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No.417

企画展示室1

戦争とわたしたちのくらし22

平成25年6月11日(火) ~8月18日(日)

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映画館の観客(『写真週報』第40号)
映画館の観客(『写真週報』第40号)

戦時の映画
 映画が日本に輸入されたのは、明治時代中ごろのことです。当初は活動写真とよばれ、音声はありませんでした。大正時代中ごろ、映画という名称が流行し、代表的娯楽のひとつに発展します。大正時代のおわりに音声入りの映画が登場すると、昭和10年までにすべての日本映画が発声映画となりました。
 昭和6(1931)年の柳条湖(りゅうじょうこ)事件以降、昭和20年に至るまで、日本は断続的に戦争状態にありました。この期間には、戦争・大陸をテーマとする映画が多くつくられましたが、戦争の影響を感じさせない映画も人気を集めました。
 「ロビンフットの復讐(ふくしゅう)」は、アメリカで制作された映画で、昭和12年に日本で上映されました。昭和時代はじめから、多くのアメリカ映画が公開されましたが、戦時にも人気は継続していました。国内映画では、昭和13年に公開された、田中絹代(たなかきぬよ)・上原謙(うえはらけん)主演「愛染(あいぜん)かつら」(松竹)や、昭和18年に公開された木下恵介(きのしたけいすけ)監督デビュー作「花咲く港」(松竹)などが人気でした。戦時においても、ひとびとの関心はメロドラマや人情ものなどにあったことがうかがえます。
 大陸を舞台とする映画では、満州映画協会(満映)の看板女優李香蘭(りこうらん)が長谷川一夫(はせがわかずお)とコンビを組んだ恋愛ドラマ「熱砂(ねつさ)の誓」(東宝)などがヒットしました。
 昭和15(1940)年、内閣情報部は局に昇格しました。情報局は、検閲を行うことで、公開可能な映画を選びました。また、国家の政策に賛成する内容の映画を「国民映画」とよび、制作を各映画会社にまかせました。こうして、「将軍と参謀と兵」(日活)、「愛機南へ飛ぶ」(松竹)などの「国民映画」がつくられました。「国民映画」は、学校の生徒たちの集団鑑賞にも使われました。
 戦時の映画で福岡と関係の深いものとして、昭和19(1944)年に映画化された「陸軍」( 火野葦平(ひのあしへい)原作)があります。 太平洋戦争三周年を記念して、陸軍が松竹に映画化を依頼、ロケ地に福岡市が選ばれました。情報局は、主人公の母親(田中絹代)が息子を戦場に送るラストシーンが戦意を高めるのに不適当であると判断し、監督木下恵介の別作品「神風特別攻撃隊(かみかぜとくべつこうげきたい)」の中止を命じました。

紙芝居の様子(『写真週報』第167号)
紙芝居の様子(『写真週報』第167号)

こどものあそびと戦時
 こどもたちのあそびにも、戦争の影響が反映されています。「勇マシイ兵隊双六(すごろく)」は、兵士として戦争に出発してから勝利して帰ってくるまでを双六にしたものです。正月の遊びの定番であるカルタにも、「『ハイ』ではじまる御奉公」など、戦争遂行への意識向上をはかるスローガンがもりこまれました。
 こどもを主な対象とする娯楽として、紙芝居があげられます。昭和時代のはじめ、街頭で駄菓子(だがし)を販売し、紙芝居を見せる「街頭紙芝居」というスタイルが成立しました。「街頭紙芝居」は、「黄金バット」「ハカバキタロー」などの人気作を得て、こどもたちの視線を集めるメディアとして認知されるようになります。一方で、内容の残忍さ、グロテスクさなどから、こどもへの悪影響が懸念され、昭和12年から紙芝居の台本は上演前に検閲を受けることになりました。
 紙芝居のこどもへの影響力に注目した教育関係者は、「街頭紙芝居」にかわる新しい紙芝居をつくりはじめました。こどもの教育に配慮したこれらの作品は、「教育紙芝居」とよばれています。「街頭紙芝居」が手書きで、屋外で使用されたのに対し、「教育紙芝居」は印刷であり、教室などの屋内で使用される点に大きな違いがあります。代表的なつくり手は、紙芝居界の芥川賞とされる高橋五山賞に名をのこす、紙芝居作家高橋五山(たかはしござん)のいた全甲社(ぜんこうしゃ)や、日本教育紙芝居協会などでした。教育紙芝居は、政府機関による国民指導とむすびつき、政府の主張・政策の宣伝や、一致団結・質素倹約・勤勉などの価値観を作品にとりいれることで、戦時の情報伝達ツールとしての役割をになったのです。(野島義敬)

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pressrelease

休館日

開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
※2024年7月26日~8月25日の金・土・日・祝日と8月12日~15日は20時まで開館(入館は19時30分まで)
休館日
毎週月曜日
(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
※2024年8月12日~15日は開館し、8月16日に休館
※年末年始の休館日は12月28日から1月4日まで

Facata(博物館だより)

福岡市博物館

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