平成3年12月10日(火)~平成4年2月16日(日)
色絵牡丹文油壺 |
備前 江戸時代中~後期 器高8.4 最大径9.5cm |
はじめに
人々の生活を主に展示するこの考古民俗展示室では、前回「食べる-調理具のいま・むかし」を展示しました。今回は生活のなかの「装(よそお)い」に焦点をあて、化粧道具、特に油壺(あぶらつぼ)を中心に「油壺の美」を企画しました。
油壺は整髪用油を入れる容器です。江戸時代の初め、柄鏡(えかがみ)や鬢(びん)附け油が普及し、女性の髪型は多様化し発達しました。以来油壺は日本髪を結う女性の身近な化粧道具の1つとして、各地の窯で作られました。近年の髪型や服装の洋風化によってその役割を終えましたが、口の締まった小振りの愛らしい姿やデザインは工芸品として愛玩の対象ともなりました。
今回の展覧会では、当館に寄贈された故木村節夫氏(昭和59年没)の油壺のコレクションを中心に、市民の方々から寄贈された化粧の道具も展示しています。
この小さな陶磁器「油壺」に込められた、女性たちの美へのあこがれに触れていただければ幸いです。
化粧道具 |
(1)柄鏡 (2)お歯黒道具 (3)鏡台 (4)白粉刷毛 |
化粧道具
美しく身を飾ることは太古の昔から変わりません。初めは宗教的、実用的な意味があったと思われます。古代中世の人人も化粧をしましたが、江戸時代の町人文化の発達を背景に広く一般に広まりました。庶民の問では「お歯黒(はぐろ)道具」「髪結(かみゆい)道具」「鏡」が基本的な道具で、婚礼道具では豪華でさまざまなセットが揃えられました。
髪結道具 |
(1)毛筋立・鬢掻 (2)櫛 (3)笄 (4)簪 |
髪結道具
日本の女性は髪を大事にしてきました。実用本位の髪結は、櫛で梳(と)き紐(ひも)で束(たば)ねるだけの簡単なものでしたが、装飾的、造形的な複雑な髪結が行われるようになると道具の種類も増えました。櫛にも「毛筋立(けすじたて)」「鬢掻(びんかき)」などの特殊な形が現われ油などの整髪料や付け毛としての「髢(かもじ)」も使われました。また装飾もかねて「簪(かんざし)」「笄(こうがい)」も使われました。