平成25年11月3日(日・祝)~12月23日(月・祝)
開催概要
展示の構成
第1部 山笠、その由来
都に跋扈した災いなす御霊を、牛頭天王の力で鎮め祓う京都の祇園御霊会。これが博多祇園山笠の源流
です。絢爛たる「祇園祭礼図」は、その煌びやかな山鉾巡行の姿を今に伝えています。このうち「山」だ
けを選び取った博多では、独自の山笠文化が花開きます。「祇園勧請説」「大嘗祭標山説」「聖一国師施餓
鬼棚説」など、山笠の起源をめぐる諸説の関係資料も必見です。
1.祇園会の山と鉾
博多祇園山笠の原型は、京都八坂神社の祇園祭、かつての祇園御霊会(祇園会)に求めることができます。平安時代に始まる祇園会は、多くの豪奢な山鉾が町の中を巡行し、数々の祇園祭礼図として、その姿が今に残されてきました。山鉾巡行は、人形を据えて松を戴く「山」と、高く真っ直ぐに伸びた柱を持つ「鉾」その他で構成されますが、博多では、そのうち山だけを選択し、鉾や付随する祇園囃子を受け入れることはありませんでした。その後、博多の山の姿は、それ自体が高く上方へと伸張していくなど、独自の発展を遂げていくことになります。
【主な展示資料】
祇園祭礼図屏風(堺市博物館蔵)、洛中祭礼図屏風( 堺市博物館蔵)、祇園会図屏風(大阪歴史博物館蔵)、祇園祭礼絵巻(福岡市博物館蔵)
祇園祭礼絵巻(福岡市博物館蔵) |
聖一国師像(承天寺蔵) |
2.博多祇園山笠の起源
博多祇園山笠がいつ、どのように始まったかについては、諸説あります。慶長12(1607)年成立の『九州軍記』に基づく貝原益軒の永享4(1432)年説をはじめとして、近代に入ると、明治7(1874)年に出された天慶4(941)年祇園勧請説、明治23(1890)年に出された大嘗祭標山説、翌24 年に出された仁治2(1241)年聖一国師施餓鬼棚説など、次々に新説が登場してきます。ここでは、博多祇園山笠の起源をめぐる様々な説をたどりながら、その謎にせまります。
【主な展示資料】
九州軍記(熊本県立図書館蔵)、筑前国続風土記(福岡市博物館蔵)、山口祇園曳山図(個人蔵)、小堀氏略系図(福岡市博物館蔵)、石城遺聞(福岡市博物館蔵)、聖一国師像(承天寺蔵)、承天寺並末寺縁起並ニ祇園会山笠由緒記(承天寺蔵)、祭礼図絵馬(猿田彦神社蔵)
博多祇園山笠巡行図屏風(福岡市博物館蔵) |
第2部 山笠、その歴史
山笠の姿は、人々の暮らしや、その時々の政治・社会のあり方を色濃く反映しています。博多の山笠を描いた最古の絵画「山笠巡行図屏風」、福岡藩への報告のために描かれた「山笠図」の数々、山笠を写した最古の写真などからは、時代に即して山笠の形が、段々と変化し続けてきた様子が見て取れます。長い歴史の中で幾度も廃絶の危機に直面しつつも、さまざまな問題を克服しながら祭りの継続に力を注いだ人々の奮闘を追います。
旧稀集(福岡市博物館蔵) |
1.博多の町と近世の山笠
戦国時代末の戦乱で、博多の町は荒廃しましたが、豊臣秀吉の命により区画整理が断行され、博多は生まれ変わりました。その町筋を基準に、博多の町組「流」は生まれました。江戸時代の博多祇園山笠が社会状況とどう関わってきたかを、多様な展示資料で解き明かしていきます。
【主な展示資料】
日本史筆写本写真版(大村市図書館蔵)、豊臣秀吉定書(櫛田神社蔵)、博多古図(個人蔵)、博多祇園山笠巡行図屏風(福岡市博物館蔵)、松囃子山笠記録(櫛田神社蔵)、旧稀集(福岡市博物館蔵)
2.山笠図と山笠絵馬
江戸時代には山笠図が数多く描かれました。藩に山笠製作の報告をするための色鮮やかな絵のほか、墨一色で描かれた下絵も多く残されています。いっぽうで、山笠に関わる人々は、櫛田神社をはじめとして多くの山笠絵馬を奉納してきました。公と私の両面から見る山笠図像の世界。
【主な展示資料】
山笠図屏風(福岡市博物館蔵)、博多祇園山笠之図(福岡市総合図書館蔵)、博多山笠絵馬(大分八幡宮蔵)、山笠図絵馬(櫛田神社蔵)
山笠図屏風(福岡市博物館蔵) |
ポスター「博多山笠」 (福岡市博物館蔵) |
3.危機と変革の近代
明治時代は、博多祇園山笠にとってまさに激動の時代でした。明治初年の山笠禁止から始まる、近代化と伝統行事との軋轢の数々を経て、舁き山と飾り山の分離に至る過程を見ていくと、山笠が常に変革を続けてきたことがわかります。世相とともに見る山笠の近代史。
【主な展示資料】
明治3年一番山笠写真(櫛田神社蔵)、浴衣山絵馬(櫛田神社蔵)、筑前国博多祇園祭礼之図(厳島神社蔵)、福博電気軌道開業ポスター(福岡市博物館蔵)、昭和初期の追い山映像(福岡市博物館蔵)
