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No.421

企画展示室1

おじさま日本美術

平成25年11月26日(火)~平成26年1月26日(日)

図版② 林和靖図屏風
図版② 林和靖図屏風

中国のおじさまに見る理想の生き方
 図版②は、梅の花がほころぶ春の景色を描いた屏風です。中央の横向きのおじさまが、このシーンの主人公・林和靖(りんなせい)です。林和靖は、中国・北宋時代の実在の詩人です。風光明媚な地として知られる西湖(せいこ)の孤山というところに住み、町に足を踏み入れて世俗の垢(あか)にまみれることをせず、生涯独身で、梅の樹と鶴を友とし、書と詩をきわめた人です。「疎影横斜水清浅、暗香浮動月黄昏」(浅く清らかな水の上に梅の枝の疎(まば)らな姿が斜めに伸びている、香りは闇に漂(ただよ)い月はおぼろである)という詩の一節は、日本でも、梅の花といえば思い起こされる、よく知られたものだったといいます。

 中国では、世俗から離れ山林のなかに隠れ住む人を尊ぶ伝統があります。そういう人々は、「隠士(いんし)」、「高士(こうし)」などと呼ばれますが、本当は有能で、世間に出れば時の支配者に重んじられて大出世するはずなのに、あえて権勢や富を嫌い、何ものにもとらわれない無欲な生活をして いるのだと考えられています。“断捨離(だんしゃり)”を極め、山林の中でエコな暮らしを営む中国のおじさまは、他に「商山四皓(しょうざんしこう)」(秦(しん)時代末期に乱世を避けて商山というところに隠れ住んだ四人の老高士)、「竹林七賢(ちくりんしちけん)」(魏晋(ぎしん)時代に竹林に住んでいた七人の賢人)など、さまざまな“ユニット”があり、ひんぱんに絵画のテーマとして取り上げられます。彼らは、なぜか、山奥にたった一人ぽつねんと描かれることはほとんどなく、同好の士とともに、あるいは、無邪気な童子(どうじ)をともなって、美しい山水や花鳥風月を愛で、琴棋書画(きんきしょが)に興じる姿に描かれます。心を乱す要因から離れ、山深く結んだ庵(いおり)にて、気兼ねしない存在と共に日々を過ごすことが、俗世であくせくする「7人の敵がいる」というおじさまたちにとっては、理想だったのです。

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pressrelease

休館日

開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
※2024年7月26日~8月25日の金・土・日・祝日と8月12日~15日は20時まで開館(入館は19時30分まで)
休館日
毎週月曜日
(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
※2024年8月12日~15日は開館し、8月16日に休館
※年末年始の休館日は12月28日から1月4日まで

Facata(博物館だより)

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