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No.330

考古・民俗展示室

ふくおか民俗カタログ3-川と池の魚撈-

平成20年11月18日(火)~平成21年2月1日(日)

二、川での魚とり   大人になっても楽しみは続く
 魚とりの楽しみを知った子どもたちも、成長するにしたがって、だんだん川から離れた暮らしを送るようになっていきます。しかし中には、ますますのめり込み、いろいろな技を習得しながら魚をとり続ける人たちがいました。こうした人々は、父や祖父、あるいは近所のおじさんたちから漁法を学び、時には遠くの名人に教えを請いながら、自分なりの工夫を重ねてきました。いろいろ考え工夫を凝らすことそれ自体が、魚とりの楽しみを何倍にもしてくれるのです。
 このコーナーでは、実際に漁を続けてきた人々の語りに耳を傾けながら、室見川とその周辺の漁法をご紹介していくことにしましょう。

【アユをとる】 早良区内野 西嶋栄二さん
 昔は室見川にも、足で踏めるぐらいたくさんのアユがおりました。昭和38年の水害を契機に室見川が大きく改修される以前のことです。私は釣りはしません、15、6歳の頃から投網(トアミ)ばかりです。投網はアユの成長の具合よって、網の目の大きさが九分(ぶ)(約2.7センチ)から一寸(すん)二分(約3.6センチ)までのものを使い分けます。今の投網はナイロンテグスでできていますが、昔は絹糸で作っていました。少しでも丈夫にするために、使う前にいつも柿渋(かきしぶ)につけるものでした。
 投網が解禁となる7月になると、ゴロゴロとした石のある瀬で投網を打つんです。投網の袋に入るアユももちろんいますが、下は石ころばかりやから、引き寄せようとしても石の陰に隠れて逃げてしまう魚が多い。そこで網を被せたまま、隠れている魚を箱眼鏡(ハコメガネ)で探しだして鉾(ホコ)で刺してとっていきます。9月を過ぎると、川を下るアユを追って福重あたりにまで網を打ちに行きました。10月末頃までの間に、多い年には800匹もとったものです。

《瀬付き(セヅキ)》 早良区内野 西嶋栄二さん
 アユが産卵するために浅い瀬に集まって来る状況を瀬付きというんです。9月頃になると、魚が集まりそうな瀬を見つけて、川の石をひっくり返してまわるんですよ。そうすると石に苔(こけ)がないから産んだ卵が付きやすくなる。アユがそこに集まって来るわけです。水煙の上がるぐらい集まって来ますからね。そこに投網を打つと上げきれないほど入りました。
 この漁は夜にしますから、近くの河原に竹を組んで簡単な小屋を作っていました。瀬付き小屋(セヅキゴヤ)といいます。火を焚いて暖をとりながらアユが集まるのを待つわけです。何人か集まると、籤(くじ)を引いて一番網(イチバンアミ)、二番網(ニバンアミ)を決めます。一番網から順に自分の好きな場所を選ぶ権利があります。魚が集まったのを見計らってそれぞれの場所に行って、一斉に網を投げます。一斉にしないと魚が逃げます。だからひと網打ったら全員上がって、30分とか1時間とか休むわけです。そうするとまた魚が寄って来ます。瀬付きをすると一晩に100匹ほどもとれました。

【ウナギをとる】 早良区小田部 毛利通友さん
 ウナギには、普通のウナギと、ゴマウナギと、カニクイていうとがおるです。ゴマウナギは山の方におります。体に胡麻(ごま)を振ったような点々があって大きいです。カニクイていうとはカニを食うとるとですな。頭がマムシのごと三角になっとるですよ。ウナギは4月から5月頃に川を上ります。小田部(こたべ)近辺に上って来るとが、たいがい6月頃ですね。そしてまた9月頃になると川を下って来ます。
 ウナギには色々なとり方があります。穴釣り(アナヅリ)、鰻掻き(ウナギカキ)、鰻待ち(ウナギマチ)…。穴釣りではひとつの穴で21匹釣ったことがありますよ。室見川の一(いち)の堰(せき)でした。鰻掻きも、私は名人ていや、名人でしょうねぇ。私ぐらいとった人はおらんと思います。百道(ももち)中学校の裏で1日に213匹とったことがあります。それから鰻待ち。これがまた面白かとですよ。タブに太かウナギがバーンと入って来る。雨が降ると大勢で川に入ってウナギをとったもんです。

