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No.382

黒田記念室

黒田家のご先祖さがし

平成23年3月8日(火)~4月24日(日)

№11 黒田職隆墓石塔図
№11 黒田職隆墓石塔図

はじめに
 福岡藩主黒田家の故郷が、孝高(よしたか)(如水(じょすい))長政(ながまさ)親子が生まれた播磨国姫路(はりまのくにひめじ)(現兵庫県姫路市)であるというのはよく知られた話かと思います。しかし、それ以前の黒田家の歴史については、実のところよく分かっていません。目薬売りをしていて財をなしたとか、元々は近江源氏(おうみげんじ)佐々木氏の一族で、中世以来の続く家であるとか諸説ありますが、どれも伝承の域を出ません。黒田家もそのことを自覚していたようで、江戸時代を通じて何度も先祖調査をしています。今回の展示では、黒田家の系譜の時代的変遷を紹介すると共に、なぜ黒田家は先祖調査を続けたのかといった問題を、系図や古文書を用いて考えます。


1、黒田は源氏?
 現在、黒田家は宇多(うだ)天皇を祖とする近江源氏の一族と認識されています。実際、崇福寺(そうふくじ)(博多区千代)にある孝高の墓碑【No.1】(慶長(けいちょう)9・1604年)には「播州飾東郡人、姓源、父濃州刺史識隆、累代城于播州姫路」とあり、また、かつて崇福寺に存在した長政墓碑(寛永(かんえい)元・1624年)にも「筑州太守源姓黒田氏長政」と書かれていて、当時から源氏と認識していたことが分かります。
 しかし、聖福寺(しょうふくじ)(博多区御供所町)の慶長6年の棟札(むなふだ)には「檀越豊臣朝臣黒田長政」とあったり、元和(げんな)4(1618)年に長政が日光東照宮(にっこうとうしょうぐう)に奉納した石鳥居には「黒田筑前守藤原長政」と刻まれていたり、一定しません。また、孝高についても、円清寺(えんせいじ)(朝倉市)にある肖像画【No.2、展示資料は写し】には「居士姓橘氏俗諱孝高道称如水法諱円清」とあり、こちらも常に源氏というわけではありませんでした。
 黒田家が源氏として固定されるのは、江戸幕府(えどばくふ)による「寛永諸家系図伝(かんえいしょかけいずでん)」の編纂(へんさん)を待たねばなりません。黒田家は尾張(おわり)藩の儒学者堀正意(じゅがくしゃ・ほりまさおき)に系図作成を依頼しますが、この頃に出されたと推定される興味深い書状が残っています。それは、福岡藩2代藩主忠之(ただゆき)に宛てて、弟の秋月(あきづき)藩初代藩主長興(ながおき)が出した書状【No.3】で、黒田家の当時の系譜認識が伺える文言が散見されます。例えば、黒田宗卜(そうぼく)(孝高の祖父、長興の祖父の祖父)の実名のことや職隆(もとたか)(孝高父、長興の曾祖父)の没年月日の確認等、系図を作成するために情報を収集している様子が分かります。この書状からは、当時黒田家には整った系図は存在しておらず、3、4代前の先祖の名前も曖昧になっているという状況が読み取れます。系図は、その後、約1年をかけて完成し、幕府に提出されますが、宗卜(重隆(しげたか))以前は「此間中絶」とされ、宇多天皇から一貫して続く系図とはなりませんでした。


2、家の歴史をつくる
 3代藩主光之(みつゆき)の時代になると、今一度先祖の歴史を振り返ろうという風潮が高まります。寛文(かんぶん)11(1671)年、光之は家臣の貝原篤信(かいばらあつのぶ)(益軒(えきけん))に命じて、「黒田家譜(くろだかふ)」の編纂を開始させます。「家譜」は幾度も改稿を経て、宝永(ほうえい)元(1704)年に15巻本が完成します。ここでは、重隆以前に「中絶」があったとする前代の記述が訂正されます。「家譜」では重隆の父として、「高政(たかまさ)」という人物が登場し、「中絶」が無かったことになります。さらに、近江国伊香郡黒田(おうみのくにいかぐんくろだ)村(現滋賀県長浜市)に居住し、黒田を初めて名乗ったという「宗清(むねきよ)」という人物の存在も明かになり、大幅な修正が加えられました。
 ただ、篤信が編纂の過程で作成したと思われる系図には少し異なった見解が見られます。「黒田世譜(くろだせいふ)」【No.5】の宗清の箇所には「宗清、号黒田四郎、是黒田氏之始也、蓋居江州黒田邑歟」とあり、近江国黒田村と黒田氏の関係を推定表現に止めています。また、「益軒先生家蔵雑集(えきけんせんせいかぞうざつしゅう)」に収められた系図【No.6】には重隆の父が高政ではなく、高清(たかきよ)という人物になっています。こうした系図との整合性を篤信がどう考えていたのかは分かりませんが、いずれにしても、江戸時代中期、黒田家では、宇多天皇から系譜に断絶は無く、黒田氏は近江国黒田村が発祥、という2点が明確に示されることになりました。

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休館日
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