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No.362

考古・民俗展示室

奴国発展の礎─クニグニがまだ小さかった頃─

平成22年4月27日(火)~7月11日(日)

板付遺跡の水田に残された足跡
板付遺跡の水田に残された足跡

はじめに
 弥生時代が始まる契機となった「稲作の伝来」と、中国・後漢王朝から奴国への「金印の下賜(かし)」の2つの出来事は、朝鮮半島や中国大陸に近い福岡地域の弥生時代を最も強く特徴付けるものです。
 この2つの出来事に挟まれた時代、すなわち弥生時代前期・中期(紀元前6世紀頃~紀元前1世紀頃)の北部九州は地域間の活発な交流が行われていた時代で、様々な新しい文化要素が伝来し、各地の交流が盛んになるなど、旧来の境界を越えて人々が活動していた時代であったことが、当時の遺跡や出土した資料から読み取れます。
 今回の展示はこの混沌の時代、弥生時代前期~中期の時期の北部九州の様相を土器や埋葬、青銅器などから検討し、奴国や周辺のクニグニがどのように発展したのかを見ていきます。


弥生時代の始まりと奴国の始まり
 後に奴国となる範囲に最初の弥生的な集落として出現したのは、板付遺跡(いたづけいせき)や雀居遺跡(ささいいせき)など、那珂川(なかがわ)・御笠川(みかさがわ)中流域の低い台地の上につくられた集落でした。
 板付遺跡には弥生時代の早い段階ですでに環濠(かんごう)や貯蔵穴(ちょぞうけつ)、人工的な畦(あぜ)や水路を備えた水田など、その後の弥生集落に見られる諸要素がそろっていました。板付遺跡の付近には諸岡遺跡など弥生時代前期の集落があり、この地域に小規模な「ムラ」(数軒の住居が集まった集落)が散在していたことがわかっています。
 現在の博多駅南側から比恵(ひえ)・那珂(なか)にかけての一帯は那珂川と御笠川に挟まれた台地になっていましたが、この台地の端の水田や河川に近い場所に小規模な集落が分散していました。台地の高い場所には円形の環濠が掘られ、貯蔵穴などが作られていました。
 当時の人々の生活の痕跡は、台地の上だけでなく台地の下の低地にも残されています。現在の福岡空港の西側にあった雀居遺跡では水田や集落の跡が見つかっています。弥生時代の初めに、すでに奴国の地域では平地に広がる水田の光景が見られたのかもしれません。
 このような生業の基盤となった稲作農業は朝鮮半島からの影響の下でひろがったものですが、このほかにも周辺の遺跡では朝鮮半島の影響を受けた住居がつくられたり、「無文土器(むもんどき)」(朝鮮半島の青銅器時代に作られた土器)が出土したりと、この地域が縄文時代から引き続いて朝鮮半島との交流があったことを示しています。


弥生時代前期の文化の「重層性」
 このように弥生時代の前期には朝鮮半島からの影響を大きく受けた文化が北部九州に入ってきましたが、その一方でそれまで存在していた縄文時代の影響を色濃く残す文化もまだ残っていました。
 弥生時代の前期には縄文時代の系統の土器の他に、朝鮮半島の土器の影響を受けた土器も同時に存在し、この両者の影響を受けた系統の土器も次第に増加するなど、多様な系統の土器があったことがわかっています。
 このような朝鮮半島の文化と縄文文化の重層性は土器のような日常用具にとどまらず、当時の埋葬方法にも見られます。土壙墓(どこうぼ)や埋甕(うめがめ)といった縄文時代からの埋葬方法に加え、この時代には朝鮮半島から支石墓(しせきぼ)や石棺墓(せっかんぼ)という新たな埋葬方法が伝わります。やがて、甕棺墓(かめかんぼ)が北部九州で独自に発達したこともあり、同じ時代に営まれた墓地の中に様々な形式の墓が並ぶといった状況も見られました。
 この他にも弥生時代前期の後半になると奄美や沖縄といった南西諸島産の貝を使用した貝輪が北部九州で見られるようになり、山陰や北陸のヒスイを使った玉製品がもたらされるというように離れた地域の文化が入ってくる機会が増加し、北部九州の文化はさまざまな文化要素で構成されるようになりました。このことは同じ文化の中で多様な価値観を生み出すことにもつながり、人々は様々な文化要素の中から自分たちの欲求を満たすものを独自の規準で選択するようになり、それがさらに多様化を進めました。

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休館日
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