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No.481

企画展示室3

時代を映す銅鏡

平成28年11月1日(火)~平成29年1月15日(日)

素文円鏡(繊維付着部分拡大)箱崎遺跡出土

素文円鏡(繊維付着部分拡大)
箱崎遺跡出土

貴族の愛用品として

 鎌倉時代に多く見られる湖州鏡(こしゅうきょう)は、平安時代の中頃以降に中国の宋から多量に輸入され始めた鏡です。背面には製造した店の名前を鋳出(いだ)しています。薄手で無文、素鈕(そちゅう)(飾りのない鈕)というシンプルな点が特徴的です。
 墓には、故人が使用していた日用品を副葬することがあります。写真3の素文円鏡(そもんえんきょう)(文様のない円い鏡)は、熟年の女性が埋葬された墓から見つかりました。科学的な調査の結果、この鏡は和紙で包まれた後、絹織物で再度包み、箱に収められていたことがわかりました。また、この絹織物の繊維の撚(よ)り方、布の織り方から、平安時代から鎌倉時代にかけて公家装束(くげしょうぞく)に使用されていた「顕文紗(けんもんしゃ)」という織物の可能性があることがわかりました。中国から輸入された青磁の碗や皿も一緒に埋められていたことも併せて考えると、この鏡を持っていた女性の身分の高さがうかがえます。

鳳凰文柄鏡 戸原麦尾遺跡出土

鳳凰文柄鏡
戸原麦尾遺跡出土

技術の進歩・政治的側面を映す鏡

 室町時代の鏡は、文様や構図が形式化されていきます。鋳出(ちゅうしゅつ)の技術が進歩したことで、より立体的な文様を表現することができるようになりました。さらにそれまでの円い鏡に柄(え)が付くものが登場します。そうなると鈕(ちゅう)は不要になりますが、依然として残り、次第に1つの文様として形式化していきます。当時の鏡は、女性の化粧具としてだけでなく、武将のひげの手入れにも使用されていました。
 安土・桃山時代の鏡の画題は、蓬莱文(ほうらいもん)や家紋、動植物がよく好まれたようです。それまでは左右対称の文様でしたが、この頃からそれがだんだんと崩れてきます。鏡の背面には、鏡師(かがみし)の銘を入れるものが登場します。「天下一」という銘が一般的です。「天下一」の名乗りは、織田信長(おだのぶなが)が手工芸者の生産意欲の高揚促進(こうようそくしん)を目的として行った政策のひとつです。当初は各種工人集団の中の一人だけに使用許可が与えられるものでしたが、その制度が崩れてくると、皆が自由に使用するようになります。そのため、天和2(1682)年、「天下一」の銘の使用を禁止するふれが出され、それぞれの受領国名(ずりょうこくめい)(因幡(いなば)や薩摩(さつま)といった、日本のかつての行政区分を表す国名)を鋳出(いだ)すようになります。その後、そのふれも廃れていくと「天下一」を使用する鏡師(かがみし)が復活しました。

牡丹文様鏡・鏡箱 旧吉川観方資料

牡丹文様鏡・鏡箱
旧吉川観方資料

人々の日常生活を映す鏡

 江戸時代には、鏡が一般庶民にも広まり、日常生活の必需品となりました。そのため大量生産が行われ、鏡面が凸凹しているものや、踏返(ふみかえ)し(すでにある鏡から型をとること)によって文様の輪郭(りんかく)がはっきりしていない鏡など粗悪品(そあくひん)が多く出回るようになります。また、柄鏡だけでなく、懐や帯に入れて持ち歩く、懐中鏡(かいちゅうきょう)も作られました。携帯しやすいように小ぶりで、通常、鈕(ちゅう)が両端二カ所に付いています。文様は、縁起物や和歌、物語の一場面を表したものなど多岐にわたり、当時の人々の多種多様な好みが反映されています。
 この時代につくられた婚礼道具の柄鏡には、蓬莱(ほうらい)や南天(なんてん)、高砂(たかさご)などの縁起思想(えんぎしそう)に基づいた文様があしらわれました。江戸時代の中頃になると女性の髪型や櫛(くし)、かんざしが大きくなり、それに伴って鏡も大型なものが登場するようになります。
 当時の風俗(ふうぞく)を描いた浮世絵には、鏡を使う人々の様子が見られます。一般庶民から、花街の女性、歌舞伎役者にいたるまで、さまざまな人の生活の中で鏡は使われていました。
 それぞれの時代の様相を映してきた鏡。現代の鏡は何を映すのでしょう?
(福薗美由紀)

休館日

開館時間
9時30分~17時30分
(入館は17時まで)
※7月22日~8月26日の金・土・日・祝日、8月13日~8月15日は20時まで開館(入館は19時30分まで)
休館日
月曜(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
※5月4日~5月6日は開館し、5月7日休館。
※9月21日~9月22日は開館し、9月23日休館。
※11月30日以降は設備等改修のため休館(2021年4月頃開館予定)
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pressrelease

Facata(博物館だより)

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