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No.130

歴史展示室

江戸のオカルト図鑑 幽霊・妖怪画2

平成10年7月14日(火)~8月30日(日)

1 「付喪神図」伊藤若冲
1 「付喪神図」伊藤若冲

 昨年夏の幽霊画に引き続き、今回は妖怪画をとりあげます。妖怪とは、本来は人知でははかりしれない怪異な現象や異様な物体を意味する言葉です。しかしながら、一般的には物の怪(け)や付喪神(つくもがみ)、人と動物が合成されたものや狐、狸が化けた姿、そして各地に伝承される化け物がイメージされます。またほとんどが特定の人物に復讐するために出現する幽霊と違い、全ての妖怪が人間に害をおよぼすわけではなく、ちょっとしたいたずらをするだけで、中には立派な?妖怪もいるなどとと思いがちなのは、水木しげる氏のマンガの影響かも知れません。

 今回展示している江戸後期から明治時代までの妖怪画を概観しても、こうした現代人の妖怪観はそれほど間違っていないのではと思われます。というのも、人を怖がらせるために描かれているものが圧倒的な幽霊画に対し、妖怪の図像には滑稽さや親しみやすさが共通してみられるためです。これは絵師の意図ではなく、江戸期以前から伝えられてきた妖怪の図像の多くに本来的に備わっていた性格でしょう。こうした日本人の妖怪に対する古くからの感性に、絵師の工夫や新しい発想が加わるとき、より魅力的な妖怪が誕生します。またどちらかというと絵師の仕事にとっては軽い戯画のたぐいに近い妖怪画ですが、今回とりあげた絵師の多くは力を抜くことなく、むしろその力量が遺憾なく発揮されて山水画や花鳥画、人物画に負けない優作も含まれています。

 科学万能の20世紀も終わろうとしています。同時に、西洋的な理知主義や科学に対する信仰がゆらぎ、人を幸福にするはずの科学が新しい恐怖を生み出すという事態も起こっています。おそらくは、次の世紀も妖怪たちは生き残るでしょう。そう思えるバイタリティが、彼らには感じられるのです。また逆に、妖怪が住めない世界、こうした魔物たちが表現されなくなった社会は、私たちにとっても決して住み心地のよいものではないのだと思われませんか。というのも、万物に霊魂を認める日本の古代以来のアニミズムこそ妖怪の産みの親。いわば私たちの心の奥底にある世界観が彼らを創造し、伝えてきたからです。

 だからこそ、一方でパソコンを平気で使いこなす子供たちが、同時に妖怪アニメや魔物が活躍するテレビゲームに夢中になるのです。

(中山喜一朗)

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休館日

開館時間
9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
※2024年7月26日~8月25日の金・土・日・祝日と8月12日~15日は20時まで開館(入館は19時30分まで)
休館日
毎週月曜日
(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
※2024年8月12日~15日は開館し、8月16日に休館
※年末年始の休館日は12月28日から1月4日まで

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