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No.194 |
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美術工芸展示室
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| 平成13年12月4日(火)〜平成14年3月31日(日) | |
| 阿吽(あうん)の呼吸という言葉があります。これは「共に1つの事をする時などの相互の微妙な調子や気持。特にそれが一致すること」(『広辞苑』)というように、互いの呼吸がぴったりと合っていることを指しています。 しかし、本来阿吽とは古代インドで使われた、サンスクリット語の最初の発音「ア(a)」と最後の発音「フーン(hum)」を合わせたところから発生したといわれています。アと口を開け、そしてウン(フーン)と口を閉じる。これを仏教では物事の始めと終り、つまりありとあらゆる物事を象徴的にあらわす言葉と考えてきました。 ところで、寺院では山門に阿吽1対の金剛力士(こんごうりきし)(仁王(におう))像が、神社には神前に獅子(しし)・狛犬(こまいぬ)が安置されています。これらは一般には憤怒の形相をあらわして、境内に魔物が侵入するのを防ぐ役割を担っているといえます。 しかしそれと同時に、阿吽1対であることは、その場所が信仰のうえで特別な空間であり、また阿吽自体が宗教的に重要な意味をもつことをあらわしているとも考えられます。 本展示では福岡市とその周辺に残る文化財の中から、最も代表的な「阿吽のかたち」ともいえる金剛力士像や獅子・狛犬を中心に紹介します。 ここではまず、@金剛力士像、A獅子・狛犬、Bその他、の順で、それぞれの起源や宗教的な意味について考えてみたいと思います。 【阿吽その一】 金剛力士像(こんごうりきしぞう)
金剛力士とは、一般に仏法を守護する1対の力士のことを指します。しかし、本来正しくは執金剛(しつこんごう)、あるいは密迹金剛(みつしゃくこんごう)と呼ばれる単身の護法神のことで、これがしだいに門や本尊の左右にあらわされるに及んで阿吽1対となり、しだいに二王、あるいは仁王と呼ばれるようになったようです。 仏教においては、阿形は悟りを求める菩提心(ぼだいしん)を、吽形はその結果としての悟りを意味します。また、金剛力士のもつ金剛杵(こんごうしょ)は、煩悩(ぼんのう)を打ち砕く智慧をあらわし、山門から本堂へという参拝の順序も、智慧によって悟りに至るということを、伽藍(がらん)配置と仏像によって象徴したものといわれています。 金剛力士の発生は古く、インドでは2世紀頃のガンダーラの彫刻に金剛杵を持ち、仏陀の側(そば)に付き従う守護神として登場します。また、中国では北魏時代(5世紀)の雲岡(うんこう)石窟や、隋時代(6世紀)の天龍山(てんりゅうざん)石窟の中に、1対の形式で見出すことができます。 日本では、現存作例としては法隆寺中門の奈良時代の仁王像が最も古く、鎌倉時代には運慶(うんけい)や快慶(かいけい)らによって東大寺南大門(なんだいもん)の仁王像が造られ、後の時代の規範となっていきました。 【阿吽そのニ】 獅子(しし)・狛犬(こまいぬ) 阿吽のかたちを示す代表的なものとしては金剛力士像と並んで、神社に安置される獅子・狛犬があります。 その起源はインドにあり、仏陀の威厳を象徴的にあらわすために仏像の台座にライオンの姿をあらわしたのが始まりといわれます。さらに中国ではこれに墓域を護る角(つの)のある想像上の守護獣という性格が加わり、日本では角のある狛犬、角のない獅子の組み合わせになったと考えられています。 私たちは普通これを無意識に狛犬と呼んでいますが、阿形(あぎょう)は獅子、吽形(うんぎょう)は狛犬というのが本来の呼び名です。ただしこの区別は必ずしも厳密には守られなかったようで、獅子どうしの組み合わせもしばしば見られます。 【阿吽その三】 その他 金剛力士像と獅子・狛犬の他にも阿吽のかたちを示すものは多く、例えば運慶の三男康弁(こうべん)が制作した奈良・興福寺の天燈鬼(てんとうき)・竜燈鬼(りゅうとうき)像など、美術史上有名な作品もあげることができます。 その他、千手観音(せんじゅかんのん)の眷属(けんぞく)としてあらわされる風神・雷神像や、神社の楼門などに安置される随神(ずいじん)(身)と呼ばれる弓矢を持つ1対の門神像の存在も見落とすことができません。 このように阿吽のかたちは、様々なところに見出すことができます。そして、互いに補い合いながら完成する、阿吽一対ならではの造形的魅力を備えているように思われます。 |
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