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No.194

美術・工芸展示室

ふくおかの文化財展9-阿吽(あうん)のかたち-

平成13年12月4日(火)~平成14年3月31日(日)

5 木造雷神像(もくぞうらいじんぞう) 1対

前原市 千如寺大悲王院(せんにょじだいひおういん)
像高(阿形)91.8センチメートル/(吽形)90.5センチメートル/南北朝時代(14世紀)

 ③の密迹金剛力士(みっしゃくこんごうりきし)像、那羅延堅固王(ならえんけんごうおう)像とともに千如寺本尊の千手観音像を取り巻く、木造二十八部衆のうちの2躯の雷神像です。
 阿吽両像とも材質はヒノキで、構造は前後2二材による寄木造です。どちらも背後に太鼓をあらわし、同じように臂(ひじ)を曲げて撥(ばち)を握っている姿は雌雄1対の雷神の夫婦のようで微笑ましく、また表情もどこかユーモラスです。
 両像とも他の二十八部衆の諸像と共に制作されたと思われ、制作年代は、肉身部の表現が形式化しつつあることから南北朝時代と考えられます。
 ところで、二十八部衆は千手観音を守護する28人の護法神ですが、風神と雷神が各々含まれるのが普通です。  しかし千如寺では、風神の代りに雷神があてられ、合わせて一対の雷神となっているのは、おそらく千如寺とゆかりの深い雷山(らいざん)の名にちなむ後世の改変なのかもしれません。
 特に阿形は髪の毛の流れ方や、腕の向きから本来は風の入った風袋を背負っていた風神であっ た可能性が考えられます。
 二十八部衆の彫刻による作例は、鎌倉時代中期に作られたと考えられる京都・妙法院(みょうほういん)(三十三間堂)のものが最も古いと思われ、九州地方では千如寺の他に、熊本県の康平寺(こうへいじ)跡観音堂に鎌倉時代末期の作例が残っています。
 なお、風神と雷神は対であらわされることが多く、東京の雷門(かみなりもん)という地名も、浅草寺(せんそうじ)の門に風神・雷神の像が安置されることに因(ちな)んでいます。



阿形

吽形

6 石造獅子(せきぞうしし) 1対

福岡市西区 飯盛神社(いいもりじんじゃ)/高(阿形)47.4センチメートル/(吽形)46.7センチメートル南北朝時代(14世紀)


 飯盛神社に伝来した砂岩製の獅子です。いずれも体を捻り、吽形は子獅子を、阿形は毬を抱えています。このような姿は中国宋時代の形式を伝えることから宋風獅子(そうふうしし)と呼ばれています。
 宋風獅子は、建仁元年(1201)の銘文をもつ宗像郡玄海町・宗像大社(むなかたたいしゃ)の石造獅子をはじめ、数件が知られています。しかし、全国的には福岡県に集中しており、このことは福岡と大陸との歴史的交流を物語っています。
 飯盛神社は、飯盛山の麓に鎮座する旧早良郡(福岡市西部)一の宮で、中世には多くの神領があったことが同社に伝わる古文書から窺えます。


7 木造獅子(もくぞうしし) 1対

柳川市 日吉神社(ひよしじんじゃ)/総高(阿形)73.2センチメートル/(吽形)74.4センチメートル江戸時代(18世紀)


 堂々と胸を反り上げた、やや大型の獅子です。台座の銘文から、江戸時代の元禄15年(1702)に長崎の仏師馬場権兵衛(ばばごんべえ)によって制作されたことがわかります。
 阿形はヒノキ、吽形はクスノキによる寄木造で、体の各部にみられる巻き毛や胸の鈴飾りなどは、中国の獅子の影響を思わせます。江戸時代における中国文化の門戸であった長崎の仏師らしい作品といえるかもしれません。

(末吉武史)

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