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No.100

黒田記念室

幕末の福岡2-ロシア船来航と長崎警備-

平成8年8月20日(火)~10月20日(日)

蝦夷闔境輿地全図
蝦夷闔境輿地全図
ロシア軍艦パルラーダ号
ロシア軍艦パルラーダ号

 江戸時代、幕府は「鎖国」政策をとっており、長崎でキリスト教を伝えないオランダ、中国の商人にのみ、貿易を許していました。福岡藩はその長崎港の警備を佐賀藩と1年交代で担当し、江戸時代の対外交渉に深くかかわっていました。

 さて、江戸時代後期になるとロシア、イギリス、アメリカなどの欧米諸国が東アジアに進出してきました。特に、ロシアは日本に通商を求め蝦夷地(えぞち)(現北海道)に使節を派遣してきます。仙台の思想家である林子平(はやししへい)はロシアが日本と国境を接する位置にあることから、『三国通覧図説(さんごくつうらんずせつ)』『海国兵談(かいこくへいだん)』を著し、対ロシアを念頭に置いた海防論を称えましたが、人心を惑わす者として幕府から処罰されました。しかしながら幕府も、ロシアの極東進出への対抗上、当時未開の地であった蝦夷地の開発に乗り出し、近藤重蔵(こんどうじゅうぞう)や間宮林蔵(まみやりんぞう)を国後(くなしり)、択捉(えとろふ)、樺太(からふと)(現サハリン)などの調査や探検に派遣したりしました。

 ところで、長崎港では文化元(1804)年にロシアのレザノフが通商を求めて入港します。当時、幕府の対外交渉の窓口が長崎であったことから、使節が蝦夷地でなく長崎に派遣されてきたのでした。しかし、幕府の許可を得ることはできませんでした。また文化5(1808)年にはイギリス船フェートン号がオランダ船と偽って入港します。

 さらに嘉永6(1853)年には、1月前に来日した浦賀(現神奈川県)に来たアメリカのペリーに負けじとロシアのプチャーチンが長崎に通商、国境策定を求めて来航します。幕府は長崎に大目付筒井正憲(つついまさのり)、勘定奉行川路聖謨(かわじとしあきら)を派遣し交渉にあたらせました。この間、長崎警備の当番であった福岡藩主黒田長溥(ながひろ)自らがロシア船の回りを見廻り、警備にあたりました。

 黒田長溥は福岡藩第11代藩主で長崎警備のかたわら、オランダ商館医シーボルトと会うなど、西洋事情に通じた開明君主として知られており、アメリカのペリーやロシアのプチャーチンが貿易を求めて来日した時、攘夷の意見が強い中にあって貿易許可を前提とする積極的な開国論を説いた大名として知られています。

 そして、翌安政元(1854)年、幕府は貿易の許可を含むアメリカ、イギリス、そしてロシアと和親条約を次々と結び、ついに鎖国が破れたのでした。

 本展示では、開国に至るまでの江戸時代後期の対外交渉について、ロシア船の来航と福岡藩のかかわりを中心に「崩れゆく鎖国」・「新時代の幕開け」の2コーナーにわけて紹介します。

資料解説

蝦夷闔境輿地全図(えぞよちほうぜんず)

 樺太、北海道等日本の北方地域を描いたもの。江戸時代中期、ロシアの極東への関心が高まり、幕府はその対抗上、蝦夷地(現北海道)の開発に乗り出し、近藤重蔵、間宮林蔵などを国後、択捉、樺太(現サハリン)の調査、探検に派遣した。

ロシア軍艦パルラーダ号

 ロシアのプチャーチンが乗っていた軍艦。プチャーチンは浦賀にきたアメリカのペリーに続き、嘉永6(1853)年に通商、国境策定を求めて長崎に入港した。この軍艦はフリゲート艦と称される軽快で航洋性のある種類である。


魯西亜人長崎渡来幕吏談判之図(ろしあじんながさきとらいばくりだんぱんのず)

 プチャーチンと長崎に派遣された幕府役人との交渉を描いている。福岡藩の御用絵師尾形探香(おがたたんこう)が描いたものを息子の至が写した。

魯西亜人長崎渡来幕吏談判之図 魯西亜人長崎渡来幕吏談判之図
魯西亜人長崎渡来幕吏談判之図
黒田長溥像
黒田長溥像

黒田長溥像(1811~1887)

 福岡藩第11代藩主。西洋事情に精通しており、攘夷が叫ばれる中、貿易許可を前提とする積極的な開国論を展開した。

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