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No.006

考古・民俗展示室

アジアの凧

平成3年1月5日(土)~3月31日(日)

アジアの凧(たこ)

 お正月の風物詩でもある凧揚げの歴史は古く、その起源は西洋においては紀元前400年頃ギリシャで考案されたとも、紀元前2OO年頃中国・漢時代に作られたとも言われています。日本の凧は平安時代以前に中国から伝わり、『和名類聚抄(わみょうるいじゅうしょう)』によると「紙老鳶(しろうし)」あるいは「紙鳶(しえん)」などと記されています。江戸時代に編まれた『物類称呼(ぶつるいしょうこ)』によれば、凧の呼称は地域によって異なり、関東ではタコ、関西ではイカ、中国地方ではタツ、またはフウリュウ、九州の唐津ではタコ、長崎ではハタなどと称していました。

 今回は体験学習室の常設展示「アジアの遊戯」に関連して、九州地方とアジア各国(韓国・中国・マレイシア)の凧を展示することにしました。日頃、慣れ親しんでいる遊戯が広くアジア世界においても行われています。各国の民族性豊かな凧の形や模様をご覧ください。


人形面凧(熊本県)
人形面凧(熊本県)

九州の凧

 九州の凧は北部では凧作りを専業とする職人(凧師(たこし))が多く、伝統的な図柄と形を今に伝えています。南部では職人はほとんど現れず、各人が先祖から受け継いだ凧作りを伝えてきました。

 凧揚げの季節は正月に限らず、大分県臼(うすき)地方では旧盆、長崎では春に行われるなど、地域によって様々です。凧揚げは各地域での季節の風物詩になっています。

 長崎市では四角形の凧が用いられます。ここでは凧合戦が盛んで、凧糸に硝子(がらす)粉を塗り付けて相手の凧を切り落とす習慣があり、今も統けられています。同じ長崎県内でも、壱岐・平戸・五島では鬼の姿を描きます。福岡のせみの形をした凧、大分の奴(やっこ)凧などのほか、熊本県天草地方では人形面(にんぎょうめん)凧という珍しいものも伝えられています。


ヨン(韓国)
ヨン(韓国)

韓国の凧

 韓国の凧は「ヨン」と呼ばれ、中央に丸い穴が開いているのが特色です。統一新羅(しらぎ)時代(7世紀中頃)に通信用として使用されたのが始まりとされています。

 凧揚げの時期は元日から正月15日までで、最終日の15日には凧揚げが最も盛んとなります。これは15日を過ぎて凧を揚げることは禁忌(タブー)とされているからです。


オウム凧(中国)
オウム凧(中国)

中国の凧

 中国の凧は「風箏(フンジュン)」と言われ、鳥や昆虫の形をしたものが多く見られます。紙製と絹製の凧があり、羽根や胴体を取り付ける組立式となっています。

 凧揚げの季節は元日から3月の先祖を祭る清明節(チンミンチェ)までの約3ヵ月です。北部では大晦日に迎え入れた福の神を陰暦の正月15日の夜に天に送り返す習わしがあります。その日の午後から凧揚げを始め、日没後も凧を1ヵ所にくくり付けて、爆竹(ばくちく)を鳴らしたり、凧糸に灯篭(とうろう)を飾ったりします。夜が明けて、凧がなくなっていると災厄(さいやく)が風に流されたと信じられています。正月に凧を揚げるのは神送りと厄除(やくよ)けの意味が込められています。


月凧(マレイシア)
月凧(マレイシア)

マレイシアの凧

 マレイ半島東部のケランタン地方で作られている凧で、月凧(現地ではワウ)と呼ばれています。凧の羽根はつる草を描き、尾は三日月の形になっています。羽根の上部にはうなり音をたてるための竹ひごが付いています。

 月凧を揚げる時期は稲の収穫後や漁期の合間に行われ、農作物や漁獲への感謝の意味が込められています。

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pressrelease

休館日

開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
※2024年7月26日~8月25日の金・土・日・祝日と8月12日~15日は20時まで開館(入館は19時30分まで)
休館日
毎週月曜日
(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
※2024年8月12日~15日は開館し、8月16日に休館
※年末年始の休館日は12月28日から1月4日まで

Facata(博物館だより)

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