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No.412

企画展示室1

館蔵名品で見る郷土の人と文化1-女性文化人の系譜-

平成24年12月26日(水) ~平成25年4月7日(日)

於多福図(部分)
於多福図

 江戸時代の筑前(ちくぜん)福岡藩には、儒学(じゅがく)や国学(こくがく)、絵画や詩文、和歌など、様々な文化とそれを担う有名な学者や文化人が現れました。今回ご紹介するのは、特に武家や学者の家庭に生まれ、幼いときから学問や文化的な環境でその才能を育み、長じて全国的に有名になった女性文化人です。彼女たちの残した名品や名作、貴重な資料を中心に、彼女たちに影響を与えた人々などの肖像画とあわせて、当時の歴史と文化を展示、紹介します。

○貝原東軒(かいはらとうけん)(1652~1714)
 秋月(あきづき)藩士江崎広道の娘で、名前は初(はつ)、17才で福岡藩の儒学者貝原益軒(えきけん)と結婚しました。益軒とは年令は離れていましたが、仲むつまじかったと言われます。また和歌に巧みで、音楽(箏(そう)、胡琴(こきん))など にも才能がありました。特に書道で楷書に優れ、益軒の著述を清書したり、あるいは合作した書跡を残しています。また益軒の日記も代筆したと言われます。益軒と、東軒夫人の墓所は、金竜寺(きんりゅうじ)(現福岡市中央区今川(いまがわ))にあります。  展示作品の「始好佛者論(しこうぶつしゃろん)」、「事天地説(じてんちせつ)」などは福岡藩主黒田家に伝来し、秘蔵されていた品々です。

○亀井少●(かめいしょうきん)(1798~1857)
 福岡藩の儒学者亀井昭陽(しょうよう)の娘として、福岡の唐人町(とうじんまち)に生まれました。名前は友(とも)、幼い時から祖父の儒学者亀井南冥(なんめい)や父から薫陶や教育を受け、漢詩や絵画に優れた才能を示しました。9才の時、亀井家を保護した秋月藩主に詩文を賞賛されるなどのエピソードがあります。19才で父の門弟三苫源吾(みとまげんご)(後の亀井雷首)と結婚し、現在の福岡市西区今宿(いまじゅく)に住んで、夫の医業と弟子の教育を助けました。また求めに応じて書や絵画を描き、特に梅、竹、蘭、菊の題材「四君子(しくんし)」を得意としました。墓所は、亀井一族が葬られている浄満寺(じょうまんじ)(現福岡市中央区地行(じぎょう))にあります。
 展示作品には、自画像として伝わる「於多福図(おたふくず)」や大作「詩画巻(しがかん)」があり、後者は山水図、「四君子」など、彼女が得意とした画題を網羅しています。

○二川玉篠(ふたがわぎょくじょう)(1805~1865)
 福岡藩の書道方二川相近(すけちか)(松蔭(しょういん))の娘で、名前は瀧(たき)。相近の家は福岡藩の料理方を勤めていましたが亀井南冥が館長を勤めた藩校・甘棠館(かんとうかん)に学び、書道に専心して、後には二川流と言われる大家となりました。また国学も学び、筑前今様(いまよう)などにも優れた作品を残しました。その娘である玉篠はとくに絵画に優れ、彼女が描いた作品のなかに父相近が画題を与える賛(さん)の文章を書いたものが多く残されています。
   展示作品の「雪梅図(せつばいず)」、「梅図」などは玉篠の好んだ画題で、梅木の幹などが省略された大胆な描写に、父が名筆で評とも言える賛を加え、二川父子の親子の情が窺えます。

野村望東尼像
野村望東尼像

○野村望東尼(1806~1867)
 福岡藩士浦野重右衛門の娘として生まれ、名前は「もと」、福岡城南の御厩後(おうまやうしろ(現福岡市中央区赤坂)で育ちました。24歳のとき福岡藩士野村貞實と再婚し、夫婦で二川相近の弟子となり、後に歌人として名高い大隈言道(おおくまことみち)の門人となるなど、和歌の道に励みました。40歳で夫とともに福岡近郊の平尾(ひらお)村の山荘(平尾山荘、現在の福岡市中央区平尾)に隠棲し、夫の死後に出家して招月望東禅尼(しょうげつぼうとうぜんに)と称しました。晩年は勤王運動にも関わり、福岡藩の平野国臣(ひらのくにおみ)、中村円太(なかむらえんた)などと交流し、長州藩の高杉晋作(たかすぎしんさく)なども匿ったといわれます。そのため幕末に佐幕派が藩の実権を握った際に、姫島(ひめしま)に流罪にされましたが、筑前出身の奇兵隊士(きへいたいし)に救出され、三田尻(みたじり)(現在の山口県防府市)で死去しました。
 展示作品には、有名な歌集「向陵集(こうりょうしゅう)」や日記「ひめしまにき」とあわせて、彼女の自作の手芸品や、当時の子ども達を描いた「童戯(どうぎ)の図画」などがあり、その温かな人柄を偲ばれます。(又野 誠)

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休館日

開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
※2023年7月22日~8月26日の金・土・日・祝日と8月14日・15日は20時まで開館(入館は19時30分まで)
休館日
毎週月曜日
(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
※2023年8月14日・15日は開館し、8月16日に休館
※年末年始の休館日は12月28日から1月4日まで

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