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No.247

考古・民俗展示室

情報と民族 看板は語る

平成16年9月14日(火)~11月14日(日)

看板は社会を映す鏡


表看板「保臓圓」

 「お客さん、もう看板です」。今でもけっこう耳にする会話です。閉店を意味するのですが、一日の商いの終わりに軒に吊した看板を下ろして仕舞うしぐさに由来したものです。私たちの身のまわりを見渡せば、このほかにも「看板娘」「表看板」などのように看板に関連した言葉がたくさんあることに気がつきます。しかし現代の情報化社会のなかで、看板自体は電子メディアにとって変わられ、素朴なものは消えていこうとしています。
 看板は、元来はその店が何を売っているかを周知する簡素な情報伝達を目的として発生したメディアです。その萌芽は、8世紀頃、商品そのものを店先に吊り下げて、何を売っているのかを明らかにしたことにあると言われます。その後、より効果的に宣伝するという目的から、板に商品を象(かたど)って表現することが始められました。それからは、人をいかにして引き付けるかという工夫がなされていきました。
 看板が文化として華開くことになるのは、17世紀つまり江戸時代を待つことになります。模型や文字で商品を表示し、絢爛豪華(けんらんごうか)な飾りをまとった看板が登場し、都市の煌(きら)めきを象徴するものとなります。そのあまりの華美さに対して幕府が、天和2(1682)年以降に「看板は木地に墨書、金具は銅製に限る」という禁令をくり返し発令したほどでした。宣伝する内容も、職種と商品を知らせるものから、しだいに自家の商号や店名を強調するようになっていきました。明治期に入ると、近代化という時代の変化とともに、商品そのものより、それを作る会社や組織を宣伝するように変わっていきました。つまり、その象徴として「商標」が看板の主人公となったのです。ここに、封建社会から資本主義社会への変化の姿が反映されていると言えます。大正期には、電気の普及に伴って、電灯で文字を照らすような電照看板も現れてきます。続く昭和ではトタン板にペンキで横文字を書いた大型看板が現れ、洋風化が進むことになります。こんな風に、看板は時代の要請する情報を盛り込むことで姿を変えてきたのです。社会の変化を映す鏡、それが看板なのです。


商品を象(かたど)る


模型看板「鯛」

 看板の目的は、ひと目みて何を商っているかが分かることにあります。もっとも分かりやすいものは、売っている品物そのものを使うことでした。筆や笠などを軒先に吊していたのです。これは「実物看板」と呼ばれています。現代で言えば、ショーウインドーに飾られた文房具や帽子ということになるでしょうか。理解しやすいという利点がある反面、これでは、小さなもの、魚などの生もの、酒などの液体などは掲示することができませんでした。そこで、考え出されたのが、商品そのものや、商品を入れる容器を象って模型を造ったり、紙や板に絵として描くという工夫でした。またこれでは、小さなものは拡大誇張して表現されました。


形から文字へ 表看板の威信

 取り扱う商品が多彩になってくると、形で表すには限界がでてくることになります。例えば酒ひとつとっても、銘柄が異なればそれは違うものとなるようなものです。そこで、文字で商品名を示す「文字看板」が主流になってくるようになりました。取扱う自慢の自家製品名を、目立つように金文字などで大きく記すことに主眼がありました。代表的なものは、自家製薬の看板でしょう。それには、「御免(ごめん)」「官許(かんきょ)」などの営業許可なども記され、店の自信と権威を示すものとなりました。店舗の正面に置かれることから、「表看板」「金看板」とも呼ばれるようになり、都市を彩(いろど)るものとなっていきました。

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