平成28年2月16日(火)~平成28年4月24日(日)
金武古墳群出土の新羅系壺
古墳時代の日朝関係を解く鍵
朝鮮半島の三国時代(さんごくじだい)は高句麗(こうくり)、百済(くだら)、新羅(しらぎ)の三国と加耶(かや)の諸国が成立する時代です。日本(当時は「倭(わ)」などと呼ばれていました)の古墳時代とほぼ同じ時代になります。
この時代の朝鮮半島の代表的な器(うつわ)は「陶質土器(とうしつどき)」と呼ばれるものです。これは登り窯で焼成された灰色硬質の土器ですが、倭で古墳時代中期から生産がはじまる須恵器(すえき)のルーツにもなります。また、朝鮮半島三国時代の土器は福岡周辺の集落遺跡や古墳からも少なからず出土しており、古墳時代の対外交流や人々の移動を知る重要な手がかりとなります。
本展示では当館が所蔵する陶質土器の主要資料を紹介し、市内の遺跡から出土した資料とあわせて、古墳時代における朝鮮半島と福岡の交流について考えてみましょう。
加耶系の短頸壺
福岡市博物館収蔵の陶質土器資料
当館の展示は福岡の対外交流史を大きなテーマとしていますが、その参考資料となる朝鮮半島の土器についても積極的に収集しており、購入や寄贈による57点の資料を所蔵しています。
ほとんど欠損のない優品が多く、本来は古墳の副葬(ふくそう)品であったものと考えられます。残念ながら出土地が定かではない資料ばかりですが、日韓両国の研究の蓄積によって、土器の形態等からおおむね産地を推定することは可能です。当館所蔵の陶質土器はその形態的特徴から、新羅系土器と加耶系土器が多く、百済系土器も少しあります。加耶は朝鮮半島南部、現在の慶尚南道から慶尚北道南部のあたりに存在した小さい国々の総称で、新羅や百済などのように1つにまとまることはなかった地域です。加耶諸国と土器様式の関係についても研究が進められおり、当館の加耶系土器にも金官(きんかん)(金海市周辺)、大加耶(だいかや)(高霊郡周辺)、阿羅加耶(あらかや)(咸安郡周辺)といった国の特徴をもつものがみられます。
加耶系の炉形器台
加耶系の筒形器台
新羅系の台付壺