展示・企画展示室1

No.492

企画展示室1

聖者のかたち -羅漢-

平成29年4月25日(火)~6月11日(日)

◇十六羅漢とは
3 羅漢図(第二・四・六尊者)

3 羅漢図(第二・四・六尊者)

玄奘訳『法住記』には釈迦が入滅する際、現世に留まって仏法を護り伝えるように託した十六人の大阿羅漢の名と住所が記され、彼らを供養すれば大きな果報が得られると説かれています。それぞれの名は次のとおりです。
第一尊者 賓度羅跋囉惰闍(ひんどらばらだじゃ)
第二尊者 迦諾迦跋蹉(かなかばっさ)
第三尊者 迦諾迦跋釐堕闍(かなかばりだじゃ)
第四尊者 蘇頻陀(そひんだ)
第五尊者 諾距羅(なくら)
第六尊者 跋陀羅(ばだら)
第七尊者 迦哩迦(かりか)
第八尊者 伐闍羅弗多羅(ばじゃらふたら)
第九尊者 戎博迦(じゅばか)
第十尊者 半託迦(はんたか)
第十一尊者 囉怙羅(らごら)
第十二尊者 那伽犀那(ながせな)
第十三尊者 因掲陀(いんがだ)
第十四尊者 伐那婆斯(ばなばし)
第十五尊者 阿氏多(あじた)
第十六尊者 注荼半託迦(ちゅだはんたか)
これらの羅漢たちを供養する法会(ほうえ)のために成立したのが十六羅漢図で、中国では唐時代から盛んに制作されるようになりました。日本でも奈良時代には平城京(へいじょうきょう)の大安寺(だいあんじ)に羅漢画が存在したことが記録に見えます。鎌倉時代から室町時代にかけては羅漢信仰を重んじる禅宗の広がりとともに多くの十六羅漢図が制作され、慶友尊者(けいゆうそんじゃ)と賓頭盧尊者(びんずるそんじゃ)を加えた十八羅漢図や五百羅漢図も描かれるようになりました。「羅漢図」(図3)は朝鮮・朝鮮王朝時代に制作された極彩色の作品ですが、1つの画面に奇数(第一・三・五)と偶数(第二・四・六)の羅漢を3人ずつ配しています。もとは十八羅漢として六面一具だったと思われます。

◇様々な十六羅漢図
4 十六羅漢図(第七尊者)5 十六羅漢図

4 十六羅漢図(第七尊者)
5 十六羅漢図

ところで、日本の十六羅漢図には古い唐画(とうが)の伝統を引く和様(わよう)や奇怪(きっかい)な容貌が特徴の禅月様(ぜんげつよう)、濃彩(のうさい)で写実的な李竜眠様(りりゅうみんよう)など、いくつかの図様のパターンが知られています。このうち日本で最も普及したのは中国・北宋(ほくそう)時代の官僚で文人の李公麟(りこうりん)(竜眠(りゅうみん))が始めたとされる李竜眠様で全国に多くの作品が残っています。
勝福寺(しょうふくじ)(福岡市西区)の「十六羅漢図」(図4)は李竜眠様を簡略化した江戸時代の狩野派(かのうは)の作品です。筑前(ちくぜん)(現・福岡県)秋月藩(あきづきはん)の御用絵師(ごようえし)・斎藤秋圃(さいとうしゅうほ)(1768~1859)の「十六羅漢図」(図5)も李竜眠様の十六羅漢を1幅にアレンジした作品ですが、筆使いは柔らかく、恐ろしげな羅漢も親しみやすい姿にあらわされています。
一方、十六羅漢図の図様には厳密な決まりがないため多くのバリエーションが存在し、型にはまらない独自の表現も見られます。豊後(ぶんご)(現・大分県)出身の画家・田能村直入(たのむらちょくにゅう)(1814~1907)が安政3年(1856)に描いた「十六羅漢図」(図6)もそのひとつで、仏具の如意(にょい)に乗り海を渡る第九尊者や、侍者(じしゃ)に背中を掻(か)かせて恍惚(こうこつ)とした表情を見せる第十二尊者など、ユニークな羅漢たちが登場します。こうした表現からは聖者でありながら身近な存在としての羅漢をあらわそうとする作者の創意が感じられます。
(末吉武史)

6 十六羅漢図(右から第六・一・九・五・十二尊者)いずれも部分
6 十六羅漢図(右から第六・一・九・五・十二尊者)いずれも部分
6 十六羅漢図(右から第六・一・九・五・十二尊者)いずれも部分
6 十六羅漢図(右から第六・一・九・五・十二尊者)いずれも部分
6 十六羅漢図(右から第六・一・九・五・十二尊者)いずれも部分

6 十六羅漢図(右から第六・一・九・五・十二尊者)いずれも部分

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pressrelease

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