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No.459

企画展示室2

古文書と記録で見る福岡藩政史7
 ―藩主夫人と家族の生活・文化―

平成27年10月20日(火)~12月6日(日)

(黒田家を守り受け継ぐ夫人たち・6代継高夫人~9代斉隆国元夫人)

 6代継高の夫人圭光(けいこう)院は、歴代夫人の中でも大凉院と並んで、事跡が知られた女性です。彼女は継高との間に3人の実の娘を儲(もう)け、また国元で生まれた重政(しげまさ)を跡継ぎとして厳しく教育したことで有名です。重政の夫人(菊、真含(しんがん)院)は薩摩藩から迎えられましたが、将軍家の縁者にあたる女性でした。
 継高の晩年、重政やその弟・長経(ながつね)までが早世し、黒田家は世継ぎの無い事態になりました。そして幕府の命で一橋(ひとつばし)家から治之を養子を迎えざるを得なくなりました。その際の交渉の段階で、圭光院が黒田家の存続と長崎警備の担当を強く約束させたたことは有名です。先の「淑徳録(しゅくとくろく)」では、正室としての五つの徳目の結果として礼賛しています。
 7代治之(はるゆき)にも圭光院は藩主としての教育を懇ろに施し、徳川四天王の譜代大名榊原(さかきばら)家から夫人(亀、瑤津(ようしん)院)が迎えられました。しかし治之も30歳で病死し、8代藩主に京極(きょうごく)家から3代光之の血をひく養子、治高(はるたか)が継ぎました。その彼もわずか2か月で急死し、そして再度一橋家から将軍家斉(いえなり)の弟の斉隆(なりたか)が9代藩主として迎えられます。斉隆も福岡で、わずか19歳で江戸に婚約者がいながら死去します。国元には遺児・斉清(なりきよ)が残され10代藩主を継ぎます。斉清の実母は、江戸から福岡城に移って暮らしていましたが、瑤津院の計らいで藩主生母として新間(しんま)の方と呼ばれました。


(幕府と薩摩との間で 10代藩主斉清夫人とその娘11代長溥夫人)

 斉清は将軍の甥にあたるため、夫人には、将軍家の婚姻並みに、高級公家の二条(にじょう)家から姫(徳、宝林(ほうりん)院)が迎えられ、その時に母代りとして世話をしたのは瑤津院でした。斉清と宝林院の娘・純姫(昌光(しょうこう)院)の婿には、薩摩藩から養子・長溥(ながひろ)が迎えられ11代藩主となります。実父の島津重豪(しげひで)は、真含院の甥であったことから、話が進められたといわれ、また将軍家斉夫人は重豪の姉でした。これらのつながりが、幕末の黒田家が当初、幕府や薩摩寄りで、公武(朝廷・幕府)合体の路線を取った遠因とされます。


(幕末・明治維新、最後の藩主夫人 12代長知夫人)

 長溥夫人は開国前に死去し、成長した実子もなかったため、伊勢(いせ)の藤堂(とうどう)藩から12代長知が養世子となり、夫人には、伊勢桑名(くわな)の松平家(寛政の老中松平定信(さだのぶ)の子孫)から豊(とよ)姫が迎えられました。文久2(1862)年、日本が開国と攘夷(じょうい)で揺れ動く中、幕府はとうとう諸大名の参勤交代と正室の江戸在住(ざいじゅう)を大幅に緩和し、福岡藩でも翌年正室豊夫人と奥女中たちが福岡へ帰ってきました。しかしそれも束の間、全国の廃藩置県(はいはんちけん)を前に、贋札(がんさつ)事件で藩知事長知(ながとも)が辞職し、夫人と再度東京へ移住という結末を迎えました。


(藩主夫人と家族を支えた人々)

 藩主夫人や家族が江戸屋敷などで生活を送るためは、それを支える多くの奥向(おくむ)きに仕える人々がいました。古くは、照福院や大凉院が、関ヶ原の合戦の前に大坂屋敷を脱出した時、奥向きの女性たちは身代わりを勤めました。また江戸の大凉院に仕える女性は、国元の黒田二十四騎の面々にも対等に夫人の命や意思を伝えました。心空院の遺書や圭光院の記録には、自分の死後、身近に務めた女性たちの身の振りかたを気遣う様子がうかがえます。また幼い幼君の乳母や長く務めた勤めた女中には、その功績で養子に家を興させる場合もありました。
 江戸時代の中ごろには、黒田家の江戸屋敷では奥向を含む一角は御構(おかまえ)と呼ばれました。この御構には、その運営を取りまとめる男性家臣がいました。夫人や前夫人のお付の家老ですが、後には御構頭(かしら)と呼ばれ、その配下には警備や事務の男性家臣たちがいました。また藩主家族の女性、幼児の医療に携わる医師は重要なメンバーでした。このほか台所や雑用に関わる女中や男性の下働きの人々もいました。

(又野 誠)

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