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No.169

美術・工芸展示室

チベット寺院の堂内と荘厳

平成12年8月1日(火)~平成13年3月25日(日)

ダーキニー
密教の秘密仏の妃

 チベットはヒマラヤ山脈の東方に広がる標高4000メートル以上の大高原地帯の呼び名です。厳しい自然が支配するこの地域には、古くからボン教という土着の宗教がありました。しかし7世紀頃、初めて仏教が伝来したのに続いて、8世紀にはチベット国王によってインドから高僧シャーンタラクシタや大行者パドマサンバヴァが招かれ、大寺院が建立されました。これ以来仏教はチベットに根づき、13世紀にインドで仏教が衰退した後も、ボン教の影響を受けながら独自のチベット仏教として発展していきました。
 チベット仏教の特徴は強い密教(みっきょう)的性格にあるといわれます。密教はインドで土着の呪術的信仰の要素を取り入れて5世紀頃に成立した仏教の一派です。従来の仏教との最大の違いは人間の感覚を積極的に肯定し、それを悟りを得るために利用しようとしたことです。
 密教は日本にも9世紀の初めに弘法大師空海によって伝えられています。しかしチベットの密教は、9世紀以降インドでさらに研究が進められ発展した後期密教の影響を強く受けています。そのため日本の密教とは共通する部分もありながら思想的にはさらに進んでおり、マンダラや仏の種類などもより複雑で多彩なものになっています。
 チベット寺院の堂内は極彩色に彩られ、多くの手脚や眼をもつ恐ろしい姿の仏や、修行のパートナーとされる妖艶(ようえん)な女神の尊像などが祀られています。また、男尊と女尊が抱き合った秘密仏ともいわれる尊像もみられます。日本の穏やかな仏像を見慣れた私たちにとってはちょっと異様に思えるかもしれませんが、これらは密教の教義を仏像の姿や色彩によって象徴的にあらわそうとしたもので、それぞれに深い意味が込められているのです。
 さて、本展示ではチベット寺院の本堂(=ツクラカン)を展示室に再現しました。見たこともないような極彩色の不思議な世界を体験してみましょう。

降伏具(ごうぶくぐ)(デルチェー)邪悪な魔を改心させるために用いる密教法具
降伏具(ごうぶくぐ)(デルチェー)
邪悪な魔を改心させるために用いる
密教法具


大笛(おおぶえ)(トゥンチェン)法会の開始を告げるラッパ
大笛(おおぶえ)(トゥンチェン)
法会の開始を告げるラッパ

◇「ツクラカン」について
  展示したコレクションは平成11年度に南蔵院(なんぞういん)(糟屋郡篠栗町)から福岡市に寄贈されたものです。内容はツクラカンと呼ばれるチベット寺院本堂の内部を再現したもので、インドのダージリンにあるカンギュル僧院の本堂をモデルにしています。製作には著名なチベット学僧ケーツンサンポ師が指導にあたり、チベット仏教でも最も古い伝統を汲(く)むニンマ派の教義に基づいてインドやネパールに住む現代の職人が製作しました。コレクションは主体をなす大型の本尊壇をはじめ、多数の仏像、経典、仏具、楽器、法衣、仏画などからなり、総数は約400点にも及びます。
 これらを組み立てることによってチベット寺院の内部と僧侶の生活の様子が再現され、日本では見ることのできないチベット仏教の世界を体感することができます。本コレクションを通じてより深いアジア地域の文化理解の一助となれば幸いです。

(末吉武史)

休館日

開館時間
午前9時30分~午後5時30分
(入館は午後5時まで)
7月22日から8月27日のうちの金・土・日ならびに8月14日、15日は午後8時まで開館(入場は午後7時30分まで)
休館日
毎週月曜日
※月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日休館
8月14日、15日は開館、8月16日は休館
※年末年始の休館日は12月28日から1月4日まで
pressrelease

Facata(博物館だより)

福岡市博物館

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