平成5年3月30日(火)~平成6年3月27日(日)
11、木造聖観音坐像(部分) |
福岡市及びその近郊には寺院や堂に伝えられた仏像をはじめ、個人所蔵の仏像がある。その中には古くからこの地の人々の信仰を集めた像のほか、遠くパキスタンや中国で作られた像がある。今回は所蔵者の協力により借用したものと寄贈を受けた仏像を陳列した。福岡の歴史的な仏教美術のほか、アジアの仏像にも接する良い機会と思われる。
1、石造降誕釈迦像 |
ガンダーラの仏像
いわゆるガンダーラ仏と呼ばれる仏像で、パキスタン北部のガンダーラ地方で紀元2~3世紀に作られた石造彫刻である。釈迦牟尼(しゃかむに)の生涯(仏伝)を各場面ごとに描いた浮彫りの一部である。
降誕釈迦は仏伝の最初で、母の摩耶夫人(まやぶにん)がルンビニー園に行って、無憂樹(むゆうじゅ)に右手をさしのべたときに右脇から釈迦が誕生した場面をあらわす。降魔釈迦は座禅修行する釈迦とそれを邪魔する悪魔を描き、釈迦の右手は悪魔を降伏させるため降魔(触地)印を示している。
5、石造菩薩像上半身(部分) |
中国と高麗の仏像
多様な中国仏像のうち北魏から宋代にかけて作られた石造、木造の仏像である。石造三尊仏立像と石造五尊仏像は光背を背に正面を向いた中尊と左右対称に菩薩あるいは僧形の人物(羅漢か)を配する。木造観音菩薩立像はふくよかな体つきでゆっくりと体をくねわせ、その体にまつわるように衣が複雑に流れ、優美な姿に表されている。石造菩薩像上半身と木造観音菩薩立像はこれに対して垂直の姿を強調し、宝飾を多く身に付ける。
金銅菩薩形坐像は糸烏郡二丈町一貴山(いきさん)の堂に伝えられた像である。高麗時代に作られた鋳造仏と考えられるが、顔の表情は丸みがあり独特である。手印が左右逆で同様の像が長崎県壱岐郡金谷寺に伝わる。
9、木造如来形残欠(部分) |
日本の仏像
油山観音正覚寺(しょうかくじ)の聖観音坐像は美しい姿の像である。寄木造(よせぎづくり)(複数の木材を合わせて像を造る方法)の坐像で繁雑な高いうねりを見せる衣のひだや女性の顔を思わせる表情などが特徴である。
恵光院(えこういん)の木造弥勒如来(みろくにょらい)坐像はもと筥崎宮座主坊(ざすぼう)五智輪院弥勒寺(筥崎宮の社坊)の本尊で明治初期の神仏分離のさいに恵光院に移った像である。
木造如来形残欠は坐像の体幹部の前面である。腕がなく尊像の名はわからないが、小像にもかかわらず、おだやかな張りのある表情や浅く量感のある彫りの肉身などに藤原時代の仏像の趣がある。