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No.284

美術・工芸展示室

おばけの浮世絵展

平成18年7月19日(水)~9月18日(月・祝)

骸骨(がいこつ)百鬼夜行(ひゃっきやぎょう)

 幽霊は、人の姿をしていますが実体のないものです。だから絵画では足がなかったり、透き通った身体で表現されています。逆に実体のあるのは骨、つまり骸骨のほう。これが動き出すと、骸骨だけに個性はさほどありませんが、とたんに妖怪めいた恐ろしい存在になります。骸骨は、つまり人間と妖怪のあいだ、みたいなものかもしれません。このコーナーの前半には、 歌川広重(うたがわひろしげ) 、歌川国芳( くによし )、月岡芳年(つきおかよしとし) という3人の巨匠が描いた骸骨の作品を展示しています。中でも国芳の「 相馬(そうま)の古内裏(ふるだいり)」は、人間の骨格の構造をよく把握した表現になっており、しかもその骸骨が怪獣のように巨大化して襲いかかるだけに迫力満点です。
 後半は、いにしえの百鬼夜行を彷彿とさせる作品を展示しています。百鬼夜行とは、妖怪たちが集まって夜な夜な練り歩く行列のこと。平安時代の京の都では、これに出会ったが最後、絶対に命はないと言われた恐ろしいものでした。江戸時代末期の浮世絵には、こうした百鬼夜行を連想させる表現が多くみられます。数多くの妖怪を描くわけですから、その個性の描き分けが浮世絵師腕の見せどころ。
 中にはそれほど恐ろしくもなく、愛らしいとさえ感じられるものもあり、水木しげる氏の『ゲゲゲの鬼太郎』の源流をみるようです。
 また、百鬼夜行をパロディ化することも行われました。例えば歌川芳虎(よしとら)の「神農諸病退治図(じんのうしょびょうたいじず)」は、百鬼を諸病に置きかえた作品。病気を擬人化するのに妖怪の姿を借りています。一方、諸病を退治する薬のほうは、あきらかに武士の集団。見ようによっては、これは 虐(しいた)げられた庶民と武家階級の一大戦争に解釈できなくもありません。浮世絵は庶民の娯楽でしたから、こうした為政者への諷刺が込められた作品も、特に江戸末期には数多く作ら れました。



14相馬の古内裏

妖怪動物園(ようかいどうぶつえん)

 次のコーナーでは、月岡芳年の作品を中心に、さまざまな動物が化けて妖怪になった浮世絵版画を展示しています。題して「妖怪動物園」。とりあげたのは狐に狸、蛇に猫、蜘蛛(くも)に百足(むかで)の6種類。しかし、ひとくちに動物が化けた妖怪といっ てもさまざまです。狐や狸は、もともとさまざまなものに化けて人をだます動物。ですから最初から妖怪の素質十分で、どちらかというと陽性で、時には恩返しのために人に化ける場合もあります。国芳が描いた「葛(くず)の 葉狐(はきつね)」はその典型で、有名な 陰陽師(おんみょうじ)である 安倍清明(あべのせいめい)の母親が狐だったという伝説。一方猫や蛇はどちらかというと陰性で、強い怨念のために妖怪になるようです。また、蜘蛛や百足はその姿から、巨大なだけですでに立派な妖怪。しかも常に悪役のようです。こうした妖怪画を見ていると、日本人の動物観が現れているようで興味がつきません。
  以上の3つのテーマのほか、展示室には3幅の肉筆浮世絵による幽霊画も展示しています。こちらは本当に恐ろしいですから、存分に、背筋をぞくぞくさせてください。
(学芸員 中山喜一朗)

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