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No.375

黒田記念室

描かれた文化財~江戸時代の文化財調査~

平成22年11月23日(火)~平成23年1月10日(月)

開局当時の福岡放送局
1 青柳種信肖像(福岡県立図書館蔵)

 福岡市博物館では「青柳種信(あおやぎたねのぶ)関係資料(山崎文書)」と呼ばれる資料を収蔵しています。これは江戸時代後期に活躍した福岡藩の国学者・青柳種信(1766~1835)の子孫の家に伝わった文書群で、中身は種信自身の著作や手紙のほか、種信が藩の命令で編纂(へんさん)した地誌『筑前国続風土記拾遺(ちくぜんのくにぞくふどきしゅうい)』(以下、『拾遺』と略します)の関係資料などから成り立っています。
 このうち、『拾遺』関係の資料の中には当時筑前国内に所在した仏像や仏具・鏡・銅剣など、今日では美術や考古資料として分類される古器物(こきぶつ)の絵図が数多く含まれています。これらの絵図は江戸時代に描かれたとは思えないほど精密で、現在の学問水準に照らしても高い資料的価値をもっています。いっぽう、描かれた古器物の中には今日的な目でみると必ずしも学問的な対象にならないものや誤解も見受けられます。しかし、そうしたギャップもまた、時代によって移り変わる文化や価値観を考えるうえで興味深い問題を含んでいるように思われます。
 この展示では種信がのこした絵図と現存するいくつかの資料を紹介します。江戸時代に生きた種信と現代の私たちの間にはおよそ200年の時間差があります。それぞれのモノを見る目は何が同じで何が違うのでしょうか。描かれたモノと現実のモノの間を行き来するとき、思いがけない発見があるかもしれません。


1、青柳種信と国学
 青柳種信は明和3年(1766)、福岡藩足軽鉄砲組・青柳勝種(かつたね)の次男として福岡城下に生まれました。幼名種麿(たねまろ)(満)、通称勝次(かつじ)、後に柳園(りゅうえん)と号しました。元服ののち江戸藩邸詰などを経て諸国の学者と交わり、当時盛んになりつつあった国学(こくがく)(日本独自の文化や精神を古典や歴史の中に見出そうとする学問)に目覚め、やがて国学の大家として有名であった伊勢松阪の本居宣長(もとおりのりなが)(1730~1801)の弟子となりました。
 種信は福岡藩士として宗像沖ノ島御番(むなかたおきのしまごばん)、普請方(ふしんかた)、浦方(うらかた)の仕事を着実に勤めるいっぽう、編纂途中の地誌『筑前国続風土記附録(ふろく)』の助録を命じられ、次第に国学者としての頭角をあらわしていきます。文化9年(1812)には筑前を地理測量のために訪れた幕府天文方(てんもんかた)伊能忠敬(いのうただたか)(1745~1814)の案内役を勤め、忠敬から「貴殿程国学に達し候(そうろう)人に逢不申(あいもうさず)」(あなたほど国学に精通した人には会ったことがない)と評価されています。


2、『筑前国続風土記拾遺』
 文化11年(1814)、種信は浦方より御右筆記録方(ごゆうひつきろくかた)に転じ、『筑前国続風土記附録』の再吟味(ぎんみ)を命じられました。これが後の『筑前国続風土記拾遺』です。
 『拾遺』は筑前国内の地理・歴史・古跡などを郡村ごとに記した地誌で、貝原益軒の『筑前国続風土記』、加藤一純・鷹取周成の『筑前国続風土記附録』と並んで「筑前三大地誌」と呼ばれています。いずれも江戸時代の筑前国内の実情を知るうえで貴重な資料ですが、なかでも『拾遺』は種信の国学的素養を反映して古文書や神社関係の情報が充実しており、また石碑や仏具などに記された金石文(きんせきぶん)を多く含む点でも特色が認められます。
 種信は『拾遺』編纂にあたって、まず筑前国内の古文書や村々の情報(書上帳(かきあげちょう))を提出させ、その後実地調査(廻村(かいそん))をおこなっています。廻村は文政3年(1820)の宗像郡を皮切りに毎年春と秋の農閑期を選んで実施され、1日3~4村のペースで延べ180日以上にも及んだようです。調査メンバーは種信を含む4人程度で構成され、このうち1人は藩のお抱え絵師でした。絵師は古器物を写実的に描くことを求められたようで、その仕事は今日のカメラマンに似ています。
 こうして9年以上にも及ぶ調査を終えた文政12年(1829)、種信は藩から地誌編纂の功労を賞され加増を受けています。この段階で編纂は一段落していたようですが、種信は天保6年(1835)に『拾遺』未完のまま没しました。その後も種信の子や弟子たちの手によって『拾遺』の編纂は続けられましたがついに完成には至らなかったようで、幕末の文久年間(1861~63)に種信の弟子によって清書されたもののほか、いくつかの写本が今日伝わっています。

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9時30分〜17時30分
(入館は17時まで)
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休館日
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(月曜が祝休日にあたる場合は翌平日)
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