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No.270

黒田記念室

筑前の刀工 金剛兵衛

平成17年11月15日(火)~平成18年1月22日(日)

 金剛兵衛の活躍は文献史料によっても若干たどることができます。室町(むろまち)時代中期に著された『尺素往来(せきそおうらい)』(図3)という書物には、行平(ゆきひら)・粟田口(あわたぐち)・一文字(いちもんじ)などの全国の有名な刀工を列挙するなかで金剛兵衛も掲げられ、「一代聞達(いちだいぶんたつ)の者(世間に評判の者)」と評されています。戦国時代、筑後(ちくご)国南部に割拠した田尻鑑種(たじりあきたね)が家伝の名刀を息子に譲り渡した目録(図4)に金剛兵衛が含まれています。鑑種は筑後国内で最大の領主であった蒲池(かまち)氏から蒲池家重代の刀を譲り受けたと記しています。戦国武将たちが金剛兵衛の刀を珍重したことが窺われます。



図3 「尺素往来」(史料1)

図4 田尻鑑種刀日記(史料4)

 現在、竃門神社下宮(太宰府市)の参道左手には、金剛兵衛盛高の墓と伝えられる板碑(いたび)がありますように、金剛兵衛一派は太宰府竃門神社付近で活躍したといわれますが、その活動域は筑前国内から北部九州一帯に広がっていました。周辺地域に伝播した作例の一つが刀「肥前国尾崎住源盛次作(ひぜんのくにおざきじゅうみなもとのもりつぐさく)」(図6)です。肥前国尾崎は現在の佐賀県神埼(かんざき)郡神埼町尾崎に該当します。この他、筑後国御井(みい)郡鰺坂(あじさか)(現福岡県久留米市・小郡市)、肥前国平戸(ひらど)(現長崎県)、豊後(ぶんご)国(現大分県)等で活躍したことが知られています。一派の一人は戦国時代に、宗像(むなかた)郡一帯(現宗像市・福津(ふくつ)市)を治めた宗像大社大宮司宗像氏の家臣となり、「御剣鍛冶 金剛兵衛」(「宗像大宮司天正13年分限帳」)として作刀に励んでいました。
 金剛兵衛一派が鍛えた刀剣には次のような特徴があります。
第一に、中心尻(なかごじり)(刀の柄 ( つか ) に入っている部分の先)が通常は丸みを帯びるのに対し、卒塔婆頭(そとばがしら)という中心の先が山型になっているのが大きな特徴です。
  第二に、刃文(はもん)は直線的に伸びた直刃(すぐは)で、多くは細直刃(ほそすぐは)となっています。
  第三に、姿は、室町~戦国時代の刀でありながら、反(そ)りが高くつき、太刀(たち)姿のものもあります。
  第四に地鉄(じがね)(鍛錬 ( たんれん ) の跡を示す鍛 ( きた ) え目)は、板目(木材の板目のような肌合い)が流れ、やや柾目(まさめ)(まっすぐに通った木目)が交じっています。
  (堀本一繁)


図5 脇差 延徳4年(1492)銘(史料13)

図6 刀 肥前国尾崎住源盛次作(史料11)
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