平成6年9月13日(火)~10月16日(日)
タイの貫頭衣 |
黄金の繭を煮て糸を作る |
古くからアジアの国際都市として栄えてきた福岡は、文物や人々が集っただけではありません。伝えられた風習や技術は、この地で醸成され独自の産業や文化が生み出されました。人々の工夫と知恵が凝縮していると言われる博多織もその一つです。しかし、アジアの織物のなかでどのような位置をしめているのか、布作りとはどのような歴史をもっているのか、わからないことが多すぎます。
今回この疑問を少しでも解くため、発掘で出土した織りの道具や布、アジア各地の織物を展示しました。あわせて福岡市教育委員会が「板付遺跡弥生館」で昨年実施しました市民講座「貫頭衣を織る」で作成しました織り具や衣服を展示いたします。
なお今回の展示には福岡市教育委員会文化財整備課及び鳥丸貞恵氏の御協力を得ました。
銅戈に付いた布(有田遺跡) |
発掘された布と道具
古代の衣服や機織り道具の多くは土の中で腐ってしまい、現在まで残ることは稀です。それでも布の断片や土器についた布の跡などが発見されます。ここでは福岡市内を中心に、発掘された織物関係の資料を展示しました。これらの資料から、布が衣服だけでなく道具作りや食物の調理・加工などに使われ、生活の必需品であったことがわかります。布の多様性が人間生活を豊かにしてきたと言えるでしょう。
”織り”の復元 | 織った布(復元) |
板付遺跡弥生館講座「貫頭衣を織る」
福岡市教育委員会が板付遺跡内に設けている板付遺跡弥生館では、昨年度から「貫頭衣(かんとうい)を織る」という体験講座を実施しています。この講座では、蚕の繭やカラムシなどの天然の繊維を自分たちで収集し、織り具も弥生時代のものを復元して各種の織り物を織り上げました。発掘出土品や現在残っている資料からはわからなかったことが、この講座によって少しずつ明らかになっています。
韓国のカラムシ織り布 | 中国の麻布 |
アジアの染織
アジアの国々は染織の宝庫です。その中には3つの特徴があります。原始繊維の使用と紋織物・絣織物が盛んなことです。アジアでは各種の絹を世界でもっとも早く発見し、織りや染織が発達していく過程でほんの偶然的に織り文様や絣織物が誕生しました。このように偶然を規則的なものへと発展させて高度な技術を確立しました。現在、これらを巧みに操って、世界に比類のない豊かな衣生活を展開しています。
中国の板綜絖で織った紐 | フィリピンのアバカ | インドのサリー |
板付弥生のムラ
板付遺跡は米作り発祥の地として、教科書にも掲載されている著名な遺跡で、国の史跡に指定されています。福岡市教育委員会では、現在、遺跡の整備を行っており、平成7年6月には遺跡公園としてオープンする予定です。また、遺跡内に展示館「板付遺跡弥生館」が開館しており、様々な行事を行っております。見学者も講座の参加者もムラ人になり、米作りや機織り作業に取り組み、弥生時代の生活を体験することができます。
■協力者(敬称略)
福岡市教育委員会文化財整備課・埋蔵文化財センター・鳥丸貞恵(福岡県工業技術センター)