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No.153

考古・民俗展示室

ハカタウツシ-博多を意識するこころ-

平成11年10月13日(火)~12 月26 日(日)

博多祇園山笠「追い山」
博多祇園山笠「追い山」

ハカタウツシとは何か

 博多は商都として、中世以来、多くの人々を惹(ひ)きつけてきました。その華やかな都市の文化は周辺の町や村に影響を与え、博多を模範とした祭りやしきたりを生み出しています。北部九州では、この現象をハカタウツシと呼びます。ハカタナライであるとかハカタマネビという言い方がされることもありますが、概(おおむね)ね同じ意味で使われています。ハカタは博多のこととわかりますが、ウツシというのはどういう意味なのでしょうか。

 小学館の『日本国語大辞典』によれば、ウツシには移や写・映などの漢字があてられます。移は「事物、心などを別の場所に動かすこと」、写・映は「元になるものに似せて、それとそっくりにつくること」という意味になります。ハカタウツシの場合は、どちらの意味をも持ち合わせた言葉であるといえ、「博多の文化様式が、移入・模倣され定着したこと」を意味する民俗語彙(ごい)であると捉えています。

浜崎祇園山笠
浜崎祇園山笠
日回祇園山鉾
日田祇園山鉾

山笠のひろがりとかたち

 ハカタウツシを最もよくあらわしたものが、北部九州一帯に100ヶ所以上も分布している山笠行事なのです。各地の山笠をそれぞれのかたちで整理していくと、5つのグループにわけることができます。それを博多系・津屋崎(つやざき)系・浜崎(はまさき)系・日田(ひた)系・直方(のおがた)系と呼ぶことにしました。以下、その特徴を簡単に紹介しておきましょう。

 博多系は、文字どおり博多祇園山笠を中心とするもので、飾りの形式は「岩組山(いわくみやま)」と呼ばれます。博多の山笠の飾り一式あるいは人形の頭だけを借用したり、博多の人形師に製作を依頼することが多く、かたちも博多の山笠とほとんど同じです。

 津屋崎系は、江戸時代博多櫛田神社から津屋崎に祇園神とともに山笠が遷(うつ)されて始まったもので、飾りは津屋崎人形師が作ります。かたちは博多に比べて少し小振りですが、よく似ています。田舎山(いなかやま)と呼ばれるのが特徴です。

 佐賀県東松浦郡一帯の山笠は浜崎系です。博多と同じ「岩組山」ですが、人形は浜崎の人形師が作ってきました。前後に人形を張り出して飾るところが博多系とは趣(おもむき)を異にしています。

 日田系も「岩組山」で、今度は左右に飾りを張り出すところに特徴があります。使う人形も博多と異なり、文楽系の顔をした木製の日田人形を使います。

 直方系は、かたちは博多とは違って、曳(ひ)き山で「屋台山(やたいやま)」と呼ばれます。館や人形を横に開くように飾るのが特徴です。直方の人形師が作ります。

 この5系の山笠のうち、博多系や津屋崎系は博多と関係があることがわかりますが、他はどうなのでしょうか。大分県日田や東松浦郡一帯では、「博多の人形が回ってくる」という伝承があります。人々が日田系や浜崎系の山笠の人形は博多山笠のものだと見ていたことになります。実際に、日田は博多から山笠人形や飾りを借用していた時期があり、浜崎の人形師は、博多人形師から山笠人形の頭型を譲り受けて山笠製作にあたってきた経緯がありました。このことが、この伝承を生んだのだといえます。

 直方系は飾りの形式も博多とは異なりますが、人形師が津屋崎人形師と親族関係にあったり、博多人形師に師事したりという系譜があり、これも間接的ではありますが博多との接点を見つけることができました。

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