《穴釣り(アナヅリ)》 早良区小田部 毛利通友さん
 秋の晩方はいつも穴釣りに行ったもんです。餌はドジョウが一番いいです。ドジョウを鉤(はり)に刺したら、竹で作った竿(さお)の先に引っ掛けてウナギのいそうな穴に差し込みます。ドジョウが泳ぐようにして穴の中にソロッと入れたら、たいていウナギは外を向いて餌を待っとっちゃけん、もう「よか餌が来た」ってバクッと飛びついて来ます。おらんならすぐ次の穴に行く。ですから勝負は早いです。ウナギの入る穴は決まっとるです。
 竿は孟宗竹(モウソウダケ)で作ります。根本が太さ一ぐらい、先はぐっと細くて傘の骨を短く切ったものをつけて鉤先が引っ掛けられるようにしていました。鉤を結んだ木綿(もめん)糸の端は手に持ちますから、竿にはつなぎません。ウナギがかかったら、竿を抜いて糸だけを持って穴から引き抜きます。逃げようとするウナギは、頭を向こうに向けようと引っ張りますが、私は鉤に結んだ糸を持っているので、はずれることはありません。

《鰻てぼ(ウナギテボ)》 早良区小田部 毛利通友さん
 鰻てぼは6月から7月頃に川に上って来るウナギをとるのに使います。ウナギは何とかして小まいとこ小まいとこに行こうとするから、鰻てぼを漬けるのはなるだけ小さい川がいいです。餌はタニシです。生のままじゃ匂いがせんけん、割って腐らかしてから入れました。昔は馬小屋があって、堆肥(たいひ)があったでしょう。ポッポポッポして手を突っ込んだら熱かごとありましたから、割ったタニシをバケツに入れて突っ込んでおくと臭くなる。そげなとを使いよったです。
 鰻てぼは口を下流に向けます。川底に沈めたら、土手の土を崩らかして、流れんごと土を被せるんです。ただ、全部埋めてしまうと、てぼの中に水の流れんけんですね、少し尻のほうを浮かして、水の入るごとします。一番入った時にはひとつに12、3匹入ったですね。開けてみてグワッていうごてありますよ。そりゃうれしいです。

《鰻待ち(ウナギマチ)》 早良区小田部 毛利通友さん
 秋に雨が降ってきたら、すぐに洗面器を外に出します。雨水が7分目ぐらいまで溜まったら、「なら、ぼつぼつ行こうか」って鰻待ちに出かけました。降り始めてそれぐらい経つと、山に降った雨がこちらのほうまで下って来るんです。それに乗ってウナギも川を下ります。
 ウナギが一番よく下る流れの筋を澪(ミオ)といいます。ウナギは川の流れの深い所を下りますから、川を見れば澪はわかります。最初に来た者が澪にたぶ(網)をすけて、その両脇に次々と人が並んでいきます。この列を一番たぶ(イチバンタブ)といいます。一番たぶにはウナギの太かとがバーンと入ります。その後ろに二番たぶ(ニバンタブ) の列ができます。一番たぶの人の間を抜けたウナギを待つわけです。人によっては、前の人の網をこっそり破る。すると前のたぶを通り抜けて自分の方にウナギが来るわけです。そういう奴のおったです。
 ウナギがたぶに入ったらそのまま陸(おか)に上がって自分の胴丸(ドウマル)(魚籠(びく))にウナギを入れます。空いた場所には後ろの列から人が入りますから、戻って来た人は一番後ろに入ることになっていました。

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