平成28年4月5日(火)~6月19日(日)
Ⅱ.和製ランプの世界
台ランプ・置きランプ
ランプは、ガラスや金属、陶器などでつくられた油壺と、金属製の口金(バーナー)を基本構造とする照明具で、口金の部分に木綿でつくられた芯を通し、毛細管現象によって油壺の燃油を吸い上げた芯に点火するという仕組みになっています。油の燃焼を助けるために、火屋が取り付けられており、そこに油壺を支える台座や吊り金具、光を反射させるための笠(シェード)が付属しています。ランプの種類は、それらの組み合わせや用途によって分類されています。
日本では、明治時代に西洋から石油ランプが輸入されるようになると、人びとは、これまでになかった明るさを手に入れ、生活のなかに求めるようになります。国内でガラス製造や石油の大規模採掘が奨励されたこともあり、明治中期から大正初期には、国産の石油ランプが一般家庭にも普及します。その後、ガス灯や電気灯火具の登場により、石油ランプは急速に姿を消すことになります。隆盛した時間はわずかでしたが、和製ランプは、西洋の影響を受けつつも、日本の家屋事情にあわせた独自の変化を遂げていきました。
◆台ランプ・置きランプ
畳や障子が使われることの多い、日本の家屋では、座敷や床、机の上に置くために、用途に応じて高さが工夫されたランプがつくられました。台ランプと置きランプは、日本の住居構造からうまれたものです。一説には、50センチメートル以下が卓上用、それ以上が座敷などの床用といわれていますが、両者を区別する基準は明確ではありません。装飾にも特徴があり、台座には、真鍮やガラスだけでなく、和室に馴染む陶磁器・木・竹などが使われました。
◆吊りランプ
吊りランプは、光を下方に反射させるための笠を備え、吊り金具で油壺を支えているのが特徴です。頭上より光を得られることから、茶の間など室内の広範囲にあかりをもたらすランプとして重宝されていました。しかしながら、吊る場所が低ければ頭をぶつける、高ければ火事の危険が高まるなどの問題があり、吊りランプは生活のなかで需要が高まるかたわら、安全性が追求されました。
◆豆ランプ
高さが15センチメートル前後の小さなランプで、細い芯と火屋の役割を兼ねた小さな笠がついているのが特徴です。持ち運びしやすく、安価であること、そして簡素なつくりという利点をいかし、寝室、神棚や仏壇、便所、風呂場など光力をあまり必要としない場所で使われました。また、火屋や油壺を交換して楽しむ趣味性の強いランプとしても位置づけられています。
(河口綾香)
豆ランプ
吊りランプ
座敷ランプ
(撮影:九州電力株式会社)