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No.125

美術・工芸展示室

芦屋鋳物師(あしやいもじ)

平成10年3月31日(火)~9月27日(日)

芦屋町蔵 素文平釜
芦屋町蔵 素文平釜
円覚寺蔵 芦屋梅竹図真形釜
円覚寺蔵 芦屋梅竹図真形釜
芦屋町蔵 芦屋霰地真形釜
芦屋町蔵 芦屋霰地真形釜
芦屋町蔵 芦屋真形釜 鋳型(金屋遺跡出土)
芦屋町蔵 芦屋真形釜
鋳型(金屋遺跡出土)
芦屋町蔵 花生鋳型 (金屋遺跡出土)
芦屋町蔵 花生鋳型
(金屋遺跡出土)

 北部九州を南北に貫いて流れる遠賀川(おんががわ)の河口は、芦屋津(あしやづ)を呼ばれ、博多と同じく大陸文化と様々な物資の流入口でした。この芦屋には、中世以降、優れた仕事をする鋳物師(いもじ)たちがいました。彼らの作る釜は、姿が美しく茶の湯に用いる釜として重んじられました。これが世に名高い芦屋釜(あしやがま)です。

 茶の湯が盛んになった室町時代には、芦屋釜は、第一級の名品としての地位を確立していました。しかし、現存する芦屋鋳物師の作品からは、彼らが茶の湯釜にとどまらない多彩な活躍の場を持っていたことが浮かび上がってきます。

 この展示は、芦屋鋳物師たちの活動を、様々な側面からとらえ、名品の誉れ高い芦屋釜を生み出した土壌を考えようとするものです。

芦屋釜とは

 湯を沸かす道具、釜は茶会の代名詞ともなるほど、茶の湯において要となるものです。この茶の湯釜として、下野佐野(しもつけさの)(現在の栃木県佐野市)の天命釜(てんみょうがま)とともに名高かったのが、筑前芦屋で作られた釜でした。茶の湯が流行を見た室町時代には「芦屋釜」「芦屋鑵子(かんす)」と呼ばれ京都で大変な人気でした。

 芦屋釜の形は、口の立ち上がりを外側からえぐったような繰口(くりくち)で、取手の鐶(かん)を通す鐶付(かんつき)は鬼面(きめん)、銅に羽(は)をめぐらすというのが基本です。これは釜の本来的な形という意味で「真形(しんなり)」と呼ばれます。

芦屋鋳物師

 芦屋釜を作った芦屋の鋳物師は、茶の湯釜に限らず、寺社の鐘(かね)や鰐口(わにぐち)などの仏具から生活用具の鍋や釜に至るまでを手がけていました。その活動は、鎌倉時代までさかのぼることが出来ます。

 芦屋釜が茶道具として非常に重んじられた一方で、それを作った鋳物師たちについては、よく分かっていません。しかし、芦屋ほか筑前には芦屋鋳物師たちの活動の足跡が鮮やかに残っています。

鋳物製作の背景

 芦屋で優れた鋳物が発達した理由として、芦屋が港湾都市であったことが挙げられます。

 芦屋津は、遠賀川流域の荘園からの年貢米輸送の中継地として古代末以来、栄えていました。港湾都市であることは、鋳物の原材料を運び込むにも出来た製品を出荷するにも好都合です。また、対外貿易を通じて、進んだ文化や技術がいち早く流れ込んで来たと考えられます。

芦屋鋳物の盛期

 芦屋鋳物師の活動の多彩な展開が目立ってくるのは15世紀後半です。高まるばかりの茶の湯釜の需要に応じる一方で、芦屋鋳物師は、朝鮮から渡来した朝鮮鐘と日本の伝統的な和鐘を混交させた鐘を創出したり、仏像の鋳造に取り組んでいます。また、16世紀前半には、西国から北九州一帯を支配下においた大内氏の後ろ盾を得て、大内氏の本拠地である山口の寺の鐘や鰐口を制作しました。

 この頃の芦屋鋳物師として、大江姓を名乗る貞家・浄江・貞盛・氏重・宣秀などのほか花田吉次、行信などの名が銘文から知られます。中でも、大江宣秀は、最も名を多く残した芦屋鋳物師で、製作年代の明らかな唯一の芦屋釜(根津美術館蔵の永正14年銘の芦屋松梅図真形釜)の作者としても有名です。

芦屋から博多ヘ

 芦屋の鋳物は、江戸時代までには衰退していたと考えられます。その理由として、茶の湯釜の生産では16世紀後半に京都の工人たちの勢力が優勢となったこと、そして、援助者であった大内氏が滅亡してしまったことなどが、挙げられます。活躍の機会を失った鋳物師たちは芦屋から離散していきます。そのなかには博多に移住したとされる者もいました。

 太田あるいは山鹿(やまが)と名乗る博多の鋳物師は、芦屋鋳物師の後裔とされます。遠賀郡の高倉神社には、芦屋鋳物師で最も力のあった大江姓の鋳物師と、太田姓の鋳物師が共同で作った鐘があったという記録があります。このことからも中世の芦屋鋳物師と近世の博多鋳物師は深い繋がりがあったことが分かります。

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