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No.287

美術・工芸展示室

中山平次郎と福岡の考古学

平成18年9月20日(水)~平成19年1月14日(日)

はじめに

 板付遺跡、今山遺跡、鴻臚館(こうろかん)、元寇防塁(げんこうぼうるい)、そして、国宝「漢委奴国王」金印。これらは博物館の常設総合展示室の重要な資料であり、福岡の歴史を語る上で欠くことのできないものです。これらの遺跡・遺物に注目し、大正から昭和初期にかけて、数々の論文を遺した人がいます。それが中山平次郎(なかやまへいじろう)博士です。博士は九州帝国大学医学部の病理学の教授であるとともに、考古学に深い関心を持ち、福岡の考古学の発展に多大な貢献した人物です。博士の研究は福岡の遺跡を取り上げ、縄文時代から近世に亘る、さまざまな分野に及びました。そして、その研究は基礎研究として今に引き継がれ、そこに取り上げられた遺跡の多くが史跡として残されています。今年は博士が亡くなって、50年を迎えます。そこで、今回の展示では博士の研究を振り返ると共に、その研究の対象となった遺跡と福岡の考古学の今を紹介したいと思います。  


中山平次郎博士と考古学


中山平次郎博士

博士は1871年(明治4)6月31 日、京都市で生まれました。1875年(明治7)に京都から東京に移った博士は、少年時代に読んだ弥生町(やよいちょう)貝塚報告をきっかけに考古学に興味を持ち、足繁く遺跡に通うようになります。代々医者の家系である博士は、東京帝国大学医学部を卒業後、西欧留学するなど一時考古学とも遠ざかります。しかし、 1906年(明治39)に福岡医科大学(後の九州大学医学部)に赴任後、再び考古学と深く関わります。
 1914年(大正3)以降、次々と論文を発表し、大正年間の九州の考古学は博士1人の時代といっても過言ではありません。博士は少年時代より培(つちか)った徹底した現地踏査・表面採集を基に、資料を収集し、遺物と遺跡の関係から古代社会を解釈するという研究方法をとりました。




自筆原稿(金印物語、漢委奴国王印物語、古代の博多)

板付遺跡と中間期間の提唱

 1916(大正5)年、現在の史跡板付遺跡の南側で、甕棺の中から銅鉾(どうほこ)と銅剣が発見されました。現地に調査に向かった博士は採集した銅錆(さび)の付いた甕棺と、西区今津(いまづ)貝塚で採集した弥生土器と似ていることに気付きました。当時、弥生土器は石器時代(先史時代)の遺物、青銅武器は古墳時代(原史時代)の遺物という考え方が主流でした。両者が一緒に出土する事実を知った博士は、最初は半信半疑でしたが、直ちに類例を求めて福岡周辺の表面調査を行い、先史と原史の間の移行時代とも言うべき「中間期間」が存在することを提唱します。この石器と金属器が併せて使われる時代こそ、後に弥生時代と呼ばれるものでした。更に、中間期間の遺跡を求め続ける中で、志摩町の御床松原(みとこまつばら)で発見された中国の新の時代(西暦8~25年) の貨幣である「貨泉(かせん)」は、中間期間の年代を推定する大きな手がかりになりました。そして、過去に発見されていた春日市須玖岡本(すくおかもと)遺跡や前原市三雲南小路(みくもみなみしょうじ)遺跡等の中国鏡の研究を進め、中間期間の年代について追求していきます。この一連の研究は、弥生時代の年代と文化の内容に迫った画期的な業績と評価されています。
 さて、一連の研究のきっかけとなった板付遺跡は 1950年(昭和25)年、地元の中原志外顕氏が一緒に埋まっていた縄文土器と弥生土器を発見したことをきっかけに、1951年(昭和26)から4年間にわたる発掘調査が行われました。その調査で集落を囲む濠(ほり)(環濠(かんごう))や多数の貯蔵穴が見つかり、更に、最古の弥生土器の「板付Ⅰ式土器」、炭化米(たんかまい)や籾圧痕(もみあっこん)の付いた土器、大陸系磨製石器等が出土し、最古の弥生集落の様子が知られることとなりました。その後、1978年(昭和53)には縄文時代晩期の水田、木製農具、石包丁等が発見され、「水稲農耕の開始」に始まる弥生時代の時代区分や定義が見直されることとなりました。奇しくも「中間期間(弥生時代)」という新たな時代区分のきっかけとなった板付遺跡は、再び「弥生時代早期」という新たな時代区分をもたらすこととなりました。

休館日

開館時間
午前9時30分~午後5時30分
(入館は午後5時まで)
7月22日から8月27日のうちの金・土・日ならびに8月14日、15日は午後8時まで開館(入場は午後7時30分まで)
休館日
毎週月曜日
※月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日休館
8月14日、15日は開館、8月16日は休館
※年末年始の休館日は12月28日から1月4日まで
pressrelease

Facata(博物館だより)

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