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No.375

黒田記念室

描かれた文化財~江戸時代の文化財調査~

平成22年11月23日(火)~平成23年1月10日(月)

25 三雲出土銅剣・銅戈図
25 三雲出土銅剣・銅戈図

3、ありのままに描く
種信が残した古器物の絵図は実物に即して描かれたものが多く、現在の考古学や美術史学の立場からみても有益なものが少なくありません。
 例えば「三雲出土銅剣(みくもしゅつどどうけん)・銅戈図(どうかず)」(№25)は文政5年(1822)に怡土(いと)郡三雲村南小路(みなみしょうじ)(糸島市三雲)から出土した遺物の原寸図で、各部の寸法や状態が細かく記されています。三雲南小路遺跡は『魏志(ぎし)』倭人伝に登場する「伊都国(いとこく)」の王墓に比定される弥生時代中期の遺跡で、当時ほかにも多数の鏡などが出土したことが種信の『柳園古器略考(りゅうえんこきりゃくこう)』の記述や図からわかります。現在、これらの遺物の大半が散逸し、わずかに銅剣一口(こう)と鏡一面が残るのみですが、昭和40~50年代におこなわれた発掘調査では種信が描いた図にぴたりと一致する鏡の破片が出土し関係者を驚かせました。


4、異なる視点
 種信の絵図の中には、現代の学問の対象にはならない(かもしれない)不思議な資料も含まれています。
 「東郷村貴船社神石図(とうごうむらきふねしゃしんせきず)」(№12「宗像郡古器物図(むなかたぐんこきぶつず)」所収)は、宗像郡の貴船神社にあった珍しい石(奇石(きせき))を描いたもので「恰(あたか)も彫刻せるか如(ごと)し」「天然石にして人工(じんこう)に非(あら)ず」というコメントが添えられています。どうやら、この石は一部にまるで人が彫ったかのような扇形の部分があるため、「神石」として神社で大切にされていたようです。
 種信の時代には奇石を収集することが流行し、なかでも石器や石棒(せきぼう)、勾玉(まがたま)など今日では考古資料として分類される古代の石製品が「神代石(じんだいせき)」と呼ばれて珍重されていました。「神代石」は奇石収集家として知られた木内石亭(きのうちせきてい)(1724~1808)が「天工(てんこう)にあらず、人工にあらず、実に神工(しんこう)のいちじるしきものなり」(『神代石之図』)と述べているように、神話の時代の遺物と考えられていたようで、種信のコメントも石亭の表現を踏まえたものかもしれません。同様の見方は装飾古墳の壁画を「神代文字(じんだいもじ)」とした国学者平田篤胤(ひらたあつたね)(1776~1843)の理解にも認められます。
 種信のモノを見る目は即物実証主義的であり現代の学問にも通じる部分をもつ反面、国学という独特の世界観にもとづく点で私たちとは異なる性格をもっていたことが窺われます。
(末吉武史)

12 東郷村貴船社神石図 33 志摩郡主船司古塚所出古鏡図 13 黒崎駅岡田神社神宝古鈴図
12 東郷村貴船社神石図
(宗像郡古器物図)
33 志摩郡主船司古塚所出古鏡図 13 黒崎駅岡田神社神宝古鈴図

〈謝辞〉
本展示を開催するにあたり、安楽院、岡田宮、北九州市立いのちのたび博物館、太宰府天満宮、福岡県立図書館、法正寺ほか関係各位にご協力を賜りました。この場を借りてあつく御礼申し上げます。

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