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No.489

企画展示室3

わからないモノの考古学

平成29年4月4日(火)~6月4日(日)

写真1 トロトロ石器(柏原遺跡出土)

写真1 トロトロ石器(柏原遺跡出土)

はじめに

 毎年、福岡市内では多くの発掘調査が行われています。そこで見つかる人々の生活の跡は多様で、使われていたものも多量にあります。使い方などのそれぞれの性格などは、発掘調査担当者や研究者によって検討・推測されますが、中にはいわゆる「用途不明品(ようとふめいひん)」と呼ばれるモノたちがあります。
 これら用途不明のモノたちは、いったい何に使われていたのか。モノから引き出された様々な情報から、みなさんも一緒に考えてみましょう。

なぞのモノたち

 発掘調査で見つかるものは、たいていその用途や形状、素材から名前が付けられており、名前を見るとおおよそ使い方がわかります。例えば石斧(せきふ)。これは石で作られた斧(おの)だということが名前からわかります。
 一方で、用途が不明なモノたちには、不思議な名前が付けられていることがあります。例えば、トロトロ石器(異形局部磨製石器(いけいきょくぶませいせっき))(写真1)。石器というからには、石で作られた道具だということはわかります。しかし、「トロトロ」とは何でしょう。これは、固いものが溶けてやわらかくなる様子に似た表面をしていることから付けられたと言われています。実際に触った感触も、ぬるぬる、つるつるしていて、普通の石器のようなごつごつとした感じはありません。また通常は鋭く作り出されている刃部(じんぶ)も、この石器にはありません。最初から作られなかったのか摩滅してなくなってしまったのかは不明ですが、これでは刺したり切ったりすることはできず、実際に何に使われたのか、わかっていません。おそらく祭祀(さいし)に使われたのではないか、と推測されていますが、みなさんはどう考えますか。
 また、滑石製双子型容器(かっせきせいふたごがたようき)と呼ばれるモノ。これは、滑石という柔らかい石を、二つつながった容器の形に加工したものです。博多区博多遺跡群や東区箱崎遺跡のほか、早良区東入部(ひがしいるべ)遺跡、田村遺跡などで見つかっています。側面には文様を刻んでいるものもあります。容器というからには、何かを入れたのだろう、と思われるでしょう。しかし、全体の大きさが約5㎝程度の小型の容器ですので、実用には向かないと考えられます。いったい、何に使用されたものなのでしょうか。
 この他にも様々な用途不明品を展示しています。その使い道や使い方をみなさんも想像してみてください。

写真2 土製支脚(大塚遺跡出土)

写真2 土製支脚(大塚遺跡出土)

研究によってわかった正体

 発見された当初は用途が不明だったけれども、研究によって次第にその正体が明らかになるモノがあります。「土製支脚(どせいしきゃく)」(写真2)という名前は小林行雄(こばやしゆきお)という研究者が名付けたものです(注1)。一見すると不思議な形をしたこの土製品の一部は、それまで犬形の埴輪(はにわ)や馬形の埴輪、角形(つのがた)土製品と呼ばれていました。小林氏はこの土製品の形や、火があたった形跡があるという点、長崎県壱岐(いき)から出土していた烏帽子形石(えぼしがたいし)という石製品の用途から、この形の土製品は、炉の中にいくつか並べて、甕などを火にかける時に支える道具ではないかと推測しました。「賛成してくださる人もあり、信じかねるという顔をする人もあった」(同注1)という使い方ですが、現在ではこの考え方が定説となっています。

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休館日
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(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
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