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No.119

考古・民俗展示室

小正月の行事 トビトビ

平成9年10月21日(火)~平成10年1月25日(日)

貝原益軒『扶桑紀勝』写本
貝原益軒『扶桑紀勝』写本
トビトビのトビ
トビトビのトビ
稲積のトビ
稲積のトビ
幸木・節米のトビ
幸木・節米のトビ

トビトビとは何か

 どうして、こういう不思議な行事がおこなわれているのでしょうか。

 石釜の人々は「田んぼが日焼け(4)しないように、トビに水をかけるのだ」と説明します。この言い伝えから、トビトビが、豊な水を願い、ひいては豊作を願った行事であることがわかります。

 実際、山間部に位置する石釜でも田の水は不足しがちで、かつて川から水を引くために樋を掛けて田に水を送っていたといいます。

 それにしても、卜ビトビとはなんとも変わった名前の行事です。これにはどんな意味があるのでしょうか。

 福岡市周辺でトビというと、稲わらを積んだ上にかぶせるわらの覆いのことをいいます。これは畑に芋などを蓄える時にも使いますが、まさにこれがトビトビのトビと同じかたちをしているのです。

 トビトビの語源はこのトビである。こう考えることは自然です。

 ところが、福岡市周辺ではトビという言葉はもうひとつの意味を持っています。年始の贈り物、お年玉、あるいは供えものに使う米を白紙で包んだものをトビという言葉で表しているのです。

 このような例から、民俗学者・柳田国男は『食物と心臓』という本の中で、トビと呼ばれる事柄について「贈らるる者が人間だけでないこと、食物ことに米を中心とすること、及び主として正月の行事に属すること」という特徴をあげました。そして「トビは要するにこの記念すべき訪問(5)の際に、贈答せられるところの食物の名であった。そうして同時にまた交際を求むる者の合言葉でもあったのである」と述べています。

 つまり、卜ビトビという行事の名前は後者の、年始の贈り物という意味であると考えたのです。

 さらにトビの語源をさかのぼると「給え」という言葉にたどりつきます。「給え」の口語形である「たうべ」、つまり「下さい」という意味の言葉が、トビへと変化し、それが行事の名前になったのです。

トビトビを支えるもの

 現在、石釜のトビトビは子ども会の行事としておこなわれています。わら細工の準備から、餅やお菓子の分配まで、その多くを大人に頼っています。

 しかし、かつてはかなりようすが違っていたようです。終戦前に生まれた世代の人たちは、トビトビは子供たちだけですべてをおこなうものだったと語ってくれます。上級生が下級生にわら細工を教え、みんなが一軒の家に集まってトビトビの日をすごしました。

 これとよく似た構造の集団で、大正時代頃までトビトビをおこなっていたのが石釜青年矯正会という青年団でした。

 矯正会は上下の区別が厳しい集団で、特に会に入ったばかりのマエガミ(6)は大変だったといいます。

 これまでトビトビを担ってきた青年や子どもの集団には、年齢的に上の者が下の者を指導してゆく、いわゆる年齢階梯制が色濃くみられます。

 この仕組みが事実上崩壊した現在、トビトビは子ども会という新しい規範のなかで、その存続を模索しています。


(4)日焼け
 日照り続きで水がなくなり、乾ききった田のことを日焼田といいます。
(5)記念すべき訪問
 ここでは、年の始め、すなわ1年の最も改まった一度の機会に、物を贈答して旧交を温める慣行を示しています。この来客が神であれば、それが最も望ましかったことでしょう。
(6)マエガミ
 青年矯正会で最も若い年齢の若者たちをマエガミと呼びました。彼らは青年たちが寝泊まりした青年宿での掃除・炊事といった雑用をこなさなければなりませんでした。マエガミより少し上の者をマエガミツカイ、矯正会の上層部をネンチョウといいました。
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