平成5年6月29日(火)~10月3日(日)
アジアの人形芝居展
今年もアジアマンスを迎えるに当り、体験学習室関連展示として「アジアの人形芝居展」を開催することに致しました。
皮人形を用いて影絵芝居を演じることはアジア各地に多く見られ、西はトルコから東は中国に至るまでの広い範囲に分布しています。この種の劇はインドの説話である「マハーバーラタ」や「ラーマーヤナ」などを題材とすることが多いのですが、中国では孫悟空(そんごくう)が演じられます。
日本の代表的な人形劇である文楽のような木製人形は、韓国や中国にその起源を求めることができます。特に、福岡・大分両県に伝わる傀儡子舞(くぐつまい)の人形と韓国の人形芝居コクトゥカクシノルムの人形とは、形態の上から非常に近い関係にあることがわかります。
糸操(あやつ)り人形もアジア各地で盛んに行われます。ここではインド・ラジャスターン地方のカタプトリと呼ばれる劇の人形を展示しました。
中国の操り人形と影絵用の人形は、本館と友好館である陜西(せんせい)歴史博物館の御協力により収集することができました。
本展示と同種の人形は体験学習室にも展示していますので、手にとって人形の手足の動きを確かめたり、スクリーンを用いて影絵として見て下さい。
人形芝居の内容
中国、台湾の人形芝居は『西遊記』をはじめ、唐代の玄宗皇帝(げんそうこうてい)や楊貴妃(ようきひ)にまつわる説話を演じることが多く、東南アジアから南アジアにかけての国々はインドの叙事詩『マハーバーラタ』や『ラーマーヤナ』、そのほか民話に基づいた内容のものを演じます。
芝居の題材の代表例として、中国の『西遊記』と『ラーマーヤナ』を紹介しましょう。
○『西遊記』
16世紀に中国で作られた小説。3部から成り、最後の第3部は玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)と共に孫悟空(そんごくう)、猪八戒(ちょはっかい)、沙悟浄(さごじょう)が天竺(てんじく)(インド)に求法(ぐほう)の旅をするというよく知られた話です。一行の行く手をさえぎる無数(むすう)の魔物(まもの)を、孫悟空らが退治するところにこの説話の面白さがあります。
○『ラーマーヤナ』
インドの2大叙事詩「マハーバーラタ」と「ラーマーヤナ」(紀元前5世紀頃成立)は、アジアの文学や芸能に大きな影響を与えましたが、そのうち「ラーマーヤナ」の王位継承の説話は人形芝居の題材として最もポピュラーなものです。
昔、コーサラ国のダシャラタ王の長子ラーマは、ヴィデーハ国のジャナカ王の娘シータと結婚し、王位を継承することになっていました。ところがバラタ王子の母カイケーは王にバラタを王位につけ、ラーマを14年間追放することを約束させました。ラーマは王の命令により、妻のシータと弟のラクシュマナを伴って森に行くと、悪魔(あくま)が襲(おそ)いかかったので、ラーマはこれを退治しました。魔王であるラーヴァナは大いに怒り、部下を金の小鹿に変(へん)じさせ森を駆けさせてラーマとラクシュマがこの鹿を追っている間に魔王はシータ妃をさらい、ランカー島(セイロン島)に連れ去りました。
ラーマは森をさまよううちに猿の王であるスグリーヴァとその臣下であるハヌマンに会い、シータの救助を頼みます。ハヌマンは猿軍を率いてランカー島に行き、大激戦の末ラーヴァナと魔族(まぞく)を倒しシータを無事救出します。
インド・インドネシア・マレーシアなどの人形芝居にも、ラーマ、シータ、ハヌマンなどが登場します。