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No.170

歴史展示室

戦国時代の博多展4 乱世の終焉・九州平定

平成12年8月8日(火)~10月1日(月)


図1 黒田孝高と小早川隆景が博多に出した
禁制(史料15)

 百年に及んだ戦国の争乱は、豊臣秀吉(とよとみひでよし)の全国統一により終止符が打たれます。
 九州における戦乱は、天正(てんしょう)6年(1578)末以降最終段階を迎え、豊後(ぶんご)の大友(おおども)氏、薩摩(さつま)の島津(しまづ)氏、肥前(ひぜん)の龍造寺(りゅうぞうじ)氏、3氏による三つ巴 の様相となります。筑前(ちくぜん)や博多(はかた)を治めていた大友氏は天正6年末、日向耳川(ひゅうがみみかわ)の戦において島津氏に敗れると、急速に勢力を失いました。この隙を突いて龍造寺隆信(たかのぶ)が筑前に攻め込み、大友方の鷲ヶ岳(わしがたけ)城(筑紫郡那珂川町)、柑子岳(こうじだけ)城(福岡市西区)、安楽平(あらひら)城(同早良区)は相次いで攻め落とされ、天正8年には博多も襲撃され焦土と化しました。
 しかし、龍造寺氏の勢力拡大も、天正12年(1584)3月、肥前沖田畷(おきたなわて)の戦で、隆信が島津・有馬(ありま)連合軍に敗れ戦死するとかげりをみせ、大友氏は立花(たちばな)城(福岡市東区・糟屋郡)の戸次道雪(べっきどうせつ)と宝満(ほうまん)・岩屋(いわや)城(太宰府市)の高橋紹運(たかはしじょううん)を中心として態勢を立て直し、反撃に出ます。
 天正13年以降は、島津氏が他を圧倒し、その勢力は北部九州にまで達するようになりました。そこで、大友宗麟(そうりん)は、同14年3月、大坂(おおさか)城に秀吉を訪れ、救援軍の派遣を要請します。援軍が到着する以前の7月、島津氏は肥前勝尾(かつのお)城(佐賀県鳥栖市)や宝満・岩屋城を陥落させ、とくに岩屋城では、高橋紹運をはじめ籠城した全員が討ち死にする壮絶な戦いが繰り広げられました。次いで、島津軍は紹運の息立花統虎(むねとら)(後の宗茂(むねしげ))が守る立花城の攻撃に向かいますが、8月に豊臣秀吉は黒田孝高(くろだよしたか)を軍奉行とする大軍を九州に派遣し島津軍は撤退を開始します。統虎は島津方の高鳥居(たかとりい)城(糟屋郡篠栗町・須恵町)を攻めて陥落させ(図2)、秀吉は味方の拠点とすべく、立花城の守りを固めるよう黒田孝高・安国寺恵瓊(あんこくじえけい)に命じています(図4)。また、秀吉は戦乱で荒れた博多の保護・復興に乗り出し、孝高と小早川隆景(こばやかわたかかげ)は博多に禁制を掲げ、豊臣軍の乱妨狼藉(らんぼうろうぜき)を禁じています(図1)。
 翌15年3月、秀吉自身も出陣し、「やせ城(じろ)共の事は風に木葉(このは)の散(ちる)ごとく成すべく候」(図3)と、圧倒的軍事力をもって各地を制圧しながらゆっくりと薩摩まで南下し、5月に島津義久を降伏させ、九州平定を実現しました。秀吉は、薩摩からの帰途、6月に箱崎(はこざき)において九州国分(くにわ)け(領土の配分)を行い、立花統虎は筑後柳(やな)川城に移され、小早川隆景が新たに筑前に入部します。後に福岡藩主となる黒田氏は、この時、豊前(ぶぜん)6郡を与えられ(図5)、中津(なかつ)城を築城します。九州平定により、大名同士の戦いは私戦として禁じられましたが、旧来からの在地勢力はそれまで持っていた権利を否定されることになり、軋轢(あつれき)を生じます。この不満は国分けの直後に表れ、肥後・肥前・豊前において同時多発的に国衆(くにしゅう)一揆が勃発しました。豊臣政権は厳しい態度で望み、抵抗する領主は成敗するよう命じています。九州平定は単なる平和の到来ではなく、中世的な社会秩序を否定することで新しい社会を築いていったのです。
 本展覧会では、九州の戦国時代に終わりを告げ、近世社会の幕開けとなった豊臣秀吉による九州平定について、館蔵の古文書を中心に紹介します。

(堀本一繁)

図2 島津方の高鳥居城を攻略した時の立花統虎感状写(史料13)
図2 島津方の高鳥居城を攻略した時の立花統虎感状写(史料13)

図3 黒田孝高に島津攻めの作戦を伝えた豊臣秀吉朱印状(史料16)
図3 黒田孝高に島津攻めの作戦を伝えた豊臣秀吉朱印状(史料16)

図5 九州平定後、黒田孝高に豊前6郡を与えた豊臣秀吉知行充行状(史料25)
図5 九州平定後、黒田孝高に豊前6郡を与えた
豊臣秀吉知行充行状(史料25)
図4 立花城の守備を固めるよう命じた豊臣秀吉朱印状(史料14)
図4 立花城の守備を固めるよう命じた豊臣秀吉朱印状
(史料14)
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