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No.295

歴史展示室

ちょっと変わった屏風絵展

平成19年3月27日(火)~5月27日(日)

第4問 奇妙な風景と人物、どこの国? 
唐蘭風俗図屏風(とうらんふうぞくずびょうぶ) 六曲一双 
谷鵬紫溟(こくほうしめい)筆 江戸時代  
紙本着色 各132.6×271.0㎝


4 唐蘭風俗図屏風(左隻部分)

 人を驚かせる奇妙さと、どことなくまがいものめいたキッチュさでは当館随一の作品です。どこの国かというと、作品名にあるとおり、向かって右隻は中国、左はオランダです。特に奇妙なのはオランダの風景。遠景はそれなりに西洋風ですが、手前の建物は瓦葺(かわらぶき)で日本的ですし、屋内の男女はヤギの頭まるごとの料理を前にしてグラス片手によりそい、なんだか訳がわかりません。作品全体は、お正月のお祝いのような祝祭をテーマに描かれているのかもしれません。作者の谷鵬紫溟は江戸後期に活躍した長崎派の画家です。想像力豊かに見たことのない異国の風俗を描いたのでしょう。描き方も陰影をつけた洋風表現です。普通は布地が貼られる屏風の縁や、なにも描かない蝶番の内側まで筆で文様を描いているところにも注目してください。


第5問 何か足りないと思いませんか? 
邸内邸外図屏風(ていないていがいずびょうぶ) 六曲一双 
長谷川等学筆 桃山時代 
紙本金地着 色 各154.5×356.0㎝ 


5 邸内邸外図屏風(左隻部分)

 暗示に満ちた作品です。邸宅の庭先から室内を覗き見るように描かれた右隻。逆に室内から庭先を眺めるように描かれた左隻。庭先には桜や若松があって春の情景ですが、襖(ふすま)や障子には朝顔や千鳥が描かれていて秋と冬を暗示しています。また明かり障子が黒いのは、黒い絹が張ってあるからで、夏の建具なのです。つまり、実に巧妙に四季が隠されています。隠されているのは季節だけではありません。 
なにかが足りない、さみしいと感じるのは、当然そこにいるべき人物が誰もいないからです。なぜがらんとした室内だけを描き、人物を隠してしまったのでしょうか。その答えも画面の中にあります。よくよく観察すると、襖の開けられ方などからして、右と左に描かれた部屋は、実は同一の部屋を外からと内から見たところであることに気づきます。とすると、この作品は、外から覗き見る男性の視線と、室内から外を伺う女性の視点を暗示していると想像することができます。これは、恋を象徴的に表現した屏風絵なのです。人物が不在なのは、これを見ているあなたこそ、この物語の主人公なのだという意味なのかもしれません。

第6問 どうやって描かれた? 
紙織画屏風(ししょくがびょうぶ) 六曲一隻 
作者不詳 朝鮮王朝時代後期 
紙織画 各扇88.7×45.5㎝ 

 この作品も「誰ヵ袖屏風」のように筆で描かれた屏風絵ではありません。なんと、まるで竹ひごでカゴを織って作るように、幅2ミリの細長い色紙を織り込んで作られているのです。色紙は単一の色ですが、それが織り込まれることによって、微妙な色合いやある種の陰影、立体感のようなものまで感じられる画面になっています。この屏風は朝鮮王朝時代後期に描かれたもの。韓国でも、この屏風は非常に珍しい作品です。また、もうひとつ、屏風に小さな足がついているのも韓国の特徴です。オンドルという床暖房が普及していますから、屏風に足をつけて浮かせ、床の熱で痛まないように配慮されているのです。


第7問 これは掟破りです。どこが? 
虎図屏風(とらずびょうぶ) 十二曲一隻 
作者不詳 朝鮮王朝時代 
紙本墨画淡彩 129.4×32.6㎝ 

 屏風は、いくつの扇をつなぐかで折れる回数も決まります。普通、二曲から八曲。多くても十曲なのです。十二曲というのは日本の屏風にはありません。日本では六曲屏風一双(いっそう)(二隻一組のこと。合計十二曲)が本来の姿なのです。ですから一隻で十二曲はありえません。ところがこの作品は十二曲。だから掟破りなのです。これは「紙織画屏風」と同じく朝鮮王朝時代の民間の絵師が描いた作品。朝鮮の屏風は扇の幅が狭いものが多く、それで十二曲屏風も制作可能なのです。それにしても36図もある虎の姿は愛らしいですね。   
(中山喜一朗)

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開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
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休館日
毎週月曜日
(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
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