平成25年11月26日(火)~平成26年1月26日(日)
図版③-1 唐蘭風俗図屏風 |
図版③-2 唐蘭風俗図屏風 |
まあ、西洋のおじさまってば…
図版③は、いわゆる洋風画の六曲一双の屏風です。長崎の出島(でじま)の様子を描いたものなのでしょうか。登場人物は、一方は中国人、もう一方はオランダ人ふうです。鎖国をしていた江戸時代、長崎の出島でのみ眼にすることの出来る異国の船や西洋風・中国風の建物、そして、行き交うオランダ人、中国人、オランダ人が従者としている東南アジア人は、絵師の創作意欲をかきたてるテーマでした。異国の風物や人物を描いた絵は版画として刷られ、多くの人々の手にわたったので、実際にオランダから来日した男性に会ったことがない絵師も、その絵姿を描くことが出来ました。
さて、この屏風は、双方に大人の男女とたくさんの子供達が描かれています。中国人のほうは唐子髷(からこまげ)を結った子供たちをおだやかに見つめる男女です。オランダ人の方はというと…。画面左方に描かれた瓦屋根の建物の中に眼をむければ、赤い上着の男性が、美貌の女性を口説き中。もう少しで椅子からずり落ちそうではありませんか。この絵を描いた谷鵬紫溟(こくほうしめい)という絵師については詳しいことは分かりません。しかし、彼の眼には、儒教的な価値観を共有する東洋人に比べて、西洋の人々のふるまいや暮らしぶりが享楽的に映っており、この屏風を描く際、皮肉を込めてその対比を際立たせたのかもしれません。 (杉山未菜子)