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No.144

考古・民俗展示室

博多結婚事情

平成11年5月11日(火)~平成11年7月18日(日)

嫁入り風呂敷
嫁入り風呂敷

1、結婚の方式

 日本の結婚には、大きく分けて婿入(むこい)り婚(こん)と嫁入(よめい)り婚(こん)という2つの方式がありました。これらは結婚を成立させる儀式をどこでおこなうか、結婚生活をおくる場所がどこであるかという2つの点を分類の目安にしています。

 婿入り婚は、婿入りの儀式を嫁方(よめがた)でおこなった後、しばらくは嫁方に新婚生活の拠点をおくというもので、夫は夜ごと妻のもとに通う生活をおくります。この期間は短くて2、3ヶ月、長いものになると数年ほど続きました。

 いっぽうの嫁入り婚は、嫁入りの儀式を婿方(むこがた)でおこない、そのまま婿方で結婚生活を営むというもので、一般に「伝統的」な結婚とイメージされているのはこの方式の結婚でしょう。

 歴史的には婿入り婚から嫁入り婚へ変化してきたとみることができますが、全国にはその中間的なかたちが多くありました。その代表が足入れ婚です。足入れ婚は、結婚を成り立たせる儀式を婿方でおこないますが、しばらくは夫が妻のもとに通うというもので、儀式の場所からみると嫁入り婚、生活の場所からみると婿入り婚というものです。

 博多の結婚は典型的な嫁入り婚ですが、嫁の里帰りに婿が同行することを婿入りといったり、婚礼のあと1年あるいはそれ以上経ってから入籍がおこなわれる試験婚的な面もみられる場合があり、婿入り婚的要素が全くないわけではありませんでした。

 現在のような結婚式は昭和になって急速に普及し、定着したものです。とくに神前結婚式は、それまでの婚礼と比べて経済的、時間的に楽で、しかも荘厳(そうごん)であるという点で圧倒的な支持を得ました。

昭和初期の結婚写真
昭和初期の結婚写真

 もともと日本の結婚式は宗教との結びつきがほとんどありませんでした。教育勅語(きょういくちょくご)を規範とする礼法(れいほう)の重視から生み出されたこの新しい方式は、家庭を式場とした結婚式から、神を前にした専門の式場での結婚式への変化を起こしました。

 戦後の民主化の中でも神前結婚式は支持され続け、個人の尊重を基礎とする新しい法意識との間で、さまざまな葛藤(かっとう)を繰り広げる場となりました。近年次々に生み出される新方式の結婚は、これらのストレスをやわらげるために当事者と業界が生み出した一種の知恵なのかもしれません。

2、博多の「伝統的」な結婚

 (1)相手探し

 かつて博多では、顔の広い世話好きな人が、年頃の息子を持つ家に、適当と思われる花嫁候補を紹介することが多かったようです。男性側はその女性について詳しく調べ、またカゲミ(陰見)といって普段の生活ぶりをこっそり観察し、いいとなれば女性側への打診を頼みました。このように相手探しの仲介をする人のことをハシワタシ(橋渡し)といいます。

 話を受けた女性側も相手のことを詳しく調べました。これをキキアワセ(聞き合わせ)といいます。これで良い結果が得られると、娘さん本人が男性の日常を観察することもありました。そうしてお互いに納得するまで相手を調べ、はじめて見合いということになりました。

 (2)見合い

 大正時代以前は、ヨメミ(嫁見)といって男性側が娘さんの姿を観察するだけということが多かったようです。博多で見合いの形が整えられてきたのは、大正から昭和の初め頃であったといわれます。当時は劇場などが見合いの場としてよく使われたようです。お互いが近くの枡席(ますせき)に座り、芝居の幕開に親たちが話しをする横で相手を見知るものでした。また娘さんの家を訪問することもありましたが、本人は一度お茶を出しにあらわれるだけというのがほとんどでした。翌日、ハシワタシの人は話を進めるかどうか男性側に尋ねます、よいということになれば女性側に尋ね、承諾が得られたところで二人の交際が始まるものでした。交際の期間は長くて3ヶ月ほどでした。

 (3)すみ酒

 交際が進むとハシワタシの人は頃合を見て娘さんの家を訪れ、結婚の承諾をとりつけます。するとその日のうちに男性側の使者が酒一升と鯛一匹を女性側へと運び込みスミザケ(すみ酒)となります。正式な申し込みと承諾のあいさつが交わされると、娘さんがノシダシ(熨斗(のし)出し)をしました。これは娘みずから男性側に熨斗を納め、結婚を承諾したことを示すものです。ノシダシが終わると、盃が交わされ、持ち込まれた鯛が吸物になって出てきます。このあと双方で小宴が持たれ、今後の方針が話し合われました。このスミザケから婚礼までは1ヶ月以上あけるものとされました。

結納の品々
結納の品々

 (4)結納

 スミザケが終わると仲人が決められました。仲人が間に立って調整し、婚礼の1週間ほど前に結納(ゆいのう)が納められました。ニサイリョウ(荷宰領)と若者2人で朝早く持ち込むものでした。結納の品は7つあるいは9つの台に飾り付けられます。荷宰領たちに祝いの膳が出される間、父親は目録を写し取り受取書としました。結納の席に仲人は同行せず、また娘も出席しないものでした。

 結納が終わると、女性側では婚礼までの間に近所の奥さんたちを招いて結納の品を披露するオチャミセ(お茶見せ)や、揃えた嫁入り道具を広げてニミセ(荷見せ)がおこなわれました。

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