平成3年7月16日(火)~9月23日(月)
はじめに
本館では平成3年度アジアマンス事業として「ともに奏でるアジアの響き‐体験学習・インドネシアの民族音楽‐」を9月16日に開催いたします。今回この企画にちなみ、インドネシアの合奏用楽器であるガムランにまつわる芸能の世界、木彫りの人形芝居ワヤン・ゴレと影絵ワヤン・クリなどを体験学習資料のなかから展示することにしました。演じられるのはインド古代神話で、ラーマ王の生涯を説いたラーマーヤナやバラタ族の戦争を物語るマハーバーラタなどが中心です。インドネシアの人形芝居はこうしたインド神話を自国化した文化遺産として、今日も脈々と生き続けているのです。
インドネシアの楽器
インドネシアの楽器を代表するものにガムランがあります。ガムランは1つの楽器ではなく旋律打楽器(音階のある打楽器)を中心としたアンサンブルで、なかには弦楽器ルバーブや管楽器スリンなども含まれています。ガムランの語源は「たたく」「手を操る」を意味する動詞「ガムル」で、ガムランとは「たたかれるもの」を意味しています。
ワヤン・クリ
繰り人形を用いた影絵芝居でワヤンは影、クリは革を意味しています。人形は水牛の革に彩色したものを用います。影絵人形に彩色するのはスクリーンを通して見るだけでなく、舞台の裏側、即ち演じる側からも観客が見るからです。ワヤン・クリは一晩中、ローソクの火を灯しながら演じられ、この間、用いる人形は約700体以上と言われます。演じる影絵師ダランの両側に人形をバナナの枝に刺しておきます。明け方になると、一転して木製人形のワヤン・ゴレを演じるようになり、芝居は終了します。
ワヤン・ゴレ
木製人形を用いた人形芝居で、1人の人形師によって操られます。西部ジャワのスンダ人の間で親しまれており、ガムランのオーケストラを従え演じています。ワヤンは影を意味しますが、インドネシアの芸能においては特に影絵だけを意味するのではありません。人間による舞踊劇もワヤン・オランと称しているのです。物語はマハーバーラタやラーマーヤナの他に、ジャワの文化英雄パンジーや、アラビアの王子アミル・ハムザをめぐるものなどがあります。人形は1回の芝居に約30から60体程、使用されます。