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No.385

美術・工芸展示室

台所の考古学

平成23年4月19日(火)~6月12日(日)

甑・甕・移動式カマドのセット(福岡市埋蔵文化財センター提供)
甑・甕・移動式カマドのセット
(福岡市埋蔵文化財センター提供)
復元した土器で米を炊く
復元した土器で米を炊く

 古来より現代に到るまで時代は変われども、食べることは人が生きていくためには必要なことです。火を使いこなし、様々な食材を調理し始めて、文明はスタートしたといっても過言ではないでしょう。そして時代とともに調理方法やこれに関係する道具の姿も大きく変化していきます。「焼く」・「蒸し焼きする」という単純な方法から出発して、縄文時代には土器の出現により「煮る」、その後には「炊く」・「蒸す」という調理方法が台所に登場しました。出土資料に見られる様々な調理道具やその使用方法がどのように変化していったのかを概観します。
 資料から分かる「食の事情」と現在の台所と比較してみることで、調理を取り巻く環境の変化をみて、食の大切さを考えてみませんか。


調理の歴史
 台所とは主に煮炊きをするところ、食物を調理する場所であり、厨、勝手、厨房などとも呼ばれてきました。「米を炊く」、「調理する」という台所での行為は、人の生活とは切り離せません。台所の変化は食事・調理にまつわる道具や技術の歴史を反映したものでもあるのです。
 土器などの煮沸具を持たなかった旧石器時代の人々も今の私達と変わらず、食べることは必要なことでした。しかしながら、食物の調達とその調理に費やされていた時間は現在と異なり生活時間のなかで大きな比率であったと考えられます。一般的には縄文時代になって定住生活が開始されたと考えられており、住居などの生活施設が簡素なものから長期的生活に適応したものになりました。縄文時代には土器が登場しましたが、前の時代に引き続き「焼く」・「あぶる」ことや焼き石を使った「蒸し焼く」ことなども調理の方法として行われていたと考えられます。よく知られている縄文時代の食べ物といえば「縄文クッキー」とよばれるものです。アク抜きしたドングリなどの堅果類を石皿や磨石を使って擦り潰し、肉などと混ぜて焼き上げたもので、お好み焼きなどの粉食のルーツとも言えます。また肉などを燻して燻製にする土坑が使用されていたことも発掘調査の成果から知られています。


土器の出現の意味と意義
 縄文時代に土器を作り始めたことは人々の生活に大きな変化をもたらしました。前の時代から続いていた調理方法に加え土器の出現により火にかけ加熱・調理する「煮る」ことが可能となったのです。新しい調理器具・方法の出現により、それまでは食べていなかった物を加熱調理することで食べられるようになったのです。選択できる食材の幅が大きく増えたことは、簡単に言うと食料が増加したこととも言えます。
 縄文時代には住居内に炉が設置され、恒常的に煮炊きを行うようになりました。この時点で調理場としての台所が誕生したのです。しかしながら、この時代には屋外にも炉(集石遺構)が設置されている例が知られており、屋外での集団による調理も行われていたようで、いつも住居内だけで煮炊きが行われていたわけではありませんでした。弥生時代の竪穴住居内にも炉が設置されるものがありますが、同じように引き続き屋外での調理は行われていたようです。
 縄文時代から古代までの火を使った調理方法の大まかな流れとしては、石焼き遺構・集石遺構(焼く)→土器の出現(煮る・炊く)→カマド・甑(蒸す)の普及という順を辿るようです。このような変化は土器底部の変化も大きく関係しているようです。縄文土器に多かった尖り底や平底のものが、やがて丸底に変化していきます。これは調理した食材の変化も要因として考えられますが、器表面を広げることで熱を効率的に利用するために変化していったと考えられています。


塩と食材の調達
 塩は台所に欠かせない調味料です。現代の一般成人は一日に約15gの塩を摂取する必要があるとされています。これは現代に生きる私たちに限らず、過去に生きた人々も同様の摂取量が必要だったと考えられます。縄文時代後期前後には海水を煮詰めて塩を取ることが開始されており、当時の人々にも塩の必要性は十分に理解されていたようです。九州では弥生時代中期以降に製塩土器が多く見られるようになり、日常的に作られ使用されていたことが知られています。この時期は米等の穀類が主食になった頃でもあり、それまで盛んに形成されていた貝塚が減っていく段階と重なります。このころから「蛸壺」などの土製の漁労具が遺跡の出土遺物に含まれるようになります。主食以外の多彩な食材が食卓を飾るようになったのでしょうか。

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