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No.307

黒田記念室

福岡城

平成19年10月2日(火)~12月2日(日)


福岡城石垣修復普請伺絵図

二、城を守る

 江戸時代、諸大名の城郭は幕府の法令によって統制されていました。慶長20(元和(げんな)元、1615)年、西国の国持大名(くにもちだいみょう)に対して出された一国一城令(いっこくいちじょうれい)は、居城以外の城郭を全て破却するように命じたものです。これにより福岡藩では豊前(ぶぜん)との国境を中心に築かれた六端(ろくは)城をことごとく破却しています。
 また居城にも幕府による統制がかかりました。寛永( かんえい)12(1635)年6月、将軍徳川家光(とくがわいえみつ)より発せられた武家諸法度(ぶけしょはっと)の第3条では、新規の築城を禁じるとともに、居城の石垣・土塁・堀が破損した場合は、老中に伺い出て許可を得て修復すること、櫓・塀・門は先規の通りに修復することと規定されていました。この規定は幕末まで継続して適用され、江戸幕府の城郭統制の基軸となりました。
 この規定のため天災や老朽化によって居城の石垣・土塁・堀が破損し、修復が必要となった場合、諸大名は許可を得るために修復願と修復伺絵図を提出する必要がありました。その際の大名側と幕府側の交渉過程をまとめると次のようになります。
 ①幕府表右筆組頭(おもてゆうひつくみがしら)に修復願と修復伺絵図を見せ文言などの訂正をうける。②訂正した修復願と修復伺絵図を月番老中に提出し指示を受ける。③指示を受けた上で正式な修復願と修復伺絵図・控絵図(月番老中の控)を作成し 、月番老中に提出する。④老中による決裁を経て、修復が許可される。
 この過程で大名側は修復伺絵図を下絵図や控絵図を含め5枚作成したと考えられ、福岡藩が作成した修復伺絵図の所在も数点確認されています。
 では、福岡城の修復はどの程度行われていたのでしょうか。まず石垣の修復について見てみると、『黒田家譜』などの記述によれば、江戸時代を通じて少なくとも33件の石垣修復が行われたと考えられます。詳細な修復箇所数は不明ですが、例えば福岡藩右筆頭取(ゆうひつとうどり)の長野源太夫(ながのげんだゆう)が記した「長野日記(ながのにっき)」享保(きょうほう)5(1720)年6月21日条に、洪水によって福岡城の土塁や石垣で崩れたり孕(はら)み出したりした場所が78ヶ所あり、そのうち崩れた石垣10ヶ所の修復を幕府に願い出たと記されていることから、一度に複数箇所の修復が行われ、江戸時代を通じては相当数の修復が行われていたと推測できます。
 また、福岡城の櫓や門など建物の修復について記した「御要害御作事ヶ所附(ごようがいおさくじかしょつけ)」には、享保17(1732)年から文政( ぶんせい)4(1821)年の約90年間に行われた、櫓や門の建て替えを含む307件の修復が記録されており、江戸時代、福岡城で多くの建物修復が行われたことがうかがえます。
 このように築城後の福岡城は、天災や老朽化によって多くの破損が生じたため、それを絶え間なく修復することで維持されてきたのです。


三、城を伝える


福岡城上の橋大手門(旧稀集より)

 江戸時代の福岡城を描いた資料として挙げられるのは、藩が幕府に提出するために作成した城下図(写や控の絵図も含む)や、それを基に作成された城絵図、城内の屋敷の間取を描いた平面図などがありますが、櫓や門など建物を立体的に描いた資料は数多くありません。城は、藩主たちが日常生活を送る居住空間や、藩政が行われる政治空間であるとともに、本来的には軍事施設であるため、藩の機密として描かれなかったものと考えられます。

 今回紹介する黒田二十四騎の一人である黒田一成(くろだかずなり)の生涯を描いた「黒田一成公略伝(くろだかずなりこうりゃくでん)」には、福岡城三の丸にある三奈木黒田家(みなぎくろだけ)の屋敷から本丸方面を描いた場面があり、従来良く知られていなかった家老屋敷の外観もうかがえます。博多中島町(はかたなかしままち)の商人庄林半助(しょうばやしはんすけ)が、江戸時代後期の福岡・博多で起きた出来事を記した「旧稀集( きゅうきしゅう)」には、松囃子( まつばやし)の行列が藩主の住む三の丸下屋敷を訪れる様子が描かれています。
 今回の展示では、この他に往時の福岡城の姿を撮影した明治(めいじ)・大正(たいしょう)時代の古写真なども併せて紹介します。
(髙山英朗)

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