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No.278

考古・民俗展示室

考古資料にみる高麗と博多

平成18年4月11日(火)~平成18年6月18日(日)

はじめに―高麗と博多―


青磁蓮弁文碗

 中世の博多では大陸との交易活動が活発に展開していました。特に中国宋(960~1279)との間で行われた日宋貿易は広く知られているところです。 この時期の博多周辺の遺跡を発掘調査すれば、農村集落からも宋から輸入された陶磁器や銅銭が出土するなど、日宋貿易の影響は至るところに見ることができます。やがて、高麗(918~1391)をふくめ三カ国間で貿易が展開されるようになりますが、 日宋貿易の陰に隠れ、高麗との間で行われた日麗貿易についての実態は、今一つはっきりとしません 。そこで、高麗から渡来、或いは影響を受けた考古資料から、高麗との交流を探ってみたいと思います。
  日麗貿易は、大宰府官人が宋商人も交え、中央権門と密接な関係を保ちつつ展開していたものでした。高麗からの輸入品は、宋の場合のように膨大な量が広範囲に流通したものではなく、一部の階層に限られていました。博多出土の輸入陶磁器の内 中国産の占める比率は95%を超えています。それ故、高麗陶磁は量産され安価な中国陶磁には到底太刀打ちできるものではなく、交易品としての評価を得られなかったといえます。 輸入品ではありませんが、この時期の瓦の中には高麗文化の影響を受けた文様を持つものもみられます。


高麗の陶磁器

 高麗青磁 高麗の青磁は青灰色の胎土に鉄分を含んだ釉(うわぐすり)を掛けて焼き締められたものです。同じ時代に中国宋で大量に生産され、日本に輸出された龍泉窯青磁( りゅうせんようせいじ )などと比べると高麗青磁は釉が薄く掛けられています。中国青磁が釉を3、4度掛け厚い釉層を形成し、青く発色するのに対し、高麗青磁は1、2度掛けで釉層は薄く、釉は透明感の強いものです。胎土と釉の色が重なり「 翡色(ひしょく)(ヒスイの色)」に発色しています。
  11世紀後半から12世紀前半にかけて、高麗陶磁は青磁と陶器が大宰府と博多に集中して出土しています。出土した青磁の大半は無文です。施文方法は型押し、蓮弁削り出しといった中国でもよくみられるものです。11世紀後半では全羅南道康津窯産の精製品が少数出土するにとどまっていましたが、12世紀前半に入ると精製品にかわって粗製品の出土が急増します。粗製の青磁は粗い白色の砂粒を含んだ胎土に、薄い釉が掛けられていますが、その多くは焼成不良により釉が不透明で発色は良くありません。ある程度量産されるようにはなったのですが、品質が落ちています。



青磁印花文皿

青磁印花文碗

 高麗陶器 11世紀後半から12世紀前半にかけて、 高麗からは無釉の陶器も入っています。生産地である韓国では窯跡調査に基づいた研究が大きく進展しています。博多遺跡群では蛇の目高台の高麗青磁碗に伴い、頸部に波状文がヘラ描きされた広肩壺口縁部の破片が出土しています。外反する口縁部は端部が折り曲げられています。大宰府観世音寺前面でも頸部波状文ヘラ描きの広口双耳壺が出土しています。口縁部の形態、頸部の波状文、肩部の叩き目などの特徴が類似する資料が韓国忠清南道瑞山無將里窯址(11世紀後半)と全羅南道三興里窯址(11世紀後半~12世紀中頃)から出土しています。青磁のようにそれ自体が商品という訳ではなく、容器として用いられたものでしょう。大宰府ではこの時期の高麗陶磁の90%が大宰府政庁、 学校院(がくぎょういん)、観世音寺とその周辺に集中して出土しています。このことから大宰府官人が日麗貿易に大きく関与していたこととみられます。但し、広域での流通はしていないようです。



陶器壺

象嵌青磁盤

 象嵌青磁 高麗青磁の中で代表的なものが 象嵌(ぞうがん)青磁です。 もともと象嵌は 金属工芸の技法でしたが 、それを陶磁器に応用した高麗独自のものです。 象嵌は生乾きの器面に彫刻刀で陰刻文様を彫り、そこに白い土や赤い鉄分を含んだ土などを埋め込み、釉を掛け焼き締めたものです。透明感の強い釉越しに文様に埋め込まれた土はそれぞれ白、黒に発色し、無文、陰刻文様だけの青磁に比べると見栄えがするものです。高麗青磁といえば象嵌青磁が想起されますが、象嵌技法が本格的になるのは12世紀後半以降です。この時期に入ると、博多では宋磁の出土量がやや沈静化し、高麗青磁の出土は急減します。逆に京都や鎌倉で高級青磁の出土が増加しています。北部九州で再び増加するのは14世紀後半に入ってからです。

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