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No.139

歴史展示室

博多出土の渡来銭展-おかねの歴史-

平成10年12月22日(火)~平成11年4月4日(日)

(1)昭和32年博多駅前1丁目出土の備前焼壷(容器)と備蓄銭(1部)(びちくせん)
(1)昭和32年博多駅前1丁目出土の備前焼壷(容器)と備蓄銭(1部)(びちくせん)
(2)青磁碗でふたをした状態で出土した、12個の墨書礫(ぼくしょれき)と12枚の銅銭(地鎮遺構(じちんいこう))
(2)青磁碗でふたをした状態で出土した、12個の墨書礫(ぼくしょれき)と12枚の銅銭(地鎮遺構(じちんいこう))

 古代、近世の社会と異なり、日本の中世社会では銭貨(せんか)は鋳造(ちゅうぞう)・発行されず、もっぱら中国などの外国からの渡来銭(とらいせん)(輸入銭)が流通していた。博多はその流入口にあたり、現在9,OOO点余の銭貨が出土している。これらの出土銭の研究から、博多は平安時代の11世紀末~12世紀初めの早い時期から渡来銭が流通し、日本のなかでも特異な地域であったことがわかってきた。

 今回の展示では、日本の中世社会で流通し博多で出土した中国渡来銭を中心に、大量の埋納銭(まいのうせん)、日本古代の官銭(かんせん)、中世の模鋳銭(もちゅうせん)、近世の官銭、特殊な加工銭など、さまざまな銭貨を紹介する。渡来銭(輸入銭)からどんなことが歴史的にいえるのか、福岡の歴史にとってどんな意味をもっていたのか、考えてみたい。

1 埋納銭

 出土銭は、その出土状況から大きく埋納銭(まいのうせん)と遺失銭(いしつせん)の2つに分類できる。埋納銭には中世の埋蔵金とでもいうべき備蓄銭(びちくせん)(写真1)、経塚(きょうづか)に副葬(ふくそう)された銭、祭祀(さいし)や地鎮(じちん)の際に埋められた銭(写真2)、中世・近世の墓に副葬された六道銭(ろくどうせん)や奉賽銭(ほうさいせん)などがある。全国の備蓄銭のなかには数千枚、時には10万枚以上を超える銭(多くは中国からの渡来銭)が発見されることがあり、いかに大量の渡来銭が流通していたか驚かされる。埋納には銭種を人々が選択する場合があり、埋納銭から当時の銭貨の流通、使用状況を復原するには慎重な分析が必要である。

2 遺失銭

 遺失銭(いしつせん)は、紛失や災害、銭の劣化などにより捨てられた状態で、包含層(ほうがんそう)や土坑(どこう)などの遺構から出土する銭賃である。このような出土の性格からいって、遺失銭は埋納銭に比べて銭種の人為的な選択が少ない銭貨といえる。遺失銭を分析することによって、当時の銭貨の流通や使用状況、さらにその時代的変遷をより正確に知ることが可能となる。今後の銭貨研究は、出土数は多くはないが、従来の備蓄銭を中心とした研究から遺失銭を基礎にした研究に進んでいく必要があろう。


(3)和同開珎(わどうかいちん)(上は表、下は裏)和銅元年(708)初鋳、径2.5cm(実物大)
(3)和同開珎(わどうかいちん)(上は表、下は裏)和銅元年(708)初鋳、径2.5cm(実物大)
(4)博多で出土例が多い当十銭(とうじゅうせん)(1枚10文適用の大型銭)崇寧通寶(すうねいつうほう)1103年初鋳、径3.5cm(実物大)
(4)博多で出土例が多い当十銭(とうじゅうせん)(1枚10文適用の大型銭)崇寧通寶(すうねいつうほう)1103年初鋳、径3.5cm(実物大)

(1)日本古代の官銭

 弥生や古墳時代の遺跡から中国の古代銭貨が出土するが、これはお金として流通していなかったらしい。日本で流通貨幣がはじめて登場するのは、唐の開元通寳(かいげんつうほう)をまねて、和銅元年(708)に発行された和同開珎(わどうかいちん)(写真3)をはじめとする古代の官銭(かんせん)(皇朝十二銭(こうちょうじゅうにせん)からである。九州では太宰府や博多からの出土が多く、博多では12種類のうち5種11枚が出土、九州全体で10種167枚ほどが発見されている。これは近畿地方周辺の出土量に比べると少ない。

(2)渡来(輸入)銭

 10世紀半ばの乾元大寳(けんげんたいほう)(958年初鋳)を最後に貨幣発行が停止されてからも、貨幣の必要性はますます高まっていった。平安時代後期以降、貨幣不足を解消するために砂金・水銀・硫黄(いおう)などが輸出され、中国から大量の銅銭が輸入、流通するようになった。平安後期から鎌倉時代には唐銭や宋銭(写真4)、室町時代にはこれに加えて明銭が盛んに輸入された。博多では現在9,OOO点余の出土銭が確認されており、とくに北宋銭が多いことが知られている。

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開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
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休館日
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(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
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