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No.243

美術・工芸展示室

ふくおかの文化財展10 最後の博多仏師-高田又四郎-

平成16年6月29日(火)~9月26日(月)


高田又四郎(1874~1914)

 仏像の制作や修理を専門におこなう職人を仏師(ぶっし)と呼びます。ここで取りあげる高田又四郎(たかだまたしろう)(1847~1915)は、明治期の福岡・博多で活躍した代表的な仏師です。彼は博多・聖福寺(しょうふくじ)山門の羅漢像をはじめ、数多くの優れた作品を制作したほか、福岡出身の近代彫刻家山崎朝雲(やまざきちょううん)の最初の彫刻の師であったことでも知られています。
 又四郎の生きた明治期は仏師にとって受難の時代でした。江戸時代から続く仏師の家系は、明治維新直後の神仏分離(しんぶつぶんり)と廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)によって仕事が激減し、同時に武家や寺社の庇護も失いました。
 このような中で、仏師たちは自活のため様々な挑戦を試みます。又四郎と同じ仏師の出身で、後に日本の近代彫刻を切り開いた高村光雲(たかむらこううん)も、若い頃は海外輸出用の象牙彫刻で生計をたてながら、西洋流の写実主義を学んだといいます。
 又四郎も最初は福岡藩の御用仏師的な立場であった佐田家(さだけ)を継ぐなど、仏師として順風満帆のスタートを切ったかのようにみえました。しかしまもなく佐田家を去り、独自の道を歩むことになります。そこには明治維新とともに押し寄せた変革の波が微妙に影を落としていたといえるのかもしれません。
 革新と伝統の狭間(はざま)で又四郎はいったい何を思い、どのような仏像を制作したのでしょうか。本展示では、このような知られざる郷土の仏師、高田又四郎の作品を集め、そこから明らかになる活動の軌跡をたどります。


1、修業時代

 高田又四郎は、幕末の弘化4年(1847)に生まれました。彼は幼い頃博多の聖福寺で僧としての修行をしたといわれ、その後、福岡の代表的な仏師であった佐田文蔵慶尚(さだぶんぞうけいしょう)の養子になっています。その後、佐田家を継いで2年ほどで同家を去り、明治12年(1879)頃、聖福寺の住職であった愚渓(ぐけい)和尚に従って京都に赴(おもむ)き、その頃室町通仏光寺下ルに住んでいた仏師吉村宗運(よしむらそううん)のもとで修行を積んだと伝えられています。
 聖福寺の《釈迦三尊及び諸眷属(けんぞく)像》(№2)は、元治元年(1864)に制作された又四郎の最も早い時期の作品で、「博多西町住大佛師文蔵養子亦四郎慶勝十六才作」と刻まれた岩座背面の銘文から、彼が佐田文蔵の養子であったことや、その頃「慶勝」(けいしょう)と名乗っていたことなどを確認することができます。
 その後、維新を挟んで明治6年(1873)には博多・妙楽寺(みょうらくじ)の《十三仏画像》を描いており、彫刻だけでなく仏画の制作にも堪能(たんのう)であったことが窺(うかが)われます。また、明治9年(1876)には、姪浜(めいのはま)・円福寺(えんぷくじ)(現・白毫寺(びゃくごうじ))の《地蔵菩薩坐像》(№3)を制作しています。同像の端正な表情や、よどみのない衣文(えもん)表現からは、師であった佐田慶尚の作品をしのぐ洗練味が感じられます。  
 又四郎が佐田家を去った理由や、その時期については、明らかではありません。しかし、若くして非凡な才能を発揮した彼が、師の作風に飽き足らず、京都でさらに技を磨きたいと考えたとしても不思議ではなかったと思われます。




1.弘法大使坐像
佐田慶尚作
2.釈迦三尊及び諸眷属像 十三仏画像(部分)
妙楽寺蔵
3.地蔵菩薩坐像

2、居士良慶(こじりょうけい)

 ところで、前記の地蔵菩薩坐像と同時期の制作とみられる、姪浜・白毫寺の《地蔵菩薩立像》(№4)の台座裏には「筑福住佛工高田又四郎慶勝居士良慶(花押)」と記されています。又四郎はこの頃から自分の作品に「良慶(りょうけい)」、あるいは「居士良慶(こじりょうけい)」と署名していますが、それは晩年まで一貫して続いています。
 居士とは在家の仏道修行者を意味するので、良慶は法名(ほうみょう)と思われます。又四郎は聖福寺を出てからも、なお一仏道修行者として仏像を制作するという信念を生涯持ち続けたといえるでしょう。


4.地蔵菩薩立像 5.聖観音立像
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