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No.261

黒田記念室

能面の世界5-能の中の異国-

平成17年5月24日(火)~7月18日(月・祝)

◆あら恋(こい)しの古(いにしえ)やな…武将や美姫の運命

 中国といえば悠久の歴史を誇る国。その歴史上に名を残す英雄や美女が登場する能もあります。「四面楚歌(しめんそか)」という故事成語の元になった項羽(こうう)と劉邦(りゅうほう)の争い(紀元前202年)も、取り上げられています。一つは『項羽』。文字通り項羽が主人公であり、亡霊となって後の世の人の前に現れ、恋人・虞美人(ぐびじん)との悲しい別れや壮烈な戦いの様を物語ります。それは、舞台を中国としながらも、『平家物語』の武将が登場する修羅能とよく似た運びになっています。
  項羽のライバル劉邦に仕えた軍師を主人公にしたのが『張良(ちょうりょう)』。張良が、黄石公(こうせきこう)という不思議な老人の与えた試練を見事克服して兵法(ひょうほう)の奥義(おうぎ)を授けられるというもので、勇壮な所作事(しょさごと)が好まれ、現在でもよく上演されています。
  中国が誇る絶世の美女と言えば楊貴妃(ようきひ)でしょう。楊貴妃は、盛唐の玄宗(げんそう)皇帝(在位712~756年)の寵姫(ちょうき)です。その馴れ初めから、玄宗と妃の華やかな生活、政変での妃の死、残された玄宗の悲しみなどの一連は、白楽天(はくらくてん)の詩『長恨歌(ちょうごんか)』で美しく歌い上げられています。日本では『源氏物語』などの王朝文学を仲立ちにして受け入れられたもので、能の『楊貴妃』も、冥界にいる楊貴妃と現世にいる玄宗への引き裂かれた恋愛を主題にした、まさに能の幽玄美を体現する一番となっています。



7 若女

◆浪路(なみじ)遙かに行く程に…唐土から来る人、帰る人

古代からの日本と大陸との交流を取り入れた能もあります。
  『日本書記』には、応神(おうじん)天皇の世のこととして、呉の国に使者を使わし「縫工女(きぬぬいひめ)」を求め、呉王より4人の女性を与えられたとあります。また、雄略(ゆうりゃく)天皇の世にも、呉から「手末(たなすえ)の才伎(てひと)」(手先の技芸のたくみな人)として4人の女性が渡来したといいます。いずれも古代における大陸からの織物の伝来に関わる記事ですが、これを素材とした能に『呉服(くれは)』があります。住吉から西の宮を参詣しようとした人が、途中、「呉服の里」に寄り、機織りをする女性に出会います。見ればふつうの里人とも思えず、素性を問えば、遙か昔の応神天皇の世に、唐土より織物を伝えた呉織(くれはとり)と漢織(あやはとり)という織女(おりめ)だと答えます。その夜明け方近く、呉織が古の姿で現れ、帝へ献上する綾錦(あやにしき)を織り祝言(しゅうげん)の舞を舞う、これもまた、おめでたい能です。
  筑前の箱崎が舞台となった能もあります。『唐船(とうせん)』は、「唐土と日本と舟の争ひ有りて」捕らわれの身となった祖慶官人(そけいかんじん)という唐人が主人公です。祖慶官人は、箱崎のとある領主に召し使われ、牛飼いをしています。ある日、本国に残してきた二人の子が舟に乗って渡ってきて、財宝と引き替えに父親の身柄を引き取りたいといいます。しかし、祖慶官人には日本で設けた子が二人おり、その子らを伴うことは領主が許しません。帰国を促す唐土の子と引き留めすがる日本の子の板挟みにあって苦しみ、祖慶官人は、海に身を投げようとしますが、さすがに哀れに思った領主は、子を連れて行くことを許します。4人の子を伴った祖慶官人を乗せた船は追い風を受けて、揚々と玄界灘にこぎ出すのでした。
(杉山未菜子)

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9時30分~17時30分
(入館は17時まで)
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休館日
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