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No.207

歴史展示室

朝鮮王朝の美

平成14年7月23日(火)~9月16日(月・祝)

 言うまでもなく、日本と韓国は古代以来文化的に深い関係にあります。
 去る6月にはサッカーのFIFAワールドカップが日韓共催で開催されました。両国ともリーグ戦を勝ち抜き、決勝トーナメントに進みましたが、惜しくも日本は初戦で敗退、一方韓国チームはベスト4に進出し世界の人々の注目を集めました。
 そこで、これを機会に隣国韓国の文化をより理解するために、当館が所蔵している朝鮮王朝の美術を紹介することにしました。
 朝鮮王朝は1392年、高麗軍の武将であった李成桂が王位につき太祖と称し、翌年国号を朝鮮としたことにはじまります。首都は漢城(今のソウル)で朝鮮半島全土を領有しますが、朝鮮王朝は1910年の日本の韓国併合により消滅するまで約500年間続きました。
 朝鮮王朝は高麗時代に盛んであった仏教にかわって、儒教を国家思想に採用し、それにもとづいた科挙という官僚任用試験をおこないました。やがて15世紀には国家はヤンバン(両班)とよばれる特権階層化した国家官僚によって支配されます。ヤンバンの文人による文化が開花し、民衆も独自の文化を形成していきました。
 朝鮮王朝時代の美術は、日本では李朝美術と呼ばれて親しまれてきました。今展で朝鮮王朝の美をご鑑賞ください。


朝鮮画

山水図

 朝鮮王朝建国に功績のあった儒学者たちは、崇儒廃仏の国策もあって勢力を拡大していきましたが、彼らの余技は中国(宋・元)の影響をうけて流行していた水墨画を描いたり鑑賞することでした。
 朝鮮王朝時代は儒者や文人そして宮中の絵師たちが描く詩情豊かな水墨画の山水、儒者の祖先崇拝の思想から発達した肖像画、そして招福を願った生活画(民画)などすばらしい絵画が多く描かれました。


民画

 民画とはいわば民衆絵画という意味の日本でつくられた造語ですが、民衆の日常生活を基盤とした生活画あるいは実用的絵画です。
 本来民画は掛幅でなく屏風装のもので、部屋をより快適な生活空間にするために、客間には格調高い山水画、若夫婦の部屋には華麗な花鳥画、子供部屋には学問成就の文字絵といったように飾る部屋によって画題を選びます。
 人々は年中行事や人生儀礼があるたびに、あるいは冬の厳しい気候から身を守るため、現世の幸福、生活の安定を願い家具のごとく民画を飾りました。

虎図屏風

木工

 朝鮮王朝時代の工芸には、木を素材にしたものが多くみられます。清廉にして人格高潔な、儒教の理念を具現した男性を理想としたヤンバンたちは、服装にも注意をはらい、紗帽を納めた帽子箱や髷(まげ)の乱れを防ぐマンゴン(網巾)を入れたマングントン(網巾筒)を携帯し、目上の人に会ったときに失礼がないように用意していました。地位を示す帽子(冠)を入れた箱は、ケヤキ製で意匠にも配慮しました。


紙縒(こより)

 朝鮮王朝時代の独特の工芸品に、紙縒で制作した八角膳などがあります。このころは漢詩が流行し大量の書き損じた紙が生じました。反故紙(ほごし)で紙縒をつくって工芸品を制作することはいわば紙のリサイクルです。


螺鈿(らでん)

藻魚文螺鈿深盆

 光沢のあるアワビなどの貝を紙のように薄く削り、漆を塗った工芸品に貼り付けて文様を描いていく螺鈿は、高麗時代から盛んに制作されますが、朝鮮王朝時代にはさらに技術が進歩し、文様の形に切った貝片に人工的に亀裂をいれて装飾をつけたり、貝片に陰影をつけるためにわざわざ割って貼りこむ「割り貝」の技法が考案されました。朝鮮王朝時代の螺鈿技術は日本へ伝わり、16~17世紀のヨーロッパへの輸出漆器などに影響を与えました。


ポジャギ(褓子器)

 ポジャギは日本の風呂敷のように、物を運ぶときに包んだり、婚礼のときの袱紗のように物を包んで保護したりするときに使用します。単色のあるいは色々の端切れを縫って継ぎ合わせ、ときには刺繍を施したりして芸術性豊かに仕上がっています。作ったり使用するのは女性です。倹約を美徳とする朝鮮王朝時代の女性が、小片の布一つ一つを大切に継ぎ足して長寿を祈り、より念を入れて作り上げることが招福へ通じると信じて作りました。

(田鍋隆男)

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休館日

開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
※2024年7月26日~8月25日の金・土・日・祝日と8月12日~15日は20時まで開館(入館は19時30分まで)
休館日
毎週月曜日
(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
※2024年8月12日~15日は開館し、8月16日に休館
※年末年始の休館日は12月28日から1月4日まで

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