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No.353

黒田記念室

福岡市博物館収蔵の刀装具展

平成22年1月5日(火)~平成22年2月14日(日)

 祐乗の次男の二代宗乗(そうじょう)(1460~1538)も足利将軍家に仕え、初代が築いた後藤家の栄誉と伝統の基礎を固めた。三代乗真(じょうしん)(1512~62)は宗乗の長男で、足利義晴(よしはる)と義輝(よしてる)に仕えるが琵琶湖岸で戦死したという。乗真の嫡男の四代光乗(こうじょう)(1529~1620)は父の戦死により九州に移住するが、帰洛して織田信長(のぶなが)の知遇を得、信長死去後は豊臣秀吉(ひでよし)に登用され天正大判や分銅を制作、長男とともに豊臣家の財務を担当した。以後、後藤家は装剣金具の制作とともに分銅・大判の役を担い家職(かしょく)とした。法眼(ほうげん)に叙位、92歳の長寿で没している。長男の五代徳乗(とくじょう)(1550~1631)は筑前の生まれ、豊臣家の判金改(はんきんあらた)めや分銅役をつとめ、のち徳川家康(いえやす)・秀忠(ひでただ)に任用された。天正大判にある桐紋は太閤桐(たいこうきり)あるいは徳乗桐とよばれる独特の形をしており真贋(しんがん)の判定基準のひとつである。徳乗の長男の六代栄乗(えいじょう)(1577~1617)は父とともに豊臣家に出仕、ついで徳川幕府に家業再興を懇願して秀忠から分銅や大判の改め役を拝命。弟の顕乗(けんじょう)(1586~1663)は実兄の長男が年少のため宗家七代目となり活躍。次代に家督を譲ったのちは、前田利家(まえだとしいえ)が国内に銀山が多くあることから後藤家の者を秀吉に請うていたこともあり、加賀前田家の用達(ようたつ)しを行い、以後これは家職として継承された。栄乗の次男の八代即乗(そくじょう)(1600~31)は将軍家光(いえみつ)に出仕しするが32歳で没。顕乗の嫡男九代程乗(ていじょう)(1603~73)は加賀藩の金工育成と発展に尽力した。将軍家綱(いえつな)から扶持を支給され、法橋(ほっきょう)に叙位。実兄たちの早世で家督を相続した即乗の四男十代廉乗(れんじょう)(1628~1708)は、幕府の命令により京都を引き払って江戸に移住した。十一代通乗(つうじょう)(1663~1721)は廉乗の嫡男の死去により分家から婿養子となる。堅実な作風に定評がある。後藤家宗家は十七代典乗(てんじょう)まで続くが、古来、始祖・四代・七代・八代・十一代が上手と言われている。このほかに宗家ではないが後藤姓の金工は多くいる。なかでも幕末京都の一乗(いちじょう)(1791~1876)は著名で、江戸の宗家から頼まれて大判の墨書改めや分銅制作を代行分担していた。天皇の装剣金具を制作し法橋位を受け、後年は江戸に下向、法眼に叙位。後藤家掉尾(とうび)の名工といわれている。
 この後藤家の家彫(いえぼり)に対して、後藤家以外の金工あるいはその作品を町彫(まちぼり)という。その町彫の祖は江戸時代中期の金工横谷宗(よこやそうみん)といわれている。宗はもとは後藤家の下地(したじ)職人であったが、後藤家の伝統を重んじる彫法や図案にとらわれず、写実的な自由な発想の図案や、銅ばかりでなく鉄地などを使用した作品を生み出した。以後、町彫にも多くの名工が排出して隆盛をみるようになった。

(田鍋隆男)

【用語解説】

  • 三所物(みところもの)
    拵につける目貫・笄・小柄の三点。
  • 二所物(ふたところもの)
    三所物のうちのいずれか二点。
  • 目貫(めぬき)
    柄(つか)部分の飾り金具。表と裏のあわせて二点。
  • 笄(こうがい)
    拵(こしらえ)の表側の側面に納める。鬢(びん)の乱れを整える道具。
  • 小柄(こづか)
    拵の裏側の側面に納める小刀の柄部分。
  • 縁(ふち)
    刀の柄の鐔(つば)に接するほうについている金具。
  • 頭(かしら)
    刀の柄の頭部にはめる用具。金属や角(つの)を使用。
  • 容彫(かたぼり)
    実物どおりの立体的な彫刻。丸彫(まるぼり)に同じ。
  • 高彫(たかぼり)
    図柄が地(じ)より高い立体的な彫刻。
  • 象嵌(ぞうがん)
    地金(じがね)に別の金属などを嵌(は)め込む技術。
  • 色絵(いろえ)
    金・銀・赤銅等の薄板を鑞(ろう)で焼き付けたもの。金の場合は金着(きんき)せという。
  • 赤銅(しゃくどう)
    銅に白鑞(しろめ)(鉛と錫の合金)を加え、さらに少しの金を加えたもの。
  • 魚子地(ななこじ)
    魚の卵のように規則正しく細かい粒状の地。鏨(たがね)で打って造る。
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休館日

開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
※2024年7月26日~8月25日の金・土・日・祝日と8月12日~15日は20時まで開館(入館は19時30分まで)
休館日
毎週月曜日
(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
※2024年8月12日~15日は開館し、8月16日に休館
※年末年始の休館日は12月28日から1月4日まで

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