4.山笠を支えるもの
焼け野原となった博多の戦後復興の象徴は、どんたく、そして山笠でした。博多祇園山笠が地域の祭りの枠を越え、大きく成長する過程を追います。
【主な展示資料】
第一次博多復興祭子供山笠(復元)、博多祇園山笠振興期成会会議綴(櫛田神社蔵)、映像記録「博多祇園山笠」(福岡市博物館蔵)、ポスター「博多山笠」(福岡市博物館蔵)
第3部 山笠、その広がり
北部九州に広がる山笠文化。それらは博多系、津屋崎系、直方系、浜崎系、日田系の5系統に分類することができます。博多系はもちろんのこと、他の系統の山笠にも、様々な博多の流儀が「写」されています。各地の山笠を独自の視点で追ったオリジナルドキュメンタリー映像は、一見の価値あり。各地でさらに多様化した山笠の姿にも、目を奪われることでしょう。
1.北部九州の山笠文化
北部九州には数多くの山笠行事が伝えられています。これらは博多系、津屋崎系、直方系、浜崎系、日田系の5つの系統に分類することができ、それぞれ街道に沿って集中した分布域をもっています。ここでは各系統の代表的な山笠をとりあげ、その特徴と相互の関連性を探っていきます。
【主な展示資料】
博多祇園山笠絵馬(恵蘇八幡宮蔵)、津屋崎祇園山笠関連資料(個人蔵)、日田祇園山鉾図(日田祇園山鉾会館蔵)、加布里山笠絵馬(加布里山笠保存会)、山笠図絵馬(姪浜住吉神社蔵)
山笠の分布 |
山笠絵馬(大隈須賀神社) |
2.ハカタをウツス
各地の山笠行事では、博多との交流を通して、さまざまな博多の流儀が祭りの中に取り入れられてきた。そこには人々の「都市への視線」を通して、文化が周辺に伝播していく様相が表れています。こうした文化の流れ、すなわち「ハカタウツシ」の姿を紹介してきます。
【主な展示資料】
博多祇園山笠当番法被(福岡市博物館蔵)、壱岐郷ノ浦祇園山笠長法被(壱岐郷ノ浦祇園山笠振興会蔵)、日田祇園山鉾長法被(日田祇園山鉾振興会蔵)、飯塚山笠関連資料(飯塚山笠振興会蔵)
3.山笠の力
山笠の力は、博多の内部にとって人々の結束を維持する力であり、伝統を創造する力でした。また外部に向けては、博多に注目を集め、その文化を発信する力でもありました。それは、今でも様々な局面に姿を現しています。山笠の力が人を動かし、町を動かす。
【主な展示資料】
芦別健夏山笠関連資料(芦別健夏山笠振興会蔵)、木屋瀬宿図絵馬(北九州市立自然史・歴史博物館蔵)
木屋瀬宿図絵馬(北九州市立自然史・歴史博物館寄託) |
会 場 | 福岡市博物館 常設展示室 | |
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会 期 | 平成25年11月3日(日・祝)~ ※11月2日(土)まで閉室しています。 |
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開館時間 | 9時30分~17時30分(入館は17時まで) | |
休館日 | 月曜日 ただし、祝休日は開館し、翌火曜日が休館 年末年始(12月28日~1月4日) |
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常設展観覧料 | ▽11月3日(日・祝)は、文化の日・常設展示室リニューアルオープン日で無料 ▽11月4日(月・振休)以降は、企画展と共通で 一般200(150)円 高大生150(100)円 ※中学生以下無料 ※( )内は、20人以上の団体料金。 ※身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳(以上の手帳を提示された方の介護者1人を含む)及び、特定疾患医療受給者証・先天性血液凝固因子障害等医療受給者証・小児慢性特定疾患医療受診券、福岡市・北九州市・熊本市・鹿児島市民でシルバー手帳など65歳以上が確認できるものをご提示の場合は無料です。 |
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アクセス | 市営地下鉄…博多駅〔K11〕から約13分、天神駅〔K08〕から約7分。 西新駅〔K04〕(1番出口)下車徒歩約15分 西鉄バス …博多駅前A、博多バスターミナル1番5・6のりばから約25分。 天神バスセンター前1Aのりばから約20分 博物館北口、福岡タワー南口、博物館南口下車徒歩約5分 無料駐車場…250台 |