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No.407

企画展示室4

比恵(ひえ)・那珂(なか) モノがたり

平成24年8月14日(火) ~12月27日(木)

主要な道だけを描いた福岡城下図(資料3)
異形土器(古墳時代後期)
那珂遺跡群第14次調査出土

比恵(ひえ)・那珂遺跡群(なかいせきぐん)とは
 比恵・那珂遺跡群(以下、比恵・那珂)は福岡平野の中央部を北流して博多湾に流れ込む那珂川と御笠川に挟まれた丘陵上に広がる遺跡群です。現在でいうと博多駅と竹下駅の間に位置しています。この丘陵は阿蘇山噴火(あそさんふんか)の堆積物である八女粘土(やめねんど)・鳥栖(とす)ローム層に覆われており、調査ではこの粘土面の上から多くの遺構が発見されます。
 比恵・那珂は遺跡の名称としては分けられていますが、同時代に人々が活動したひとつの遺跡です。また、比恵の東側には山王(さんおう)遺跡(比恵甕棺遺跡(ひえかめかんいせき))、那珂の南側には五十川遺跡があり、地形的な隔たりがないことや発見される遺構の内容から大きな一連の遺跡として捉えることができます。比恵・那珂の各所には遺跡の情報を伝える看板が設置されていますが、宅地化が進む現状からは遺跡の当時の姿を想像することは難しく、その重要性を理解するのは一筋縄ではいきません。
 現在、遺跡の範囲として比恵が65ヘクタール、那珂が83ヘクタール、山王遺跡が15ヘクタールが登録され、全体の面積としては164ヘクタールという広大な範囲となります。これは佐賀県神埼郡にある吉野ヶ里遺跡(よしのがりいせき)の約4倍に相当する広さとなります。とはいえ、時代によって集落や墓地として利用された範囲は異なるので、遺跡の広さがすぐに集落の規模を現(あらわ)している訳ではありません。それでも北部九州屈指の遺跡であり、弥生時代から古代にかけては何度も歴史の表舞台に登場する、日本の歴史を読み解く上では重要な遺跡であることは揺るぎない事実なのです。

比恵・那珂発見
 比恵・那珂を学術的な視点から最初に評価し紹介したのは、九州帝国大学医学部の中山平次郎博士です。中山博士は大正時代に比恵・那珂近辺で土器などの遺物採集を行い、現在の博多駅~竹下駅付近すなわち「竹下以北比恵南方」が「他にこれ程の広き遺跡を見出せぬ」として、「最古の那津(なのつ)の都市」であることを予見しています。その後、昭和8年に始められた比恵一帯の土地区画整理では、起伏に富んだ地形であった比恵付近が平らに削られたために、多くの遺構や遺物が失われてしまいました。削られていく崖面からは甕棺や住居などが発見されました。昭和13年には鏡山猛・森貞次郎らによる比恵遺跡群内でのはじめての調査が行われ、住居を方形に囲む「環溝(かんこう)」が発見されました。昭和27年には森貞次郎が第2次調査を行い、「比恵環溝住居址」を検出し、遺跡の重要性を訴えました。一方、那珂遺跡群では昭和23年に那珂八幡古墳(なかはちまんこふん)の裾部で銅戈鋳型(どうかいがた)が採集されたことから昭和46年に鋳型が採取された地点ではじめての調査が実施されました。
 昭和41年からは比恵、昭和47年には那珂内でも開発工事に対応した緊急調査が行われるようになり、現在に至ります。平成24年の現在までに比恵で125次、那珂で132次にも及ぶ調査が行われています。

比恵・那珂モノはじめ
 人々が比恵・那珂の地と関わり始めたのは、現在より約二万年前の後期旧石器時代のことです。遺跡の各所からこの時期に狩猟などに使われた石器(ナイフ形石器や彫器(ちょうき))が発見されています。住居跡などは発見されていませんが、トチやシイなどの落葉広葉樹林の森で人々は狩りを行い暮らしていました。この時代は一つの場所に長期間住み続けるのではなく、鹿や猪等の獲物の移動に合わせて移動する回遊生活を行っていたと考えられており、比恵・那珂は生活の場でもあり狩猟と採集の場でもあったようです。
 続く縄文時代は土器や弓矢が使われ始めた時代です。比恵・那珂からは石鏃などの石器や土器片は発見されていますが、住居や墓などの定住生活の痕跡は発見された例がありません。旧石器時代と同じく狩猟や採集の場所として利用されていたようです。集落が発見されない理由としては、湧き水が乏(とぼ)しいことや地形的な条件が縄文人に好まれなかったため住み続けなかったことなどが理由として考えられます。もしくは弥生時代から続く開発のために、地形が大きく変化させられて無くなっただけなのかもしれません。縄文時代の終わりごろになると比恵西側にある美野島遺跡(みのしまいせき)や東側の東那珂遺跡で集落が営まれるようになりました。どちらも河川に近く水が容易に確保できる点が共通しています。

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(入館は17時まで)
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休館日
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