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No.297

考古・民俗展示室

中国の古代印章2-印章に映された古代社会-

考古・民俗展示室


さまざまな古代印章

「ハンコ」と聞いて皆さんは何を連想しますか?小包の受け取りの場面ですか?それとも銀行の窓口ですか?中には子供の頃消しゴムや芋に字を彫って年賀状に押した、というご記憶をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。現在でも私たちの生活には「ハンコ」や「印鑑」は欠かせません。
 福岡市 博物館も「ハンコ」とは縁深きものがあります。当館の名品の一つである「 漢委奴国王(かんのわのなのこくおう)」の金印 も古代中国で作られた印章と考えられています。福岡市博物館ではこの金印に関連する戦国時代以降の古代中国印章を収集していて、総点数で287点に及ぶコレクシ ョンを現在所蔵しています。今回はその中から「古代社会の社会や生活を反映している印章」をテーマに集めてみました。 古代中国の印章について振り返りながら、「印章」が名前を印字するだけのものではなく、当時の人々の想いや願いも込められていたことを知っていただきたいと思います。

一 中国古代印章の世界
 古代中国では 春秋(しゅんじゅう)時代(BC770~BC403)・戦国(せんごく)時代(BC403~BC221)から銅で作られた印章が出現します。当時の印章は荷物や手紙を送る際の封(ふう)泥印(でいいん)として使用されたものです。秦(しん)(BC221~BC206)・漢(前漢:BC206~AD8、後漢:AD25~220)の時代には所持する役人の階級や所在地によって印章の文字や鈕(ちゅう)(印のつまみ)の形、材質、綬(じゅ)(印章につける紐(ひも))の色が決められ、当時の服装の規定に印を佩(は)く(身につける)ことが明文化されています。この佩印(はいいん)の制度は形を変えながら隋(589~619)・唐(619~907)以降も継続します。
 このような印章はどのように作られたのでしょうか。春秋・戦国時代から秦・漢の時代にかけての印章は主に金や銀、銅などの金属を溶かして型に流し込む、いわゆる鋳造(ちゅうぞう)の技術で作られました。すでに当時の中国では青銅器(せいどうき)の鋳造技術は非常に進んでいました。また政府が公式に製作する官印(かんいん)の製作部署は軍隊の工房内にもありましたが、これは軍隊が武器の製造や補修のための冶金(やきん)技術を持っていたので、印章を鋳造することができたことによるものです。また軍事活動で急に印章が必要となる場合も多く、需要に応じて製作されていたのかもしれません。
 当時の印章には官印と私印の2種類がありました。官印は公的な文書や荷物を発送する際に差出人を特定したり、開かれて改ざんされないように封泥に捺印(なついん)したりするためのものです。したがってその形態や書式には厳密な決まり事があり、文面もその人の地位を示すものが大半です。一方、個人的な手紙や荷物の発送などについては私的に印章が作られ、使われました。私印は官印のような厳密な規則に則ったものではなく、大きさや形態は比較的自由で、文面も当時の人々の名前や、印章を持っていた人の心情など様々な内容が記されています。

二 さまざまな印章


西夏文字が刻まれた印章

 私たちの生活になじみのある、人物の姓名を記した印章は中国の戦国時代に登場し、秦漢以降に広く普及していきます。手工業や商業が発達して自分の氏名を記した印章を使用する必要が生じたためです。また姓名を記した印章はしばしば墓の副葬品とされることもありました。当時の印章には現在ではなくなってしまった姓を見ることもあり、貴重な史料といえます。
 印面の文字の多くは漢字が刻まれていますが、各時代によってその形も変わっています。象形文字から発達した漢字は春秋・戦国時代に各地域で独自に変化し、秦が建国する直前には様々な形の文字が併存していました。中国全土を統一した秦(しん)の 始皇帝(しこうてい)は度量衡(どりょうこう)の統一と同時に文字の統一も図り、当時秦で使われていた文字をもとに篆書体(てんしょたい)を定めました。その後漢代になると下級役人の間で筆記に適していた 隷書体(れいしょたい)が広く普及していきましたが、印章には篆書体が引き続き使用されました。
 秦の前の時代の春秋・戦国時代の印章には書体が統一化される以前の多様な文字が刻まれています。漢代には篆書印や、文字の装飾性を強くした 繆篆印(びょうてんいん)も使われるようになりました。宋代以降は漢字の画を長く伸ばし何重にも曲げて権威性を高めた 畳篆印(じょうてんいん)が登場します。
 印章の文化は中国国内にとどまらず、周辺の国や地域まで広がっていきます。そしてそれぞれの地域で使用されている文字を刻んだ印章も作られています。特に中国の北方の民族の使用文字である西夏(せいか)文字やパスパ文字などを刻んだ印章がよく知られています。

休館日

開館時間
午前9時30分~午後5時30分
(入館は午後5時まで)
7月22日から8月27日のうちの金・土・日ならびに8月14日、15日は午後8時まで開館(入場は午後7時30分まで)
休館日
毎週月曜日
※月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日休館
8月14日、15日は開館、8月16日は休館
※年末年始の休館日は12月28日から1月4日まで
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Facata(博物館だより)

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