一方で日本の梵鐘と朝鮮半島の梵鐘の双方のデザインを混ぜ合わせることも行われました。本鍾もその1つで、竜頭(りゅうず)の形は伝統的な日本の梵鐘のものですが、乳(にゅう)の配列を3段3列にするなど朝鮮半島の梵鐘の特徴を採り入れています。大田氏は中世に芦屋釜(あしやがま)を作った芦屋鋳物師(いもじ)の末裔(まつえい)で、桃山時代に博多に移住したと言われています。


10 甘木歴史資料館 半鐘
10 甘木歴史資料館 半鐘

10 半鐘(はんしょう)

1口/甘木市 甘木歴史資料館/(総高)49.0センチ (口径)29.7センチ

 銘文から享保(きょうほう)5年(1720)に博多鋳物師(いもじ)、大田兼貞によって造られたことがわかります。大悲王院の半鐘と同じ大田氏の作品ですが、本鍾にも日本と朝鮮半島の双方の梵鐘の特徴が取り入れられています。しかし依頼主の注文に応じた結果でしょうか。笠形(かさがた)の周囲に飾りを付けたり、鐘身に「南無阿弥陀仏」の文字を入れたりするなど、大悲王院鐘よりもいっそう装飾化されていることがわかります。農具などをはじめ、多様な注文に応じた江戸時代の鋳物師の性格がこのようなところからもうかがうことができます。

 本展の開催にあたりまして、ご所蔵の館・寺社ほか、関係の方々にご配慮賜りました。記して感謝申し上げます。

(末吉武史)

◎梵鐘各部名称(日本) ◎梵鐘各部名称(朝鮮半島)
◎梵鐘各部名称(日本) ◎梵鐘各部名称(朝鮮半島)
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