平成5年10月26日(火)~平成6年3月27日(日)
「戒壇院」額 |
戒壇院略史
仏教の戒律を授受する場で、三重の高壇に築かれているところが戒壇です。戒壇はわが国では唐僧鑑真(がんじん)が天平勝宝6年(754)に奈良の東大寺に築いたのがはじまりで、その7年後に下野(しもつけ)国(栃木)薬師寺と筑前国(福岡)観世音寺にも設けられました。しかし、このように「天下の三戒壇」の一つとして知られ、近隣の僧たちに戒律を授けていたここ筑紫戒壇院も、時代を経るうちに次第に草堂に本尊のみというような状態にまで衰微していきました。
それが復興するのは江戸時代の17世紀後半のことです。近くの崇福寺の僧智元が本尊を修復するよう発願し、やがて戒律復興のために律宗の僧が招かれたりして、元禄年間(1688~1704)には華々しく復興します。
黒田藩の家老で観世音寺村の領主であった鎌田昌勝が戒壇院を再建し、本尊の脇侍像や梵鐘、半鐘なども制作されて寺の様子が次第にととのえられていきました。
元禄16年(1703)には戒檀院は禅宗に改宗し、管理は博多の禅寺(聖福寺、崇福寺、承天寺、妙楽寺)が輪番で受けもちました。そして明治時代になって戒壇院は博多聖福寺の末寺となり、今日に至っています。
戒壇院本堂内 |
出陳リスト
太宰府市・戒壇院
1、木造盧舎那仏(るしゃなぶつ)坐像 1躯
像高148.5/平安時代(12世紀)/重要文化財
戒壇院本堂の本尊であるこの像は、毘盧舎那仏あるいは盧舎那仏と呼ばれ、「万物を照らす宇宙的存在としての仏陀の名。密教では大日如来と同じ。」(『広辞苑』)とされています。ふっくらしたお顔や、彫りの浅い衣紋線(えもんせん)が平安時代後期(藤原時代)の特徴です。
2、木造弥勒菩薩(みろくぼさつ)立像 1躯
京仏師照暁作/像高147.5/江戸時代(元禄13年・1700)/太宰府市指定文化財
3、木造文殊菩薩(もんじゅぼさつ)立像 1躯
京仏師照暁作/像高146.5/江戸時代(元禄13年・1700)/太宰府市指定文化財
本尊盧舎那仏の脇侍であるこの2像は、僧の形をしていますが、台座に書かれている銘から弥勒像と文殊像です。元禄13年(1700)に京仏師照暁が制作し、当地へ運んでから、福岡の弥兵衛が漆を塗り、仏師の安通、朝通、万通の親子が金箔を施しています。
4、木造観音菩薩坐像 1駆
像高79.7/江戸時代
ふくよかな顔だちやしっかりした彫出など、京都の仏師による制作と思われますが、この像がもともとどこに安置されていたのかは不明です。
5、木造鑑真(がんじん)和尚坐像 1躯
京仏師照暁作/像高70.7/江戸時代(宝永2年・1705)/太宰府市指定文化財
中国の唐時代の僧である鑑真は、5度の渡海に失敗し天平勝宝5年(753)にやっと鹿児島の薩摩半島に上陸したときはすでに失明していました。大宰府を経由して奈良にのぼり、東大寺に戒壇を建てて聖武上皇らに戒を授け、唐招提寺を建立。わが国の律宗の祖である鑑真は、76歳で入寂しました。鑑真が携えてきたといわれる、黒い点がある仏舎利一つが最近戒壇院で見つかり話題になりました。
6、木造聯(れん) 1対
中国僧柏岩筆/長さ197.0/江戸時代(延宝元年・1673)
7、木造聯 1対
仙厓筆/長さ165.0/江戸時代(天保6年・1835)
聯は長い板に文字を彫刻したもので、柱や壁の左右に相対して掛けてかざりにしたものです。博多聖福寺の仙厓が書いたものは、戒壇院と博多聖福寺の関係をよくあらわしています。
8、銅鐘 1口
総高104.2/径64.8/江戸時代(元禄14年・1701)/福岡県指定文化財
梵鐘は時を告げたり儀式の合図に打ち鳴らされたりします。釣り手は龍の頭部と円筒形飾りでつくり、乳(にゅう)は9個で装飾豊かな乳郭でかこみ、鐘身には多くの梵字が描かれています。このような形態の鐘は朝鮮半島の鐘に多く、江戸時代にはそれを真似てつくったり、日本と朝鮮半島のそれとの混交型がはやりました。鐘身に書かれている銘によりますと、この鐘は元禄14年(1701)の運照律師のときに、福岡の白木玄流が金を出して、博多の鋳物師(いもじ)礒野七兵衛正慶によってつくられました。
9、「戒壇院」額 1面
木庵(もくあん)筆/縦73.5 横156.0/江戸時代(延宝2年・1674)
中国の黄檗宗の禅僧木庵の雄渾な筆跡。
10、城南区・油山観音正覚寺 木造聖観音坐像 1駆
像高79.2/室町時代/重要文化財
11、早良区・個人蔵 木造如来形残欠 1駆
像高51.5/平安時代後期/福岡県指定文化財
12、東区・恵光院 木造弥勒如来坐像 一躯
像高70.5/平安末期~鎌倉初期/福岡市指定文化財
13、西区・徳田信彦氏寄託 銅造菩薩形坐像 1躯
総高75.0/高麗末期~李朝初期
14、東区・志賀海神社寄託 鍍金鐘 1口
総高51.5/高麗時代/重要文化財