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No.352

考古・民俗展示室

てつのよろい

平成21年12月22日(火)~平成22年2月21日(日)

老司古墳第2号石室出土三角板革綴短甲
老司古墳第2号石室出土三角板革綴短甲

 古墳の副葬品の一つに短甲(たんこう)や冑(かぶと)などの鉄製のよろいがあります。鉄製の甲冑(かっちゅう)は古墳時代前期に日本列島に初めて出現し、古墳時代終わりまで副葬され続けました。
 鉄製の甲冑は単に実戦的な防具だっただけではありません。古墳の中では遺体のそばに副葬され、古墳の墳丘上には短甲形埴輪や武人埴輪が樹立されました。甲冑は生前ばかりでなく、死後も災いから身を守ってくれる器物と考えられたようです。
 また、古墳時代において鉄は貴重品であり、当時の倭の人々は朝鮮半島に鉄を求めて出かけていました。貴重な鉄を多量に用いたてつのよろいは権威の象徴だったことでしょう。
 古墳時代を代表する遺物である甲冑の展示を通じて、当時の鉄の製作・加工技術や、短甲の持っていた歴史的な意味、そして古墳時代とその前後の福岡を紹介します。


1.木のよろい
 弥生時代に始まったものとして水田稲作がありますが、それと同時に戦いも始まったといわれています。北部九州では首のない遺体や剣の刺さった骨などが出土していて、戦いが存在した考古学的証拠といわれています。しかし、弥生人が何を身につけて戦っていたかについては、『魏志倭人伝(ぎしわじんでん)』の記述に「兵には矛・楯・木弓を用う。」とあるほかは考古学的な証拠はなく、弥生時代の武装については長らく不明でした。
 しかし近年、低地遺跡から弥生時代にさかのぼる木製のよろいや楯が出土し、弥生時代の武装が少しずつ明らかになってきました。福岡市でも博多区雀居(ささい)遺跡や西区今宿五郎江(いまじゅくごろうえ)遺跡などで弥生時代の木のよろいと楯が出土しています。木製のよろいはその形状が古墳時代の短甲に似ていることから、古墳時代の鉄のよろいの元になったとする説があります。


2.革綴(かわとじ)のよろい
 古墳時代の開始とともに鉄製の甲冑が日本列島に出現し、古墳に副葬されるようになります。古墳時代前期の甲冑は鉄板を革ひもで綴じるという共通点がありますが、鉄板の大きさと形状によって、小札革綴甲冑(こざねかわとじかっちゅう)、竪矧板革綴短甲(たてはぎいたかわとじたんこう)、方形板革綴短甲(ほうけいいたかわとじたんこう)の大きく3種類に分けられます。このうち小札革綴甲冑は中国からの輸入品とみられますが、竪矧板革綴短甲・方形板革綴短甲についてはその製作地について中国・朝鮮半島・日本とする説があり、これまでのところ統一された見解は得られていません。
 古墳時代前期の甲冑の出土は日本全体で35例、九州では4例しかなく、西区若八幡宮(わかはちまんぐう)古墳出土の方形板革綴短甲は全体がよく残った貴重なものです。

図1 若八幡宮古墳出土 方形板革綴短甲模式図・方形板革綴短甲名称
図1 若八幡宮古墳出土 方形板革綴短甲模式図・方形板革綴短甲名称

3.帯金(おびがね)のよろい
 古墳時代中期が始まる頃になると、それまでばらばらだった短甲の形状が統一されます。鉄板を革ひもで綴じる製作技法は古墳時代前期の短甲と変わりませんが、大きな鉄板である堅上板(たてあげいた)・押付板(おしつけいた)・帯金(おびがね)・裾板(すそいた)で全体の形状が作られるようになります。これにより前期の甲冑に比べて体に合う形になりました。
 中期前半の甲冑は帯金の間を埋める鉄板の形状により、長方板革綴短甲(ちょうほういたかわとじたんこう)・三角板革綴短甲(さんかくいたかわとじたんこう)の二種類に分けられます。また、同様の技法で作られた冑のほか草摺(くさずり)・籠手(こて)・頸甲(あかべよろい)・肩甲(かたよろい)など甲冑に伴う付属具が出現するのもこの時期の特徴です。この時期から確実に日本列島で甲冑が作られるようになったとされ、甲冑の出土例が急増します。福岡市周辺でも首長墓と目される西区鋤崎(すきざき)古墳・南区老司(ろうじ)古墳など複数の古墳から甲冑が出土しています。また、海を越えた朝鮮半島南部の伽耶(かや)でも倭系の甲冑が出土しています。

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開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
※2024年7月26日~8月25日の金・土・日・祝日と8月12日~15日は20時まで開館(入館は19時30分まで)
休館日
毎週月曜日
(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
※2024年8月12日~15日は開館し、8月16日に休館
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